天才役者と代役の共依存関係…漫画『ダブル』の臨場感が半端ない!

2019.9.19
マンガ家・野田彩子さんが役者の物語を描くにあたり、着目したのは「代役」という存在だった。『ダブル』では、天才役者と代役のただならぬ関係について描いている。

執着、羨望、依存……。天才役者と代役のただならぬ関係。

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「もともと舞台裏に興味があって、映画のオーディオコメンタリーで監督の話を聞いたり、制作現場のドキュメンタリーを観たりして、どういう状況で作品ができあがったのか、想像するのが好きなんです。それであるとき、演出家が書いた本を読んで、稽古に来られない役者の代わりにそのときだけ演じる人がいることを知り、面白いなと思ったんです」

主人公は同じ劇団に所属し、安アパートで共同生活をしている、鴨島友仁(かもしまゆうじん)と宝田多家良(たからだたから)という無名の俳優。友仁は多家良の才能を早くに見抜き、自身も世界一の俳優になりたいと切に思いながらも、多家良のことを何から何まで世話している。

「天才キャラが好きなんですよね。天才だけど欠けている部分があって、生活があまりうまく回らないみたいな。多家良がそっちだとしたら、友仁は自分の能力に対してもっと自覚的なタイプ。器用貧乏っていったらあれですけど、多家良に憧れとも親心ともつかないような気持ちを持っているキャラクターですね」

友仁は多家良の代役を務めているのだが、その場しのぎの代役ではないのがややこしいところ。彼らはふたりでなければ芝居を作ることができない、共依存的な関係なのだ。

「私は友だちが多いほうではないのですが、同じものを好きな人とすごく仲良くなって。その人が家に泊まりに来てしゃべっているとき、部屋の中が自分たちふたりの脳みそみたいだねって話をしたことがあるんです。そういうふうに思える人と一緒にいられるのって、めちゃくちゃ幸せなことなんじゃないかなと思いながら、ふたりの関係を描いてます」

しかしながら、互いに高みを目指す限り、その幸せがいつまでも続かないことを、多家良はともかく、友仁は薄々気づいている。俳優の道を突き詰めることの苦悩と喜びが、舞台やドラマなどさまざまな現場を通して描かれていくのだが、迫力のある絵も見どころのひとつ。

「『ガラスの仮面』でもマヤや亜弓さんは、役ごとに顔つきが変わるじゃないですか。ああいう描写は本当にわくわくしたし、実際にお芝居を観ていてもそう。演技のシーンって描くのがすごく難しいんですけど、絵だけでも伝わるくらい説得力のあるものにしたいと思ってます」

上質な舞台を観ているような臨場感を味わえる本作。熱い男たちに、必ずや心を持っていかれます……。

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『ダブル』1 無名の天才役者・宝田多家良と、その才能に焦がれ彼を支える鴨島友仁。ふたりでひとつの俳優が「世界一の役者」を目指す。「ふらっとヒーローズ」で連載。ヒーローズ 650円

のだ・あやこ マンガ家。第49回IKKI新人賞・イキマンを受賞しデビュー。主な著書に『わたしの宇宙』『いかづち遠く海が鳴る』『潜熱』など。「新井煮干し子」名義でBL作品も発表。©Ayako Noda/ヒーローズ

※『anan』2019年9月25日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

(by anan編集部)

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