不眠やネガティブ感情は秋のせい…! 「気分の落ち込み」を改善する意外な方法 #128

文・大久保愛 — 2021.9.30
日中は少し動くとまだ汗ばむ陽気ですが、朝晩はすっかり涼しくなりました。漢方薬剤師の大久保愛先生によると、こうした気温差は自律神経の乱れにつながるそう。実際にこの時期になると、なんだか気分が落ち込む、いつもは楽しいことがそう感じない、という人が増えるのだとか。そこで、愛先生が気分の落ち込みを改善する方法を教えてくれます!

最近、ネガティブになっていませんか?

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【カラダとメンタル整えます 愛先生の今週食べるとよい食材!】vol. 128


気温は穏やかに次の季節へと移り変わっていきますが、1日の間での寒暖差が大きくなってきています。これは、秋の特徴でもあります。日中の雲が少なく、空が高くポカポカで空間の広がりが気持ちよく感じる季節ではありますが、雲が少ないことにより地上の気温をキープできず朝晩の冷え込みを強く感じます。そして、秋分の日を越えたこれからの時期は、日照時間が徐々に減っていきます。

この1日のうちに感じられる寒暖差と日照時間の短縮によって引き起こるのが、自律神経の乱れによるネガティブな感情の出現です。みなさん、ちょっとネガティブになってはいないでしょうか? いつもだったら、笑ってやり過ごしていたのに何だか最近些細な他人の言葉や行動に傷ついたり、意欲の低下などを感じてはいませんか。もしかするとこれは季節的な感情の変化かもしれません。

自然の一部として存在する私たちは、季節の移り変わりに心と体が揺るがされることは当然のことです。ですが、モチベーションが下がり行動力が低下したり、いつもなら楽しめていることをしているのに暗い気持ちになってしまっているとしたらもったいないですよね。そこで、今週は季節の変化に心と体が負けないように気分の落ち込みを改善する食薬習慣を紹介します。

今週は、気分の落ち込みを改善する食薬習慣

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最近何かいいことありましたか? 楽しいことありましたか? もし今思いつかないとしたら、次に出会った人に聞いてみましょう。自分で思いつかなければ、人のポジティブな話を聞くことも刺激になりますよ。

秋になると漢方では、悲壮感や、内向的であったり、少し気分が塞ぎがちな感情を引き起こしやすくなると言われています。これは、雲の流れや太陽と地球との位置関係に由来するものです。こういったネガティブな側面が存在する一方で、ポジティブな一面も存在します。

例えば、通常はジメジメと高温多湿な気候が特徴的な日本ですが、この時期は比較的カラッとした空気で、気温も過ごしやすい環境になります。そのため、読書の秋、食欲の秋、スポーツの秋、食欲の秋、趣味の秋など、さまざまなことに没頭しやすい季節であることを象徴するような言葉が増えますよね。これは、気候の変動に負けずに生活できている人が感じるものになります。

本来とてもいい季節なので、秋のポジティブな側面を大いに感じられるようになれたらよいですよね。漢方ではこの時必要なものを『肺陰』を補うこと『肝気』の巡りを改善することと考えます。そこで今週は、この二つを補強する食薬習慣を紹介します。食べるとよい食材・メニューは、【レモンのスパイス漬け】です。

食薬ごはん【今週食べるとよい食材・メニュー:レモンのスパイス漬け】

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作り方は、簡単です。皮も食べられるタイプのレモンは皮ごと使用します。そうでないものは、皮はむいて使用しましょう。清潔な瓶の中にスライスしたレモン、クローブやシナモン、生姜などお好きなスパイスを入れ、ひたひたになるまでオリゴ糖や蜂蜜などをいれて一晩漬けたら完成です。お好みで紅茶や白湯、豆乳、ヨーグルト、炭酸などに入れて飲んでみてくださいね。

【レモン】

漢方ではレモンなどの柑橘系の食材は、『肝気』の巡りを改善し胃腸の働きを整えたり、ストレスケアができるとされています。また、腸の働きを改善することは、体の防御機能を高め間接的に『肺陰』を補うことにもつながります。さらに、抗酸化作用の高いビタミンCや代謝を高めるクエン酸なども含むため、デトックス作用も期待できます。

【クローブ】

クローブには「気」の巡りを改善する働きがあり、気分が塞ぎがちな時に役立ちます。殺菌作用や健胃作用があり、漢方では丁子という名前で活用されています。そして、スーパーのスパイスコーナーで販売されている意外と身近なスパイスです。「腸や肺」に「陰」をもたらすオリゴ糖や蜂蜜に漬け込むことで、エキスがでてくるのでより効果的です。保存し、喉や腸の調子が悪いときにも活用できます。

一度作ると2週間くらい日持ちします。透明のボトルに作りティータイムにテーブルに並べるとすごくおしゃれです。来客時やちょっとホッとしたい時などに香りや栄養素だけではなく、視覚的にも気分が上がるのは嬉しいポイントですよね。

気持ちが上がらない時には、あの手この手を使って自分の機嫌をとって、楽しい時間を少しでも増やしていきたいですね。ほかにもリラックス作用のあるレシピは、『不調がどんどん消えてゆく 食薬ごはん便利帖』(世界文化社)で紹介しています。もっと詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

※食薬とは…
漢方医学で人は自然の一部であり、自然の変化は体調に影響を与えると考えられています。気温や湿度、気圧の変化だけではなく、太陽や月の動きまでもが体に影響を与えています。学生の頃、太陽暦や太陰暦を学んだことを覚えていませんか? 一月の日数や季節などは太陽や月の動きから決められていたことはご存知のかたは多いと思います。

月や太陽は、地球との位置により引力が変わり、地球では潮の満ち引きが起こります。地球の約七割が水分と言われていますが、同様に人の体も約七割が水分と言われています。そう考えると、人間も月や太陽の影響を受けることは想像しやすいことだと思います。中国最古の医学書である皇帝内経(こうていだいけい)にも、月が体調に影響を与えることは記されています。

つまり、気温、湿度、気圧、太陽、月の変化とさまざまなものを指標にすることにより、より正確に体調管理をすることができます。この体調管理に食事内容を役立てることを『食薬』と呼びます。

Information

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大久保 愛 先生
漢方薬剤師、国際中医師、国際中医美容師、漢方カウンセラー。アイカ製薬株式会社代表取締役。秋田県出身。昭和大学薬学部生薬学・植物薬品化学研究室卒業。秋田の豊かな自然の中で、薬草や山菜を採りながら暮らす幼少期を過ごし、漢方や食に興味を持つ。薬剤師になり、北京中医薬大学で漢方・薬膳・東洋の美容などを学び、日本人で初めて国際中医美容師資格を取得。漢方薬局、調剤薬局、エステなどの経営を経て、漢方・薬膳をはじめとした医療と美容の専門家として活躍。おうちで食薬を手軽に楽しめる「あいかこまち」を開発。漢方カウンセラーとして、年間2000人以上の悩みに応えてきた実績を持つ。著書『1週間に1つずつ心がバテない食薬習慣(ディスカヴァー・トゥエンティワン)』は発売一ヶ月で七万部突破。『心と体が強くなる!食薬ごはん(宝島社)』、『女性の「なんとなく不調」に効く食薬事典(KADOKAWA)』、近著に「不調がどんどん消えてゆく 食薬ごはん便利帖(世界文化社)」がある。
公式LINEアカウント@aika
https://aika-inc.co.jp/

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『女性の「なんとなく不調」に効く食薬事典』(KADOKAWA)
体質改善したい人、PMS、更年期など女性特有の悩みを抱える人へ。漢方×栄養学×腸活を使った「食薬」を“五感”を刺激しつつ楽しく取り入れられる。自分の不調や基礎体温から自分の悩みを検索して、自分にあった今食べるべき食薬がわかる。55の不調解消メソッドを大公開。


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