志村 昌美

ナチスを逃れた91歳「性セラピスト」。壮絶体験から得た生きる意味

2019.8.26
誰もが人には言えない悩みを抱えているものですが、そのなかでも多い問題といえば、性に関すること。「パートナーとのセックスがうまくいっていない」とか「セックスレスを解消する方法がわからない」など、思い当たる節がある女性たちもいるのでは? ということで今回は、まもなく公開のドキュメンタリー映画『おしえて!ドクター・ルース』に出演しているこちらの方に緊急お悩み相談にお答えいただきました!

セックス・セラピストとして現役のドクター・ルース!

【映画、ときどき私】 vol. 255

ドクター・ルースは、1980年代に始まったラジオ番組がきっかけで一躍注目を集め、アメリカではもっとも有名なセックス・セラピストと言われるほどの人気。アメリカ人の性に対する意識に多大な影響を与える存在として、91歳となったいまなお精力的に活動を続けています。

とはいえ、ここにたどり着くまでには苦難の連続。ドイツに生まれたのち、幼くして家族を失い、スナイパーとしての活動を経てから異国でシングルマザーになり、セックス・セラピストへの道を歩むという波乱の人生を送ってきているのです。

そこで、そんな人生の大先輩であるドクター・ルースに、女性たちからよく聞くセックスの悩みから自分らしい生き方についてまで、アドバイスをいただきました。

―『anan』本誌でのセックス特集をはじめ、ananwebでも性に関する記事は読者の関心が高いテーマです。映画のなかでもドクター・ルースは「性についてはまだまだ議論されるべき」とおっしゃっていましたが、そのなかでも今後私たちが話し合うべきテーマはどのようなことだとお考えですか?

ドクター・ルース いま私たちが語るべきなのは、リレーションシップについて。ヘブライ語のセックスには「知る」という意味もありますが、その言葉通り「どのようにセックスをすればいいのか」についてだけ語るのではなく、お互いをより深く知り合うことが求められているのです。

それによって、「どんなことがあなたを悲しくさせるのか」「どんなことがあなたを幸せにするのか」「何が変われば自分の人生がより良くなるのか」を知ることができます。そういったことを話し合うことがこれからは重要だと感じているところです。

そして、それこそが私の著書『SEX FOR DUMMIES』の改訂版を作った理由。先日、ニューヨークの郊外で本のサイン会をしたときも売り切れてしまいましたが、次に行くシカゴでも800人もの方々が来場してくれる予定なんですよ。

理想のセックスライフに必要なものとは?

―それだけ多くの方がセックスに対して悩みを抱えているということなんですね。

ドクター・ルース 若い人たちはもちろんだけれど、年を取った人たちにとっても大事なこと。なぜなら、未亡人や男やもめのみなさんが孤独になってしまうという大きな問題がいま起きているからなんです。

―日本でも昔に比べると性についてはオープンになりつつありますが、それでもパートナーに自分の欲求を伝えられない女性やセックスの楽しみ方がわからない女性もいます。どのようにすれば満足したセックスライフを送ることができるかアドバイスをお願いします。

ドクター・ルース オススメの方法は、ドクター・ルースが書いた『SEX FOR DUMMIES』を1冊持つこと(笑)。それをベッドに持って行って、本のなかに描かれている絵を相手に見せてみてください。そこにはさまざまなポジションでのセックスが描かれているので、どれを試してみたいのか指で差すだけでいいのです。

言葉でうまく伝えられない人も多いと思うけれど、これなら自分で語る必要はありませんよね(笑)。「私がして欲しいのはこれです」と絵を見せて伝えればいいのですから。あとは、「ドクター・ルースがそうすればいいと言っている」と付け加えてもらっていいですよ。

―確かに、それならシャイな女性でも実践できそうですね。続いては、パートナー選びについてうかがいますが、ドクター・ルースは3回の結婚を経て、「最後の夫フレッドさんこそが真実の愛」とおっしゃっています。“運命の人”を見分ける方法があれば、教えてください。

ドクター・ルース それはとても難しいことだけれど、まずはコミュニケーションをとってみて、同じことに興味を持てるかどうかは大事だと思います。実際、私たちの場合は2人ともユダヤ人で、スキーが好きという共通点がありました。だから、初めて出会ったのもスキー場だったんですよ。

あとは、運命の人に出会ったと思ったら、良い関係を築くために努力をすることも必要。とはいえ、私は運が良かったと思っています。なぜなら、フレッドは私が仕事で忙しくて料理をしていなくても気にもしない人だったからです。男性がみなそうであるとは限らないので、私はすごくラッキーだったんだなといま感じています。

生きているのには何かしらの理由がある

―これまでに多くの人たちがドクター・ルースの言葉に救われてきたと思いますが、ご自身の人生を救った忘れられない言葉はありますか?

ドクター・ルース もちろん、私にもありますよ。なかでも私を幸せにしてくれたのは、「一番大事なのは教育であり、誰も君から教育を取り上げることはできないんだよ」と言ってくれた父の言葉。私は91歳半になりましたが、そのときの父の声はいまでも聴こえてくるほどです。

それから、私が感じていたのは「私が生きているのには何かしらの理由がある」ということ。そのためには、人生において何かよいことをしなくてはいけないと考えていました。なぜなら、1500万人のユダヤ人の子どもたちがナチスに殺されたにもかかわらず、私は生かされているのだから。

―そういった辛い経験から得た思いも、ドクター・ルースの人生を支えていたものだったんですね。

ドクター・ルース そうですね。私の人生と魂は、私の生い立ちとユダヤ人であるということによって救われていたところもあったと思います。

あとは、一緒に過ごせたのはわずか10年半ではありましたが、素晴らしい父と母、そして私を育てることに一生懸命だった祖母に恵まれていたというのも大きかったですね。

特に、当時は村に私しか子どもがいなかったこともあり、村にいたみなが私を愛してくれましたが、のちに孤児になってしまうという最悪の事態で生き抜いていくなかで、そのときの幸せな思い出はかけがえのないものでした。

ユーモアを持って語ることが大切

―いまの私たちには想像もできない思いをされているにもかかわらず、ドクター・ルースはどんなときでも笑顔。その姿はとても印象的でしたが、いつも笑顔でいられる秘訣を教えてください。

ドクター・ルース 私の強さには、「ユダヤ人であること」と「ユダヤ人としての伝統をしっかりと引き継いでいること」が関係しているのかもしれませんね。

それから、ユダヤ教では「ユーモアを持って語られた教えは絶対に忘れない教えとなる」と言われているので、私も何かを語るときにユーモアを用いることは非常に大事なことだと意識しています。

―最後に、ananweb読者のなかには仕事や恋愛がうまくいかず、なかなか前に進むことができない悩める女性も多いので、メッセージをお願いします!

ドクター・ルース ときには人に助けを求めることも必要なことだと伝えたいですね。なので、もし仕事や恋愛がうまくいっていないのなら、心理的な面で問題がある可能性もあるので、そのときはセックス・セラピストではなくて、心理学のセラピストに行ってみるのもオススメ。心理学者によって、あなたがパートナーを見つけられない理由を見つけてくれることもあるはずですよ。

ドクター・ルースに解決できない悩みはない!

つねに笑顔で前に進み続けるドクター・ルースが放つ魔法の言葉は、まさに“人生の処方箋”。強いだけじゃないドクター・ルースのポジティブな生き方を見れば、どんな悩みを吹き飛んでしまうはず。精神的にも経済的にも自立した女性を目指すなら、必見の1本です!

笑顔になれる予告編はこちら!

作品情報

『おしえて!ドクター・ルース』
8月30日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開!
配給:ロングライド
https://longride.jp/drruth/

Photos by MAYUMI NASHIDA