会社を辞めて、こうなった。【第18話】 ついにヒッピーになる?!

2015.7.8 — Page 2/2

ドケチ→自己嫌悪。負のループにはまる。

「とはいえ、ゼロ円っていうワケにはいかないだろう。レンタカーやガソリン、食事や宿代など、慣行経済の中で生きている限り必要経費はかかるのだから。でもこのギリギリ生活の私が支払える額なんてたかがしれている…。折半と言われたらどうしよう…。払えないかもしれない。ヤバイヤバイ。だから、やっぱり参加しないほうがいいかな。サンフランシスコ周辺に滞在するときは家から通ったほうがオーガナイザーの2人の負担にならずに良いかもしれない。でも折半になったところで支払っても明日死ぬわけではない。払おうと思ったら払えるはずだ。でも心理学の勉強ができなくなるなぁ。で、なんで心理学勉強したいんだっけ? 利他的な意識で生きると幸せになれると研究したいんだったよね。えっ、でも今の私はギフトを与えるどころかギフトをもらおうという意識しか働かない自己中心的でドケチな女…。えぇ、私はドケチですよ。しかし、ただ単に自分のエゴを満たすためだけに勉強したいんじゃない! いずれ皆さんに学んだことをシェアするために勉強しているんだ。ここまでそう信じて来たけど、実際は自己満足になっているだけなのかも。何の貢献もできてないしなぁ。あぁ、虚しい…。ドケチ精神で生きているから、いろんなものを奪われてしまうのだなぁ。トホホ、自己嫌悪(初めに戻って、エンドレス…)」

というようにダークな内面と向き合う結果、遠足前のようなワクワク感は全く無し。ちっぽけなプライドも邪魔をして自らツアーを申し込んだくせに、ツアー当日まで「参加したい」と「参加したくない」という気持ちの間で揺れ動きました。ちなみに私がオーガナイザーの1人、海くんと初めて出会ったのは4年ほど前。当時はマガジンハウスの社員でお金も仕事もありました。でも今の私は「もはやマガジンハウスというバックグラウンドもお金も無く、英語力も中途半端。そんな私ができるギフトって一体何なんだろう?」。この問いとずっと向き合わなければならなかったのです。これが一番キツくて、ツアーから逃げ出したかった理由。モヤモヤ悩みながらも刻一刻と時は無情に過ぎ、ツアー当日が来てしまいました。そこで、とにかくある現金をかき集めて米やパン、野菜などの食物、洗剤などの日用品と寝袋をかかえて待ち合わせ場所の空港に向かったのです。

カルマキッチンからスタート。

バークレーにあるカルマキッチン。ニップン・メッタさんという人が2007年3月にスタート。提供されるのはベジタリアンのインド料理。
バークレーにあるカルマキッチン。ニップン・メッタさんという人が2007年3月にスタート。提供されるのはベジタリアンのインド料理。

ツアー参加者はオーガナイザーの2人を含めて14人。大学の先生からヨガ教師、アーティスト、ゲリラ的に公園に果樹を植えている女性、ライター、学生とユニークな面々が揃いさまざまです。初日は、サンフランシスコから少し行ったバークレーという街にある“カルマキッチン”というレストランからスタートしました。いずれ詳しくお伝えしますが、このレストランのメニューには代金が載っていません。“ペイフォワード”といって前の人が自分の食事代を既に支払ってくれているという運営システムなのです。まさに「優しさのギフト」をつなぐギフトエコロジーなレストラン。食事の支払いをするかどうかも自分で選択し、支払った場合はそれが次にレストランに来た人の食事代となります。去り際にレストランで働くボランティアの人に小さなカードを手渡されました。そこには「Big things have small beginnings(大きなことは小さな始まりから)」と一文が。そこから、この言葉が私のツアー、そしてこれからの人生のテーマとなり、私のギフトエコロジーツアーが始まったのです。

See You!

訪ねたガーデンやファームには食べられる木の実がいっぱい。カリフォルニアの土地の豊かさを実感。(写真・藤井麗美)
訪ねたガーデンやファームには食べられる木の実がいっぱい。カリフォルニアの土地の豊かさを実感。(写真・藤井麗美)

 

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PROFILE
土居彩
編集者、ライター。14年間勤務したマガジンハウスを退職し、’14年12月よりサンフランシスコに移住。趣味は、ヨガとジョギング。ラム酒をこよなく愛する。目標は幸福心理学を学んで、英語と日本語の両方で原稿が書けるようになること。