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女に嫌われる女|12星座連載小説#11~天秤座2話~

文・脇田尚揮 — 2017.2.6
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第11話 ~天秤座-2~

前回までのお話はコチラ


「佐々木さん! お昼の時間はとっくに過ぎていますよ!」

ヤバッ……。お買い物を終え仕事に戻ると、案の定、来栖さんに注意されてしまった。奥にいる鈴森さんも不機嫌そう。

『すみません! ちょっと体調が悪くて……。本当にゴメンなさい』

――下着の入った買い物袋、先にロッカーに入れておいて良かった。

「佐々木さん、私たちはチームなの。最低限のルールは守ってくれないと困るのよ。分かる?」

分かってるわよ。でも、きちんと売り上げてるじゃない。私は結果は出してるはずよ。

……内心そんなことを思っているけど、口からは謝罪の言葉が出てくる。
争いごとは苦手。謝って済むのなら、いくらでも謝るわ。私は平和に生きていきたいの。

仕事に戻り、商品をたたんでいると、鈴森さんと目が合った。

『あっ、鈴森さん、棚卸しは……』

「もう終わったわ」

そう言って、彼女は目をそらした。……嫌な空気。私だってやりたいことがあったの。仕方ないじゃない。

少しピリピリした空気の中、私はさっき買った下着のことを考えながら仕事を続けた。

次のパーティには、絶対あの下着をつけていきたいな。今度から『ヴェイル』に参加するときは、黒木社長にもお声がけしなくちゃ。イイ女の周りには、イイ男が集まるものだしね。

いろいろ考えごとをしながらも、私の身体は勝手に動いてくれる。
接客も、“この人にはこのデザインが似合う”とか、“この色味がしっくりくる”とか、なんとなく分かっちゃうから悩むことはない。

みんな意外と、自分に似合うものを分かっていないものなのよね。でも私にはそれが分かる。小さい頃からセンスが良いって褒められてきたし、ある意味私の才能よね。

時計を見ると、もう20時だ。あと1時間かぁ。

「……今夜は、祐太たちと飲もうかなぁ。」

祐太はイベントで知り合った飲み仲間の一人だ。気さくで友達が多いから、声をかけるといつもメンバーを集めてくれる。
楽しい夜を過ごしたいなら、祐太を呼ぶに限る!

幸いにも、私はオトコに困ったことはない。女友達は少ないけど、その分いつも男友達に囲まれてきたもの。

女の人って何を考えているか分からないし、本当にやりづらい。男の人はいつもチヤホヤしてくれるし、何より単純だから良いわ。ちょっと褒めるだけで、有頂天になってくれる。でも、私の人生を任せられるようなイイ男はなかなかいないのよね~。

『お疲れ様でした~』

クロージング業務を終え、ロッカー室から祐太にお誘いLINEを送る。

あっ、忘れちゃいけない! ロッカーに入れてある下着、回収して帰らなくちゃ。
いそいそと準備をしていると……、鈴森さんだ。

「佐々木さん、あなたやる気あるの? ここは学生のサークルじゃないのよ。あなた、体調が悪いらしいけど、どうせ今から飲みにでもいくんでしょ」

うわっ……。面倒。

『鈴森さん、今日は本当にゴメンなさい。お陰様でだいぶ体調も良くなってきました』

私は余計な口答えはしない。何事も穏便に、ね。

「どうだか」

『すみません! また明日もよろしくお願いします。まだまだ未熟者なので頼りにしてます!』

深々と頭を下げて、私は店を出た。これだから女はやりにくい。

下着を回収し、ふとスマホを見ると祐太からLINEが返ってきていた。何人か男子を呼んでおいてくれる、か。

おしっ! 今日は渋谷で2時間コースね。

“了解、先に飲んでてね……”っと。返信し、急いで渋谷に向かう。

駅のホームで電車を待っていると―――

「あら、恭子ちゃん?」

“彼女”とバッタリ会った。

『ああ! マリアさん!』

私が以前、夜の仕事をしていた時の同期だ。ミステリアスな雰囲気と日本人離れしたスタイル、いわゆる、“男ウケ抜群”のタイプ。

一緒に働いていたときは、何かと面倒を見てくれたっけ。成績はいつも私より上で、ちょっと目障り……と感じていたのも確かだ。

「やっぱり恭子ちゃんだった。元気?」

『はい! 変わらずです。私は今、アパレルやってます』

そう、私はもう、夜は卒業したのよ。

「そうなんだね、私はまだ夜やってる。今はマリアじゃなくて、“絢芽”としてね」

『……お店、移られたんですか?』

「まぁ、そんなものね。今は銀座なの」

そう言って、絢芽さんは名刺をくれた。見るからに高級そうなお店だ。名刺の雰囲気からも、十分伝わってくる。

私は自分の中に、沸々と芽生える感情に気付いた……。
嫉妬に近いような……何か。でも、“それ”とバランスをとるように、こう自分に言い聞かせる。

―――私は自分で稼ぐ人生じゃなく、男の人に幸せにしてもらう道を選んだんだ。

そう、素敵な旦那サマを捕まえて、何不自由ない暮らしを送るんだから。

『そうなんですね! すご~い! 一等地じゃないですか!』

私の口から出る言葉は、いつも本音とは裏腹なもの。でも、これでいいの。

地下鉄のホームに乾いたアナウンスが響き渡る。もうすぐ電車がやってくるようだ。

次回、“第12話 「“男”に囲まれてこそ私は輝く」”は2月7日(火)配信予定。

【これまでのお話一覧はコチラ♡】

【今回の主役】
佐々木恭子 天秤座27歳 アパレル店員
センスがよく整った容姿の女性。男に困ったことがなく、広く浅く男性と付き合う、いわゆる“リア充”である。将来の夢は玉の輿に乗ることで、毎週タワーマンションで催される会員制パーティー『ロイヤル・ヴェイル』に参加している。仕事仲間からは陰口を叩かれているようである。

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