会社を辞めて、こうなった。【第35話】 渡米後の激しいホームシックと自己喪失。 1年半ぶりに元職場・マガジンハウスを訪問。

2016.7.9 — Page 2/2

私は一体誰? 自分のホンネと向き合うために一時帰国。

目線を変えれば、サンサンと輝く太陽が。なのに影ばかりに目をやってしまうのは何故? 徹底的に自分の感情と向き合うために、元職場であるマガジンハウスを訪ねることにしました。
目線を変えれば、サンサンと輝く太陽が。なのに影ばかりに目をやってしまうのは何故? 徹底的に自分の感情と向き合うために、元職場であるマガジンハウスを訪ねることにしました。

”どんなときでも前向きでいないと“ そして ”もっともっと頑張らないと“。そう、わかっています。けれども息抜きが無いうえに、やってもやっても終わりが無いように感じて、心の中は緊急事態。そこで、やらなければいけないことは山積みだったのですが一旦中断して、夏休みに思い切って一時帰国しました。理由はいろいろとあったのですが、そのひとつに ”今までの自分とこれからの自分を繋げる” というものがありました。過去と現在、そして未来の自分を結ぶ糸口は何か。私は一体誰なのか、何をしたいのか? 何が得意で何が苦手なのか? 本当に私が今までやってきたことは、これからの自分にとって無意味なのか? 過去の自分から今後受け継いでいきたいもの、手放してきたいものは何か。そして今をどう生きていくのか。一旦全部を白紙にする覚悟で(バークレーに戻らないということも含めて)、再び自分の本音を深く見つめようと思ったのです。

そこでまず、大学卒業後に14年間勤めたマガジンハウスを訪ねることにしました。20代、30代の最も重要な時期を過ごしたマガジンハウスは私の青春でした。だからこそ正直を言えば、今このタイミングで元職場を訪ねるのはすごくイヤでした。忙しそうに働くみんなと、貯金を切り崩して生活するだけの何者でも無い自分……。どうしようもなく格好悪いスチュエーションも安易に想像でき、そんな場面で生じるであろう自分の劣等感と向き合うのが怖かったからです。けれども、そんなネガティブな感情も直視しないとホームシックもアイデンティティの喪失の問題も解決されないことはわかっていました。だって否定的な感情を含めた全部が今の私で、それを全て認めない限り、過去と今の自分に折り合いをつけることは出来ないから。

元職場・マガジンハウスへ。早くも受付でグサリ!

元後輩にも食事に誘ってもらいました。後輩にまでご馳走してもらってしまった私…(汗)。会社を辞めて以来、お世話になる人がどんどん増えていきます。本当にありがとう。「出世払いで」と思っているので、みんなどうぞ長生きしてね。
元後輩にも食事に誘ってもらいました。後輩にまでご馳走してもらってしまった私…(汗)。会社を辞めて以来、お世話になる人がどんどん増えていきます。本当にありがとう。「出世払いで」と思っているので、みんなどうぞ長生きしてね。

会社に着いたら、今まで「こんにちは」と挨拶をして通り過ぎていた受付で面会の手続きをします。訪問先、自分の氏名などを書いた後、会社名を書けないことにまずグサリ。「こんな些細なことで劣等感を持ってしまうんだなぁ…」と自分の小ささを感じながら、入館許可証を受け取りました。ピンタイプの許可証を服につけながら「あぁ、部外者になったんだなぁ…」と実感。その後アンアン編集部で受付をすると、対応してくれたアルバイトさんの顔も名前もわかりません。1年半って短いようで、長いんだなと感じました。

ちょうど編集部を訪ねた頃が夕方だったので、みんな忙しそうに働いています。取材先から帰ってきたばかりの元同僚編集者や校正チェックに勤しんでいるライターさんとも会ってお話できました。その後、お世話になった先輩編集者に食事へ連れて行ってもらいました。みんなとても優しかったし、楽しかった。どんなに忙しくても時間をさいてキチンと相手と向き合い、冗談を言う心の余裕がある人達。部外者になって、しかも未だ何者でも無い私にも敬意を持って変わらずに接してくれました。そんな人達が働く会社、マガジンハウスはやっぱり良い会社だなと思いました。でも私の席はもちろん無く、そこに居る自分の姿ももうイメージできません。14年間勤めた会社を訪ねてもなお、過去と今、そして未来の自分をつなぐ糸口は見つからない。どこにも帰属感が無いのに、“もう後にも引き返せない” という現実。それだけはわかりました。言うならば今の私は目の前の景色は霧がかっていて先がよく見えないのに、後ろを振り返ってももう道が無い。そんな感じだと思ったのです。

See You!

海が見たいと言って親友に連れて行ってもらった葉山で。1年半ぶりの友達との再会で感じたことはまた次回に書きたいと思います。
海が見たいと言って親友に連れて行ってもらった葉山で。1年半ぶりの友達との再会で感じたことはまた次回に書きたいと思います。

 

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PROFILE
土居彩
編集者、ライター。14年間勤務したマガジンハウスを退職し、’14年12月よりサンフランシスコに移住。趣味は、ヨガとジョギング。ラム酒をこよなく愛する。目標は幸福心理学を学んで、英語と日本語の両方で原稿が書けるようになること。