【“逆”お持ち帰り…!?】気になる30歳童貞オトコ|12星座連載小説#43~天秤座4話~
【12星座 女たちの人生】第43話 ~天秤座-4~
前回までのお話はコチラ。
「こちらカシスオレンジになります」
店員が私のドリンクを運んできた。
――と同時に
「ウェ~イ、恭子にかんぱ~い!!」
祐太が音頭をとり、他の2人もドリンクを持ち上げた。私もそれに合わせて
『アリガト~!』
って、グラスを持ち、顔の横にピタッとくっつけてみせる。
「恭子ちゃん、ノリ良いね~! 俺、そういう女の子大好きだわ~」
“髪切り屋”が、馴れ馴れしく私の肩を叩いてくる。
オゲレツ! あ~も~ウザッ。こういうタイプは最初から論外。下心が見えすぎてシラけちゃうわ。
オトコなら、もっとこうスマートにしてくれないものかしらね。
「恭子ちゃんってさ、若いよね~? 年いくつ? 俺は26」
コイツ……デリカシー無さすぎ。いきなり歳の話をするなんて、本当にイヤ。女の子に年齢聞くとか、ありえないわ。しかも、年下って……。
「お!恭子、ほら、ローストビーフきたぜ」
不穏な空気を察したのか、祐太が気をきかせてくれる。こういう気遣いができるから、祐太とは友達を続けていられる。オトコ友達は選びようによっては、強力な武器になってくれるからね! 助かる。
……と、今日の“気になる”メガネ君は、さっきから一言も発してないし飲んでもいない。ホント、典型的な“草食男子”って感じね。
モテないわけではないんだろうけど、この感じじゃ女の子はなかなか近寄りにくいかも……。
『薫クン、さっきから飲んでないね? お酒苦手?』
私から切り出す。
「えっ、あっはい、ボク飲むとすぐ眠くなっちゃうんで……」
……調子狂うわ。それじゃあ、何で飲みに来たのよ~。
こんなにツレない子も珍しいわね。もしかして……ホモ?
「薫クンてさ、普段何してんの?」
……チャラ男が頬杖をつきながら、メガネに話しかけてきた。
「ボクは自宅で、デザインなどの仕事をしています」
「へぇ~、在宅なんだ。そしたら逆にプライベートの時間とかないんじゃん?」
「まぁ……そうですね。いつも自由といえば自由ですが、仕事といえば仕事ですかね……」
何とも言えない空気だ。私がメガネ君に気があると勘づいたのか、ロン毛がやたらと絡み出した。
もう! 男ってすぐにこうやってマウンティング始めるんだから……。第一印象で、私の“オキニ”は決まってるって言うのに。
「つーかさ、薫クンって……もしかして“童貞”?」
……うわ、露骨な質問。
何でこう“ヤったのヤらないの”を気にするんだろう。“何人斬り”とか自慢げに語る男って大嫌い。
女側からすれば、変に経験積んでいる男子より、童貞の方がよっぽどマシだわ。こっちが教えてあげるってのも悪くないし。
エッチに自信がある男ほど、「気持ちいいだろ?」って勘違いして、痛いばかりのプレイとかしてくるし。演技して付き合ってあげているだけなのに、笑っちゃう。ロン毛なんかまさにその典型ね。
「……はい」
正直すぎ! 正直すぎるよぉ~カオル君!
そこは「秘密です」くらいで、流さないと空気悪くなっちゃうでしょ。
「まぁまぁ、薫は優秀な奴なんだぜ。これでも有名私大卒でいい仕事するから、稼ぎも良いし……な、薫?」
「いや、別にそんなことないよ…」
ほほう、高学歴でなかなかの収入かぁ。よく見たらルックスも悪くないし…う~ん良いかも。
『へ~! ていうか、さっきから気になってたんだけど、薫クンて何歳なの?』
気になる質問を振ってみる。こちらは振られたら嫌な質問だけど、オトコに振るのはアリ。これは女の特権ね。
「今年で30歳になります」
―――“ピキーン”と音がするくらい場が凍った。
どっからどう見ても22、3にしか見えないこの童顔メガネ君が、実はこの中で一番年上ってオチ?
……で、童貞。なにそのレアキャラ……! 逆に興味深々だわ!
それから微妙な空気のまま4人の時間が過ぎ、解散の流れになった。
取りあえず、2人とLINEを交換。もちろん、ロン毛は即ブロックするけど。
う~ん、今日は、この“薫さん”のこと、もう少し知りたいな……。
「じゃあ、俺たちコッチだから、またな恭子」
「また飲もうね~恭子ちゃん!」
「それじゃあ。」
申し訳なさそうな祐太と、ブンブン手を振るロン毛、そして……俯き加減な薫さん。それをニコッと笑顔で見送る私。
『……そろそろいいかな』
3人の姿が見えなくなってから、薫さんにLINEを入れる。
“薫さん、さっきはありがとうございました。私、ちょっとデザイン関係のことで悩みがあって……もし良かったら、今から少し相談に乗って頂けませんか?”
あの手の人はダイレクトに誘っても、たぶんムリだから……。でも、仕事の相談に乗ってもらう体ならイケるかな。
……まぁ、それでも五分五分だけど(童貞だし)。取りあえずスタバでスタンバって、様子見よ。
それから数分後。
“こちらこそ、ありがとうございました。何か私でお役に立てるのであれば、相談に乗りますよ。今からですか? もう遅いですけど”
薫さんから返信だ!
“今、私はスタバです。もしよければお願いできますか?”
送信っ、と。
2人きりの二次会への誘い出し方には、多少自信がある。
【今回の主役】
佐々木恭子 天秤座27歳 アパレル店員
センスがよく整った容姿の女性。男に困ったことがなく、広く浅く男性と付き合う、いわゆる“リア充”である。将来の夢は玉の輿に乗ることで、毎週タワーマンションで催される会員制パーティー『ロイヤル・ヴェイル』に参加している。仕事仲間からは陰口を叩かれているようである。
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