大女優から出演OKをもらうには? 映画監督が明かす
2017.6.3
75歳でゲイをカミングアウトした父親と自身の関係を見つめた『人生はビギナーズ』で温かな感動を呼んだマイク・ミルズさん。6年ぶりの新作の舞台は、’79年のサンタバーバラ。今回は母親をモデルに、シングルマザーと15歳の息子ジェイミーの物語を描いている。
自分でもびっくりしてるよ。こんなに家族に興味があるなんて。
映画『20センチュリー・ウーマン』は、母親役はアネット・ベニング、ジェイミーの幼馴染みにエル・ファニング、写真家の間借り人にはグレタ・ガーウィグという豪華な顔ぶれが揃った。
「出演を依頼するときには最低限の礼儀として手紙を書くんだ。僕のプロジェクトはすごくパーソナルで低予算なうえに、役者に自分の弱さも見せてもらわなきゃいけない。大女優たちにそんな仕事をお願いするわけだからね。だから、みんなが即OKだったわけじゃないよ(笑)」
母親がジェイミーに株価をチェックさせる日課など、実際のエピソードもふんだんに織り込まれている。’79年という時代の匂いをリアルに伝えながらも、洗練された色彩でスタイリッシュな世界を作りあげているのは、グラフィックデザイナーでもある彼ならでは。
「特定の時代を舞台にした映画を撮るのは初めてだったけれど、世界観を作る感覚は、グラフィックデザインに似てるかな。ただ、予算がないなかで、’79年を正確に描かなきゃいけないのは難しくて。リサーチには3年かけたし、俳優たちとは撮影前に2週間かけてリハーサルして、キャラクターの背景もしっかり理解してもらった。おかげでアネットを見て、“うわ、すごくママっぽい”と何度も思ったよ(笑)」
そうして描かれた物語はパーソナルなものでありながら、誰の心にもある家族への想いを揺さぶる。
「家族を描くことにこんなに興味があることに自分でもびっくりしてる。自分が撮ってるものに意味があるのかという不安もあるけれど、たまたま僕の場合は、すごくユニークな両親がいた。ひとりはゲイの老人、ひとりは女性への偏見のある世の中で頑張ってきた女性。そういう意味では時代の変遷を捉えつつ誠実に描いた真実を、観てくださる方とシェアできるんじゃないかな」
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