Crystal Kay「幅広い世代に楽しんでもらいたい」初のカバーアルバムへの想い

写真・山本嵩 取材、文・かわむらあみり — 2021.4.21
【音楽通信】第76回目に登場するのは、これまで数々のヒット曲を世に送り出し、艶やかな歌声でわたしたちを元気にしてくれるCrystal Kayさん!

【音楽通信】vol.76

NYでの経験が変換点「人のために歌う」

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1999年のデビュー以降、「恋におちたら」などの大ヒット曲を放ちながら、ライブにおいても精力的な活動を続けているCrystal Kayさん。

アーティスト活動20周年を迎えた2019年には、トニー賞4部門受賞のブロードウェイミュージカル『PIPPIN』の日本版に出演し、「読売演劇大賞優秀女優賞」を受賞して、歌だけでなく演技でもその実力を発揮されました。

そんなCrystal Kayさんが、2021年4月21日にキャリア初となるカバーアルバム『I SING』をリリースされるということで、お話をうかがいました。

ーーあらためて、おさらいとして以前のお話からおうかがいします。Crystal Kayさんが、よく聴いていたり影響を受けたりしたアーティストから、教えてください。

邦楽だと、SPEED、安室奈美恵さん、スピッツ、 globe……90年代のJ-POPを聴いていましたね。Mr.Childrenなどの親が聴いていた音楽も、一緒に聴いていました。あとは、洋楽を聴くことが多かったですね。マイケル・ジャクソンやジャネット・ジャクソンのようになりたかったんです。

ーー1999年にシングル「Eternal Memories」でデビューされてから2019年にデビュー20周年を迎えて、現在、22年目となりますね。振り返ってみての変化はありますか。

いろいろな変化はありましたが、一番の変化は、やっと歌が深くなってきたことかな(笑)。さまざまな声が出せるようにもなってきました。

ーーお気持ちのうえでの変化はありましたか。

「自分のためじゃなく、人のために歌わなきゃいけないんだ」と思えるようになったのが、少し遅いんですが28、9歳ぐらいなんです。最近はコロナ禍ということもあって、自分ができることは歌しかないし、人は歌と音楽を必要としている存在なんだなとこの1年であらためて思いました。そう考えたときに、人に元気や勇気といった何かしらの「パワーを歌で届けるんだ!」という思いがさらに強くなりましたね。

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ーー28、9歳のときから意識が変わったのは、何かきっかけがあったのですか。

きっかけは、1年半ぐらい、ニューヨークにいたことです。ちょうど20代後半で、みんなが通る「自分って、一体何?」「このままでいいのかな?」という、人生に“ハテナマーク”が浮かぶ時期でした。ニューヨークは、世界中から人々がアメリカンドリームを追いかけて辿り着くところでもあるから、自分をしっかり持っていないと、ただ時間と人が過ぎていくだけの過酷な街。そんな場所で、初めての一人暮らしが、いきなりニューヨークだったんです。

私は日本生まれ日本育ちですが、日本人ではなく、韓国とアメリカのハーフです。いまは私と同じような方もたくさんいて、メディアやスポーツ界でも活躍しているので、国民的にも受け入れられているのは素晴らしいことですよね。でも、私が小さいときはそういう雰囲気ではなかったので、自分のアイデンティティがわからないというコンプレックスをずっと抱えていました。

そんななかで、20代後半になってから、ずっと夢だった“世界で音楽をやる”というチャンスを掴みに行く時間をいただいて、ニューヨークへ行ったんです。最終的にデビューには辿り着かなかったんですが、たくさんのプロデューサーと曲を作り、自分と向き合う時間もありました。

ニューヨークはさまざまな人種が集まりながらも、みんな自分をしっかり持っています。同世代の人たちと集まったときに悩みを話したら、「君は日本で歌手としてのキャリアがあって、日本語でも英語でも歌が歌えて、素晴らしいことじゃないか! もっと自信を持ったほうがいいし、自分をもっと讃えてあげるべきだよ」と言われて。初めて、そのアングルで自分のことをとらえてみると、やっと「そうだな」と思えました(笑)。

そして日本に戻る前に、初めて自分で全部手がけたアコースティックライブを開催したんです。日本にいたらライブを仕切ってくれる人がいるわけですが、ひとりだったので、ギタリストを探して紹介してもらい、人が来るかどうかわからないなかインスタでライブの宣伝をして。

すると、ソールドアウトになったうえ、「もう1日やってください」と言われたんです。一生懸命自分で作って挑んだ、初めてのアメリカのライブで、初心に戻りましたし、すごく良いライブができました。これらのことがきっかけとなって意識が変わり、この経験を糧として、日本に帰ってきたんです。

私の曲を聴いてくれている人たちも、悩みやいろいろなことを感じている。私もみんなと同じだし、そこでつながりたいと思ったときに、「みんなを元気にする、みんなの思いを私が歌にする、人のために歌おう」と思うようになりました。

20周年のお祝いに「納得のいくカバーアルバム」

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ーー2021年4月21日に、キャリア初となるカバーアルバム『I SING』をリリースされます。

カバーアルバムは“オリジナルより良い”と思えるぐらい、意味のあるものを作りたいと思っていたので、これまでは考えていなかったんです。でも20周年のタイミングだったら、私がこれまで好きな曲などをカバーして発表するのは、お祝いという意味でも作れますし、スペシャルな感じもありますよね。ライブではカバーコーナーもやっていて反響が良く、音源化できたらと思っていた曲もあったので、今回のリリースにつながりました。

ただ、コロナ禍で制作期間に変更があって、20周年ジャストのタイミングよりは少し後でのリリースになって。そのぶん時間をかけて作ることができたので、納得のいくカバーアルバムができました。

ーーOfficial髭男dismの曲「I LOVE…」は、川口大輔さん、Kan Sanoさんとタイプの違うプロデューサーの方によって2曲収録されています。同じ原曲で違う仕上がりというところで、ご自身ではどのように意識して歌われましたか。

プロデューサーさんによって全然違うので、自分なりに納得いくアレンジにするには、どうやったらできるのかなと考えました。全曲、音数は多くしないで、とにかく私の声と、歌詞と、メロディ、原曲の世界観がちゃんと引き立つアレンジにしたいと。曲を絞る段階から、歌ってみないとわからないので、ピアノの方と一緒に何十曲もサビのところまで歌って、合う合わないを決めていたんです。

そのときに、いろいろなバージョンで歌ってみて、「I LOVE…」はちょっと遅い感じで歌うとすごく良かったので、バラードにしようとなって。川口さんには、2016年に「Lovin’ You」という曲を作ってもらって以来でしたが、「I LOVE…」をお任せしたら、出てきたアレンジが最高すぎました。川口さんがピアノを録音しているときに私も立ち会って、じゃあ歌も入れちゃおうと、そのおかげでもっとこうしたいというところもその場で言えたので、めちゃくちゃいいバージョンができました。

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2バージョン作ったのは、ディレクターのエキセントリックな提案です(笑)。Kan Sanoさんは、昨年のイベントにCHARAさんのバンドメンバーとして出演していてご一緒したんですが、CHARAさんが「彼、いいよ」と紹介してくれました。私は彼が作るチルでグルーヴィンな感じの曲が好きだったので、ぜひお願いしようと、今回はその感じでやってもらいました。結果、「I LOVE…」だけ、2バージョンあって、すごく攻めています(笑)。でも全然違うテンションで2曲を聴いてもらえるので、楽しんでもらえたらいいな。

ーーもともとファンの方のアンケートから選曲されたんですよね。

はい。私がカバーをやるとしたら何を歌ってほしい? と、インスタやツイッターで公開募集したら、莫大な数のリクエストが来て(笑)。他に社内でも聞いて、データをとって、大変でしたが楽しかったです。そこから絞っていって、いろいろな曲を歌ってみると、女性の曲はなじみすぎてしまうので、男性ボーカルの曲が多くなっていきました。

ーー今回、DREAMS COME TRUEの「すき」以外は、すべて男性ボーカルの曲ですものね。

そうなんですよ。意外と、女性ボーカルの曲よりも、男性ボーカルの男くさい歌詞のほうがカバーに合うかもしれないという面白い発見がありました。

ーー「すき」をカバーされて、DREAMS COME TRUEの中村正人さんからも「天才的なグルーヴ感が遺憾なく発揮」「最後、クリちゃんオリジナル『すき』のメロディと共に発せられる感情にハートを撃ち抜かれる」と絶賛されていますね。

すごくうれしいです。「すき」は、思い入れのある曲で、小学校4年生のときに、叔母とよく車で「すき」が収録されているアルバムを聴いていたんです。そのなかで好きになって、初めて人前で歌ったのが「すき」だったかもしれない。だから、日本一、「すき」が歌えると思います(笑)。

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ーー他にも、笹路正徳さんプロデュースのポルノグラフィティの「サウダージ」はホーンも軽快でダンサブル、山崎まさよしさんの「One more time,One more chance」はしっとりと心に染み入る歌声が印象的です。

実はどちらもあまり歌ったことがなかったんです。ラテンテイストの「サウダージ」はとことんラテン調にしたいと、すてきなサルサバージョンにしてもらって。言葉数が多くて、けっこう歌うのが難しかったですね。でもライブで歌っても、みんな踊れる楽しい曲で、生楽器のアレンジなどもしてくださっています。「One more time,One more chance」はオリジナルのアコースティックな感じがいいから、そのままの雰囲気を残してもらいました。

ーーBUMP OF CHICKENの「天体観測」もありますね。

「天体観測」は、レコード会社の方の一押しでした。私のデモを聴いて、合うとみんな思ったのかな。「すき」の場合は小さいときから歌っていましたが、この機会がないと歌うことがなかったかもしれない曲も。BUMP OF CHICKENは、歌詞を見ると「こんなこと歌ってたんだ」とか、「こういうメロディなんだ」という発見があって面白かったですね。J-POPならではのメロディアスな感じや歌詞の世界は、日本人の書き方はとても詩人的ですごいと感じました。

ーーどんなふうにカバーアルバムをみなさんに聴いてほしいですか。

気分を上げたいときもあれば、切ない曲もあるので静かにしたいときなど、自分の感じたい感情のときに気持ちよく聴いてほしいですね。若い世代だと知らない曲も多いかもしれないですが、いまは昔のものやレアものを掘り起こしてまた流行することもあるので、このアルバムをきっかけにまた好きになることもあるのかなと。親御さんと一緒に楽しく聴いてほしいですし、幅広い世代に楽しんでもらいたいです。

音楽活動はもちろんミュージカルでも活躍したい

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ーーいまはおうち時間が長い生活様式となっていますが、日課や趣味はありますか。

趣味で、陶芸をやっています。料理をすることも好きですね。冷蔵庫の中にあるもので何を作るかを考えるのは楽しいです。

ーーCrystal Kayさんはかっこいい女性のイメージがありますが、ご自身で意識してされていることはありますか。

普段から意識してやっていることはいないですね。いつも素のまんまを出しているので、仕事をしていてもプライベートでも、変わらないです。でも、意識するといえば、人を笑わせること、笑顔を見ることは好きですね。だからといってとくに何もしていないのですが(笑)。

ーー美容面で気をつけていることはありますか。

週に3回ぐらい、ジムに行ったりピラティスをやったりして、運動をしています。食事は“16時間ファスティング”をして、体作りをしていますね。さらに昨年の11月ぐらいから、セルライトを退治してくれるサロンを紹介されて行き始めたら、セルライトがなくなると燃焼が早くなるので、11月から6キロも体重が落ちたんですよ。よっしゃ! と(笑)。いま35歳なんですが、40代、50代に向けて、体作りをしておこうと思っていて、この状態をキープするための生活習慣がルーティン化してきています。だから、早起きしたりもしていますね。

ーーいろいろな心がけをされているのですね。まず試そうと思ったら、早起きぐらいからならできる気がします(笑)。

もう、どれもみなさんできますよ(笑)。普通に運動して、少し食事に気をつければ大丈夫。早起きして、朝起きてからの自分の時間が超好きなんです。出かける前に2時間ぐらいあったら、最高。コーヒーを飲んだり、ストレッチをしたり、朝風呂に入ったり。朝風呂は体が目覚めるんですよ。あとは洗濯物をしたりと、ゆっくり過ごすことが好きです。

ーーすてきなお話をありがとうございました。では最後に、今後の抱負をお聞かせください。

ミュージカルをまたやりたいと思っています。演技に興味があるので、オーディションを受けることもありますし、演技のレッスンも受けていて。音楽活動ももちろんがんばっていきますし、まずは今回のカバーアルバムをみなさんに聴いていただきたいですね。

取材後記

朗らかな笑顔で、取材に応じてくださったCrystal Kayさん。いつも艶やかな歌声をわたしたちに届けてくれるCrystal Kayさんのカバーアルバムは、ソロシンガーからバンドまで、多彩な楽曲がずらりと揃った聴き応え満点の逸品ですので、みなさんもぜひチェックしてみてくださいね。


写真・山本嵩 取材、文・かわむらあみり

Crystal Kay PROFILE
1999年、シングル「Eternal Memories」でデビュー。以降もコンスタントに作品を発表し、「Boyfriend -partII-」「恋におちたら」などのヒット曲で大ブレイク。2015年にCrystal Kay feat. 安室奈美恵「REVOLUTION」、 「何度でも」(フジテレビ系木曜劇場『オトナ女子』挿入歌)を含むロングヒットアルバム『Shine』のリリース後も、ライブなど精力的な活動を続けている。

2019年にアーティスト活動20周年を迎え、トニー賞4部門受賞のブロードウェイミュージカル『PIPPIN』の日本版に出演し、「読売演劇大賞優秀女優賞」を受賞した。 2020年、キャリア初となるカバーアルバムからの先行配信「3月9日」「歌うたいの バラッド」「I LOVE…」をリリース。

2021年4月21日、カバーアルバム『I SING』をリリース。

Information

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New Release
『I SING』

(収録曲)
01. 楓(スピッツ)
02. ただ…逢いたくて (EXILE)
03. 3月9日 (レミオロメン)
04. I LOVE… (Official髭男dism)
05. なんでもないや (RADWIMPS)
06. すき (DREAMS COME TRUE)
07. 天体観測 (BUMP OF CHICKEN)
08. 瞳をとじて (平井 堅)
09. 歌うたいのバラッド (斉藤和義)
10. サウダージ (ポルノグラフィティ)
11. One more time, One more chance (山崎まさよし)
12. 白い恋人達 (桑田佳祐)
13. I LOVE… (Uptempo Ver.) (Official髭男dism)

2021年4月21日発売
UICV-1113
¥3,000(税込)


Crystal Kay オフィシャルサイト
https://www.ldh.co.jp/management/Crystal_Kay/

ヘアースタイリスト・TAKAYUKI SHIBATA 
スタイリスト・NARUMI OKAMURA

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