志村 昌美

志田未来が語る幸せな瞬間「目の前にいなくてもつながりを感じられる」

2020.6.17
映画やドラマ漬けの生活を送っている人にとって、過去の名作をじっくり鑑賞するのというのは楽しみ方のひとつですが、いっぽうで新作を待ちわびるときのドキドキ感も何にも代えがたいもの。そんななか、話題のアニメ『泣きたい私は猫をかぶる』がいよいよNetflixにて全世界独占配信スタートとなります。そこで、本作についてこちらの方にお話をうかがいました。

主演を務めた女優の志田未来さん!

【映画、ときどき私】 vol. 303

新進気鋭のアニメーションスタジオとして注目を集めている『スタジオコロリド』の最新作は、かぶると猫に姿を変えることができる不思議なお面を手にした中学生の少女とクラスメイトの少年との物語。

劇中で志田さんは、「ムゲ」というあだ名で呼ばれている主人公・笹木美代の声を担当しています。今回は、アニメファンであり、『借りぐらしのアリエッティ』や『風立ちぬ』などでも声優を務めた経験のある志田さんに、作品の魅力や見どころについて語っていただきました。

―まずは、脚本を読んだときの印象から教えてください。

志田さん お面をつけて猫になり、好きな人に会いに行くというストーリーだけで、気持ちがワクワクしました。しかも、日常の風景がありつつ、ファンタジーな要素もあるので、すごくおもしろい作品になるだろうなと思いました。

―演じられたムゲについては、いかがですか?
 
志田さん すごく明るいけど、ちょっと空回りしている部分もあるのかな、と最初は感じました。でも、実は登場人物のなかで一番大人な考えを持っているキャラクター。想いを寄せる日之出に対する気持ちがまっすぐなところも、すごくステキだなと思います。

―そんなムゲと志田さんの声は見事にリンクしていたと思いましたが、演じるうえで意識したのはどのあたりですか?

志田さん 収録の前に、1日リハの時間を作っていただいたので、そこで監督から「声を作りすぎないように」など、いろいろなアドバイスをいただけたのはよかったです。あとは、普段の私は声が低めなので、少し若々しい女の子の感じを出すように意識して演じました。

いままでにない難しさを感じることもあった

―今回は、ムゲが変身した猫の太郎のパートも演じられていますよね。これまで声優のお仕事をされたなかでも、動物の役は初めてだったのでは?

志田さん 台本をいただいたときは、まさか自分が声を入れるとは思ってもいなかったので、リハのときに、監督から「猫の声も練習してきてね」と言われて初めて知り、すごく驚きました(笑)。家でもかなり練習しましたが、かなりハードルは高かったです。

―その際、何かを参考にして練習されたのですか? 

志田さん 猫の映像を見たとかではなく、これまで声のお仕事をしたときと同じように、自分の声を録音して聞く、という方法で練習しました。とはいえ、最初に「ニャー」と言ったときは、緊張と恥ずかしさから、正直これでいいのかなと……。でも、監督から「いいね」と言っていただけたので、よかったです。

―猫の声以外にも、苦労したシーンはありましたか?

志田さん ムゲが家族に対して感情を爆発させるシーンがあるんですけど、そこは「もう猫のままでもいいや」と思ってしまうきっかけであり、大切に演じなければいけない場面だったので特に難しかったです。

声に感情を乗せるという意味でも、1人で感情を爆発させなければいけないという意味でも苦労しましたが、それを時間内に収めなければいけない難しさも同時にありました。何度か録り直したあと、最後は映像なしで自分の気持ちに向き合って録るという方法にも初めて挑戦したほどです。

―これまで声優としていろいろな役を演じてきた志田さんでも、それほど苦労したシーンだったんですね。実際に完成した作品を見たときのお気持ちはどうでした?

志田さん 映像がとにかくきれいなので、どのシーンも印象的だなと感じました。そのなかでお気に入りを挙げるなら、日之出が太郎を抱きかかえるシーンで見せる崩れた笑顔。本当にステキで、すごく好きです。

感謝や好きな気持ちを表すのは大切なこと

―日之出くん、カッコイイですよね! ちなみに、日之出くんのようなタイプの男の子がもしクラスにいたら、気になりますか?

志田さん なりますよね(笑)。日之出は大人びているように見えて、実はそうではなくて、いろんなことに葛藤があって迷っている子ですから。あと、ムゲに見せるクールな感じと、太郎に見せる優しい顔の表情にもギャップがあって、かわいいなと思います。

―ただ、日之出くんのように、なかなか思っていることを口に出さない男性というのはどうですか?

志田さん 私は自分のことでいっぱいいっぱいですし、気持ちを察したりとかもあまりできないので、できれば口に出してほしいなと思います。やっぱり言葉にしないとわからないこともありますから。

―そういう意味でも、この作品で思っていることを口に出すことの大事さを改めて感じましたか?

志田さん そうですね。ムゲのように本当は違うのにマイナスの方向に受け止めてしまったり、自分のなかだけで考え込んでしまうこともありますが、感謝を伝えたり、好きだという気持ちを表すことの大切さを今回、改めて感じました。

―ムゲも一見言いたいことを言えているようで、本当に言いたいことは言えない葛藤を抱えていました。志田さんは言いたいことは言えるタイプですか? 

志田さん 私も中学生のときはムゲのように言えなくて、モヤモヤが自分のなかで募って、家族に当たってしまうこともありましたが、いまは結構言いたいことは言えてると思います。

―年齢や経験を重ねたのもあると思いますが、そういうふうになれたきっかけはありますか?

志田さん 自分が思っていることを言ったことによって、必ずしも嫌われるわけではないと考えられるようになったことがきっかけだったかもしれません。学生のときはみんなからわがままだと思われるのが嫌で言えなかったんですけど、周りの人たちが自分に対してしっかりと愛を持って接してくれていることがわかったので、それからは自分の気持ちもきちんと出せるようになりました。

家族や友達と話しているときに幸せを感じる

―それはステキな気づきですね。ちなみに、学生時代はどんな子でしたか? 

志田さん ムゲのようにやんちゃな子というよりも、わりと淡々と目の前のことをこなしていくような感じだったかなと。忙しかったのもありますが、おそらく自分のやりたいことがまだあまりわかっていなかったのかもしれないですね。

そのあと学校を卒業して、学生という肩書に甘えられなくなってから、心境が変わったところはあったと思います。

―なるほど。それでは、タイトルの『泣きたい私は猫をかぶる』にかけておうかがいしますが、志田さんが泣きたいときはどうやって乗り越えていますか? 

志田さん 私は泣きたいときは、泣きますね(笑)。こんなに悲しくてつらいんだというのを誰かにわかってもらいたい気持ちがあるので、家族の前で泣くことはあります。

―それを家族が受け止めてくれることで、嫌な気持ちも解消されるんですね。

志田さん そうですね。もともとすごく泣き虫だというのもありますが、誰かにわかってもらえて、言葉をかけてもらえれば安心できますし、それによって周りに支えられていると感じられて、自分自身の気持ちを持ち上げることもできるので、あまりひとりで抱え込んだりはしないです。

―では、ムゲのようにお面で何かになれるとしたら、何になりたい?

志田さん いまは鳥になって空を飛びたいです。自由に動き回りたいので(笑)。

―確かに、空なら何の心配もないので鳥はいいですね! そんなふうに、こういう状況だからこそ、心境の変化があると思いますが、いま一番幸せを感じる瞬間は? 

志田さん なかなか会えない家族や友達とテレビ電話をしているときに感じます。これまでは、必要なことがあるときに連絡するのが多かったですが、最近は今日あったことを話したり、近況報告をしたり。そういうことを言い合えることが幸せですし、目の前にはいなくても、つながっている感じがするのもいいですよね。

家にいる時間で自分を知ることができた

―そうですね。そのほかに、ストレスが溜まったときにしていることといえば何でしょうか?

志田さん あまりストレスは溜めないほうなのですが、天気のいい日にベランダに椅子とテーブルを置いて、外でご飯を食べて、カフェのテラス席にいるような気分を味わったりしていました。そういうことが、もしかしたらストレス解消につながっているのかもしれないです。

―体を動かすのもお好きだそうですが、健康のために心がけていることはありますか?

志田さん 友達がトレーナーをしていて、筋トレメニューを送ってくれたので、それを一生懸命黙々とひとりでこなしています(笑)。そうすると、けっこう汗をかきますし、家の中にいても運動している感覚にはなりました。

―運動は大事ですよね。新たに始めたことやハマっていることもあれば、教えていただきたいです。

志田さん 掃除を念入りにするようになりました。いままで手行き届かなかったぶん、意外と汚れてるところがあったので……。おかげで家がすごくきれいになって、居心地もよくなりました。

あとは、いままでまったくしてこなかったお菓子作りを始めました。ケーキやクッキーを焼いたりしていますが、いつかオシャレなお菓子を作れたらいいなと思うので、もう少し極めてみようかなと。そんなふうにいままでできなかったこともできるようになったという意味では、自分を知れる時間になったと感じています。

多くの人の癒しとなる作品であってほしい

―それでは最後に、作品を楽しみにしている方々へ向けてメッセージをお願いします。

志田さん 今回は劇場での公開が延期になり、Netflixでの独占配信となりましたが、映画は観てくださる方がいてはじめて完成するので、もともとの公開日に近い日程でみなさんにお届けできることをうれしく感じています。しかも、日本だけでなく全世界での配信。海を越えてひとりでも多くの方にご覧いただけるのは、光栄なことでもあります。

人と人とのつながりや人の優しさ、愛といったことについて描いているので、みなさんにとって癒しになればいいなと思いますし、大切な方と一緒に観ていただきたい作品です。あとは、映像のきれいさとムゲが猫になったときのかわいさも、ぜひ楽しんでください。

インタビューを終えてみて……。

癒し系の笑顔が印象的で、どんな質問も気さくに答えてくださる志田さん。今回苦労したという猫の声は、誰もがキュンとしてしまう悶絶級のかわいさです。さすが志田さんと言わずにはいられないほど、はつらつとしたムゲの声とのギャップとともに、ぜひ注目してみてください。

日常生活で沸き起こる感情に共感!

思春期だけでなく、大人になっても、泣きたいときやすべてを投げ出したくなってしまうときはあるもの。そんなときにこそ、自分に素直になって、相手に気持ちを伝える大切さを教えてくれる本作は、きっと新たな一歩を踏み出す勇気を与えてくれるはずです。

ストーリー

いつも明るくて、陽気な中学二年生の美代。空気を読まない言動で周囲を驚かせ、クラスメイトからは「ムゲ(無限大謎人間)」というあだ名で呼ばれていたが、実は周りに気を使い、自分の感情を抑えて日々を過ごしていた。そんなムゲが、熱烈に想いを寄せるのは、クラスメイトの日之出賢人。毎日果敢にアタックをするも、まったく相手にしてもらえないままだった。

ところが、ムゲにはある秘密があった。それは、かぶると猫に姿を変えることができるというお面で猫の太郎となり、日之出の家に通っていること。そんな生活を楽しんでいたムゲだったが、徐々に猫と自分との境界があいまいになってしまうことに……。

引き込まれる予告編はこちら!

作品情報

Netflixアニメ映画『泣きたい私は猫をかぶる』
6月18日(木)より、Netflixにて全世界独占配信
出演:志田未来 花江夏樹
   小木博明 山寺宏一
監督:佐藤順一、柴山智隆 脚本:岡田麿里
企画:ツインエンジン
制作:スタジオコロリド
製作:「泣きたい私は猫をかぶる」製作委員
© 2020 「泣きたい私は猫をかぶる」製作委員会
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