『最強のふたり』監督最新作!『セラヴィ!』のやばすぎる結婚式とは?
抱腹絶倒! フランス発のコメディ『セラヴィ!』
【映画、ときどき私】 vol. 174
ウェディングプランナーとして数え切れないほどの結婚式をプロデュースしてきたマックス。この仕事に30年間も情熱を注いできたものの、そろそろ引退することを考えていた。そんなある日、手掛けることとなったのは、17世紀の城を舞台にした豪華絢爛な結婚式。
いつも通り完璧に準備を整え、当日を迎えたはずだった。ところが、集まったスタッフたちは、新郎の希望と真逆の歌を熱唱するワンマンなバンドのボーカルをはじめ、撮影よりもつまみ食いばかりしているカメラマン、新婦に好意を抱くウェイターなど、ポンコツばかり。案の定、次々とトラブルが発生してしまう。はたして、チーム一丸となって、結婚式を無事に成功させられるのか……。
先日行われたフランス映画祭2018で、「エールフランス観客賞」を受賞した本作は、フランスをはじめ世界50か国以上で高い人気を獲得している話題作。手掛けたのは、日本でも大ヒットした『最強のふたり』の監督コンビです。そこで、さらなる魅力を探るべく、こちらの方にお話をうかがってきました。それは……。
フランスのエリック・トレダノ監督!
トレダノ監督は、オリヴィエ・ナカシュ監督と長年コンビを組みながら作品を生み出し、多くの観客を魅了し続けている人気監督。今回は、撮影秘話から実体験まで、ナカシュ監督のぶんもたっぷりと語ってもらいました。
駆け出しの頃、おふたりはイベント会場でウェイターをしていたそうですが、その経験も反映されていますか?
監督 もちろんあるよ。たとえば、カメラマンがビュッフェの料理をパクパク食べちゃうところとか、有名になれなかったのに偉そうにしているバンドの人たちとかは、どれも僕たちの経験。
あとは、いろいろなところから持ってきたエピソードも参考にしているけれど、実際の出来事とそうではないものをごちゃまぜにして語るというのが映画なんじゃないかな。フランスの作家ジャック・プレヴェールも「芸術というのは真実を語る嘘である」と言っていたんだけど、映画はまさにそうだよね。
劇中ではとにかくトラブルの連続でしたが、現場ではハプニングはなかったですか?
監督 今回の映画には、かなりたくさんの俳優がいたから、問題がないということはあり得ないよね……。だから、まるで学校の先生のように「静かにして話を聞いてください!」とか、「ちゃんとセリフを覚えてください!」といったことをずっと言ってたんだ(笑)。
あと、撮影が夜だったときは、午前3時くらいになるとみんな疲れてきて撮影が進まなくなるから、周りを一生懸命励ましながら対応しないといけなくてそれも大変だったよ。
では、あのドタバタ感はリアルでもあるんですね(笑)。
監督 そうだよ! 今回は50日間の撮影だったんだけど、51日目はもう声を出したくないくらいヘトヘト(笑)。でも、現場というのはそういうものだよね。
劇中には出会い系アプリを使用した笑えるシーンもありましたが、それも実体験ですか?
監督 パリにある僕たちの事務所には25人くらいのスタッフが働いているんだけど、そのなかに若者もたくさんいて、彼らから「いまの人は出会い系アプリを使っている」ということを聞いたんだ。
映画というのは、そのときの時代背景を表すものでもあるから、ただ楽しませるだけではなくて、10年、15年経ったときに、「この時代ってこうだったよね」という記録になったり、次の世代に教えたりする役割もあるものだと思っているよ。だから、カメラマンが「スマホでみんなが写真を撮るから仕事がなくなる」というようなエピソードも入れたんだ。
こんなふうにいくつもの要素をバランスよく調整する映画監督の仕事は、適材適所にスタッフをまとめたり、式を演出したりするウェディングプランナーと通じるところもあったはず。
やはり主人公に感情移入したところはありましたか?
監督 もちろんあったよ。たとえば、どうやってキャストやスタッフを意気投合させようかとか、いかにしてそれぞれの才能に合わせた仕事を与えようかとか、そういう部分は特に共感したかな。
でも、それは映画監督だけではなくて、観客もそれぞれの立場で感情移入できると思っているんだ。というのも、この物語はいろんな困難がやってくるなかで、どういうふうにしてそれを乗り越えるかという話であって、そこであきらめるのか、それとも続けていくのか、というのをみんな自分に投影して考えるんじゃないかな。家族や友人関係においても、それは同じだと思っているよ。
相棒のナカシュ監督とは対立したことがないそうですが、仕事仲間とストレスなく働ける秘訣は?
監督 僕たちは気の合うカップルみたいな感じで、化学反応に近いからうまく説明できないんだけど、お互いの足りないところを補い合っている関係なんだ。それは、『最強のふたり』でも今回の映画でも同じで、人と人が補完関係にあることを描いているんだけど、それはつまり僕たちのことを表しているのかもしれないね。
では、1人で映画を作ることを考えたことはないですか?
監督 いままでもないし、これからもないね! 長い時間をかけた映画が公開されるというのは、批評家をはじめ、家族や観客から批判されることもあるわけで、勇気のいることなんだけど、そういうときも、2人のほうがストレスを受け止めやすいよね。
息の合ったトレダノ監督とナカシュ監督が生み出すからこそ、キャラクターたちのやりとりも絶妙なものばかり。そんなシーンの連続にくぎ付けになるものの、もうひとつ興味をそそられるものといえば、日本とは異なるフランス流の結婚式。
かなりリサーチもされたそうですが、印象に残っている結婚式があれば教えてください。
監督 今回は取材で結婚式をたくさん見たんだけど、なかでもロマンチストな新郎新婦が空中に飛びながらキスをするという結婚式にはすごく驚いたよ(笑)。ちなみに、作品ではそこからアイディアをもらったシーンがあるんだけど、あえてエゴが強い新郎だけを空に飛ばすことにしたんだ。
ちなみに、ご自身の結婚式はどのようなものでしたか?
監督 僕のときはサーカスの会場を借りて結婚式をしたんだけど、すごくロマンチックだったよ。でも、あまりにも早く終わってしまったので、写真がなかったら詳細までわからないくらい、実はよく覚えてないんだ(笑)。
だから、どちらかというと準備がすごく大変で緊張していたのにも関わらず、実際にはあっという間に終わっちゃったという感じかな。ただ、人生においては、ひとつのシンボルであり、ステップでもあるんじゃないかな。
このところの日本では生涯未婚率が年々上昇しており、年を重ねるごとに恋愛に踏み出すのが怖くなっている人が増えているのも事実。
「さすが愛の国フランス!」と思うシーンも多かったので、恋愛に臆病な人にアドバイスをお願いします!
監督 まず、地球で最も美しいものである「愛」を知らずに過ごさないで欲しいね。シャイな気持ちがあったり、相手との間に境界を作ってしまったりするかもしれないけど、もっと自分に自信を持って、自分を愛することからはじめたらいいんじゃないかな。つまり、自分を大切にするということが一番重要なこと。
それができれば、スタイルがどうだとか、賢いかどうかとかは関係なく、輝くことができると思うよ。だから、「自分には価値があるんだ」ということをしっかりと認めることだね。だって、僕たちにはほかの人に愛を伝えたり、誰かに愛されたりする権利があるし、そういう思いは遺伝子のなかにもあるものなんだよ。
それに、ひとりでいるよりも、みんなで一緒にいるほうがいろいろなことができるし、楽しいことでもあるというのを感じてもらいたいな。僕たちも2人で働いているけれど、映画でもまさにそういうことを語っているんだと思うよ。
最後に、この作品の見どころを教えてください。
監督 人間が言葉では言えないようなことも、音楽が伝えてくれることがあるんだということ。それが劇中では、フルートの美しい音色に象徴されているよ。そして、最後のシーンは、目を見張るようなことをやらなくても、シンプルなものだけでみんな幸せになれるんだよというメッセージでもあるんだ。
あと、新郎のスピーチのなかでもあるように、「泣くよりは笑ったほうがいい」という言葉。人生には大変なこともあるかもしれないけど、それを嘆くよりも笑っていたほうがいいと思うし、僕たちもそうするようにしているよ。
喜びも悩みもあるからこそ、人生は愛おしい!
泣いても笑っても一度きりの人生。「まあ、これも人生さ!」という意味を持つ “セラヴィの精神” を見習って、まずは自分の気持ちに正直に突き進んでみては? その先にはきっと、つらいことも笑って吹き飛ばせるほどのハッピーな世界が広がっているはず!
笑いと感動が詰まった予告編はこちら!
作品情報
『セラヴィ!』
7月6日(金)渋谷・シネクイント他全国公開
配給:パルコ
ⓒ 2017 QUAD+TEN / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / PANACHE PRODUCTIONS / LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE
http://cestlavie-movie.jp/