エロくてグロいーっ…モデルはあの人魚姫!? 話題の大人のおとぎ話とは?
話題のホラー・ファンタジー『ゆれる人魚』!
【映画、ときどき私】 vol. 139
ポーランドのワルシャワにあるナイトクラブに現れたのは、海から上がったばかりの人間を捕食して生きる美しい人魚の姉妹。ストリップやライブが行われるなか、2人は得意のダンスと歌を披露し、一夜にしてスターとなるのだった。
ところが、姉がベーシストの青年と恋に落ちてしまい、姉妹の関係はぎくしゃくしはじめることに。そして、緊張感が限界に達したとき、2人は残虐な行為へと駆り立てられるのだった……。
誰もが知っているキャラクターをモチーフにしながら、予想もつかない展開を見せる本作には、サンダンス映画祭をはじめ、世界各国の映画祭が騒然となったほど。そんななか、今回はこの物語に新たな命を吹き込んだこちらの方にお話を聞いてきました。それは……。
アグニェシュカ・スモチンスカ監督!
ポーランド映画界でも注目されている女性監督のひとりですが、この作品が記念すべき長編デビュー作。そこで、本作の注目ポイントや見どころについて語ってもらいました。
まずは主人公の姉妹を人魚にした理由は?
監督 実は、もともとは本作の音楽を担当しているヴロンスキ姉妹の伝記にしようという構想から始まっていたんです。でも、それが難しいということになったので、脚本家から「人魚にしよう」という提案があったのがきっかけよ。
そのとき、どのような人魚にしたいと思いましたか?
監督 まずは、「人魚ってどんな造形をしているのか」ということをすごく考えたわ。特に今回私がイメージした人魚というのは、半分は人に害を与えるようなもので、もう半分は人間の女性みたいな生き物。だから、一見すると醜いともいえるような尾びれからだんだんと作り上げていったのよ。
ただ、ヴァンパイアにはしたくなかったので、歯はいろんな魚の歯を研究して、最終的にはピラニアのようなものにしたわ。だから、言い換えるなら、私たちの人魚はモダンな人魚。まったく新しい生き物でもあるので、そういうことを意識して作っていったのよ。
主人公となるのは、ゴールデン(写真・左)とシルバー(写真・右)と名乗る人魚の姉妹ですが、かわいさと残忍さという相反する魅力を持ち合わせた姿には、思わず引き込まれてしまうところ。
どのようにしてキャスティングしたのか教えてください。
監督 自分で1年間かけて探したんだけど、最終的には2000人くらいの女性たちと会ったわ。最初は10代の女性にお願いしようかと考えていたんだけど、やっぱりこの物語の残酷な部分や心理的なところを表現するのが難しいということになり、年齢の範囲を広げて探したところ、マルタに出会って、まずは姉のシルバー役としてキャスティングしたの。彼女にはすごく柔和で感受性が強い側面があるいっぽうで、獣のような野性的な部分があって惹かれたわ。
では、妹のゴールデン役はどうやって見つけたのですか?
監督 まず、何よりも大切だったのは姉妹間に起こるケミストリー。だから、普段はあまりやらないワークショップを16人くらいの女優たちとすることにしたの。そこでは、人魚を演じるというのはどういうことなのかというのを知るために、足を束ねたり、いろんなエクササイズを振付家とともにやってもらったわ。
それから、初めて陸を歩くというのはどういうことなのか、どんな気持ちになるのか、という人魚の本質にも迫ってもらったのよ。非常に複雑な作業で、彼女たちにとってはかなり大変だったと思うわ。でも、そのおかげでワークショップを終えたときにはゴールデン役がミハリーナに決まって、撮影に入ることになったのよ。
今回、この作品をオリジナリティあふれるものにしている要素といえば、何といってもエロさとグロさ。
それぞれをどの程度入れるかについては、どのように考えていましたか?
監督 実は、ポーランドではホラーの伝統がまったくなくて、観客も全然ホラー映画を観ないから、「あんまりグロい作品にしないで」というリクエストが最初に配給からあったわ。ただ、私としては人魚の歌う美しいシーンだけでなく、人魚のダークサイドな部分も見せたかったから、人肉に食らいつくところもしっかりと見せたいと思って作っていたの。
そしたら、やっぱりいくつかのグロいシーンはカットして欲しいと言われたんだけど、私は全部断ったのよ。なぜなら、この作品が特別でユニークな作品になっているのは、ホラーと詩的なところとリアリズムの全部がひとつになっているシーンがあるからこそ。
その要素を取り出すことは、作品を損なってしまうことになると感じたからよ。だから、最終的にそういう部分を変更せずに公開することができたのはよかったと思っているわ。ちなみに、セックスに関してのシーンは全部OKだったけどね(笑)。
最後にananweb読者へメッセージをお願いします!
監督 『ゆれる人魚』はすごくユニークな映画だし、こんな作品はほかにないと思うから、人生でも見たことのないものを見たいという方には、ぜひ観てもらいたいわね。ジャンルもいろいろとミックスしているし、初恋をテーマにもしているから、女性にはぜひオススメよ!
異色のおとぎ話に心もゆれる!
ホラーとしてだけでなく、いろいろな “はじめて” を経験して大人になる女子の成長物語としても楽しめる本作。80年代風のファッションや音楽とともに、この世界観にどっぷり浸ってみては?
胸がざわめく予告編はこちら!
作品情報
『ゆれる人魚』
2月10日(土)より新宿シネマカリテほか全国公開
配給:コピアポア・フィルム R-15指定
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