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【12星座連載小説~獅子座2話~】私の戦闘服は「下着」#8

文・脇田尚揮 — 2017.2.1
12人の女性たちの生き方を、12星座になぞらえて紹介していくショートクロスストーリー『12星座 女たちの人生』。 キャリア、恋愛、不倫、育児……。男性とはまた異なる、色とりどりの生活の中で彼女たちは自己実現を果たしていく。 この物語を読み進めていく中で、自身の星座に与えられた“宿命”のようなものを感じられるのではないでしょうか。

【12星座 女たちの人生】第8話 ~獅子座-2~

前回までのお話はコチラ


う~ん……。ハッ!

『今何時だ!?』

手元の時計に目をやる。

『……あぁ、良かった。まだ6時か』

ボサボサの頭、メイクもしたまま。
昨日はあの後、派手に飲んじゃったのよね~。頭、痛い……。

寝ぼけまなこのまま、ウォーターサーバーでぬるま湯を汲み、レモンを絞る。

『はぁ~、飲み過ぎた次の日はこれに限るわね』

6年間変わらぬ、私の習慣だ。

“仕事は酒を飲みながらやる!”っていう信条を私は持っているんだけど、さすがに朝からトップがベロベロだと従業員に示しがつかないからね。

『えーっと、今日のスケジュールは……っと』

パラパラと手帳をめくる。今日は新商品発表の準備、お得意先の内藤様の接待、そして明後日の取材準備ね。OK、今日もやったるわ!

……毎日やることがあるのは幸せよね。

私の両親は二人とも学校の先生。安定した仕事、そして真面目な男性との結婚をしきりに勧めてくるけど、そんなの私にはムリよ。何事も、努力して勝ち取っていく人生じゃないと面白くないわ。

シャワーを浴びて、ヘアセット&メイク。
そして下着を身につける。もちろん私のブランド『アリアン』ちゃんの下着よ。私のブランドだもの、私が一番可愛がってやんなきゃねっ。

ビシッとブラをキメ、かなりタイトなベルト&ガードルを身につける。

そう、私にとってこれは戦闘服。
この戦闘服をまとってこそ、『アリアンロッド』の社長・黒木真利子の完成ってわけよ。

香水をシュッとひと吹き、その下をくぐる。昔はこれでもかってくらいプンプンつけていたけど、客商売だからね。今はほんの少し。

『おし!』

お気に入りの時計をつけて、中目黒の私の城(オフィス)に出発。

もちろん電車通勤だ。社長出勤なんてとんでもない。私は必ず従業員の誰よりも早く出社して、店内の掃除、商品展示、そして在庫確認をする。

リーダーたるもの、当たり前のことだと思ってずっと続けてきた。そういう姿勢に人はついてくるってもんよ。私のことを煙たがる子もいるけど、いいの。経営者なんて、嫌われてナンボだし。

さて、今日はどの商品をピックアップしたもんかね。
満員電車の中であれこれ考えながら、優先順位をつけていく。

『ん……?』

ふと目をやると、泣きそうな顔をした女子学生が私の横で震えてる。

どうしたんだろと注意深く見てみると、しけた面のオッサンが彼女の尻に手の甲を押し当てている。あからさまではないが、見るからに不自然な姿勢だ。

なんつーか、ズルいっていうか、痴漢すら堂々とできないんだな。電車が満員なのをいいことに、朝から楽しんでんじゃねーよ。

本当なら、

『おい、オッサン、あんた何してんのさ!!』

と腕を掴むところなんだが、私も人の上に立つ身。あまり大事にはしたくないのだ。許せ女子学生よ。

「カシャ」

私はスマホで、そのオッサンが彼女の尻に押し当てている手を撮影した。周りの人々が一斉に振り向く。私はニコッと微笑んで、オッサンに画像を見せた。

「ななな、なんだっ、失敬な!」

と言いながらオッサンは、後ずさりしてギュウギュウの電車の中を奥へ奥へと逃げていった。ほー、頭頂部ハゲてんなー。

「あの……、ありがとうございました」

女子学生が消え入りそうな声で話しかけてきた。

『大丈夫だった?』

彼女はコクッとうなづいた。はー、純粋だねぇ。アタシにもこんな時代があったのかね。

私は高身長な上に、いつもハイヒールを履いてっから、よくビビられる。
話し方もハキハキしてて、言葉遣いも男っぽくて……。そりゃあ、オトコもできないよって話だけど、さ。

「―――中目黒ー、中目黒ー。」

到着のアナウンスだ。私はふと我に返り、ホームに出る。

『あれ?』

さっきの女子学生も降りてる。

『キミ、ここの近くの学校?』

「あっ、いえ、そういうわけではないんですが……あの、お礼を言いたくて……」

『わざわざありがとう。いいのに』

「あの、私、内田菜摘って言います。本当にありがとうございました!」

そう言って、その子は走り去った。

律儀だねぇ。朝から気分がいいわ。

清々しい気分で、私は自分の城『アリアンロッド』へと向かうのであった。

『ふーっ本日も無事、我が城に到着っと。オープン1時間前。OK!」

そうして私は、いつもの日課をこなす。まずはトイレ掃除からね。

フンフンフーン

今日は心が軽やか、すこぶる気分が良い。一日一善したからね。

あ、ペーパーがもうないや。後で、尾田ちゃんに補充するよう頼んどこーっと。

尾田ちゃんは、一番付き合いが長いスタッフだ。お金の管理から、シーズンごとのセレクトまである程度のことは任せてしまっている。

ちゃらんぽらんな私の代わりに、店をしっかり回してくれている、言わば“支配人”ね。私も彼女にはよく叱られるんだけど、基本的に何も間違っていないから言い返せないのよね。それくらい頼りになるってこと。

「よし、準備終ーわりっ!」

今日もバッチリね。
「お客様よ!いつでも来い!」って感じ。こうして私の一日が始まるのだ。

次回、“第9話 「招かれざる客!? アタシだってオトコが欲しいの!」”は2月2日(木)配信予定。

【これまでのお話一覧はコチラ♡】

【今回の主役】
黒木真利子 獅子座31歳 経営者
女性向け下着ブランド『アリアンロッド』の経営者。プライドが高く、自分の力で今の会社を立ち上げ軌道に乗せたことに誇りを持っている。しかし、恋愛はあまり得意でなく、強気な性格ゆえに男性との関わり方について悩んでいる。顧問税理士の茂木篤史は心を許せる存在。

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