鬼頭明里「『鬼滅の刃』の禰豆子は特別な存在」アーティストとしての素顔
【音楽通信】vol.55
声優になって以来いまは「未知の領域にいる」
2014年に声優デビューした鬼頭明里さんは、一世を風靡している『鬼滅の刃』の竈門禰豆子役、『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』近江彼方役、『Re:ステージ! ドリームデイズ♪』月坂紗由役など、数多くの話題作に出演している、人気声優です。
とくに『鬼滅の刃』の禰豆子役は、子どもから大人まで、アニメファン以外の層からも圧倒的な人気を博し、国内外でそのキャラクターに魅了される人が続々。
アーティストとしては、2019年10月にシングル「Swinging Heart」でデビューを果たし、2020年6月リリースの1stアルバム『STYLE』はヒットチャート7位を獲得。9月から10月まで開催された東名阪での1st ライブツアー「Colorful Closet」は大成功で幕を閉じました。
そんな鬼頭さんが、10月28日に、3rdシングル「キミのとなりで」をリリースされるということで、お話をうかがいました。
ーーまずは、鬼頭さんの音楽的なルーツから振り返らせていただきます。小さい頃はどんな曲を聴いていましたか。
小さい頃から、アニメがずっと好きだったので、曲といえばアニメソングばかり聴いていましたね。お父さんはオタクだったんですが、お母さんはそうでもなく、TUBEさんなどそのときどきに流行っていた曲を聴いていて、私も一緒に聴くことがありました。
小学生になると、近所のカラオケ店にものすごく通いつめて、アニメソングをよく歌っていましたね(笑)。親の車でおばあちゃんの家に行くときも、車の中で曲を流して、カラオケ大会のようにずっと歌っていました。
ーーそんななかで、声優を目指すようになられたきっかけは。
家ではケーブルテレビがつながっていて、アニメを視聴できるチャンネルがあって、80年代、90年代のアニメをずっと観ていて「やっぱりアニメが好きだな」と実感していました。中学生の頃になると、声優さんのいろいろなアニメのラジオ番組を聴き始めて、「アニメについて話している声優さんって、すごく楽しそうな人たちだな、これがお仕事だと楽しそう」と思ったことが、声優さんになりたいと思ったきっかけですね。
でも、声優さんになるためにはどうすればいいか調べてみたら、とりあえずは上京しないと無理だということがわかって、その夢をしばらく諦めていました。
ーーでは実際に2014年に声優デビューされましたが、どうやって夢をつかんだのですか。
高校を卒業する前の進路を決めるタイミングで、一度は諦めていた声優さんになろうと決断したんですが、そう思う前までは、イラストレーターになろうと思ってずっと絵を描いていたり。地元の愛知のことも好きだったので、愛知の大学に通うことを考えていました。
でも、それは親のお金で大学に通わせてもらえるなら行こうというぐらいの気持ちで、いざ親に大学の話をすると「お金ないよ」と言われて(笑)。「自分で奨学金を借りて、行きたいなら行きなさい」と親に言われ、「自分で借りてまで大学に行かなくていいな」と思って、じゃあ何をしようかなと。
そこで、一度は諦めた声優さんになりたいと思って、行動したんです。今度は地元にこだわらないで、自分でお金を貯めて、声優養成所に通うために上京して、本格的に声優さんを目指すようになってからテレビアニメでデビューすることができました。
ーー社会現象となっているアニメ『鬼滅の刃』のヒロイン・竈門禰豆子役として声を担当されていますが、鬼と人間との感情で揺れ動く禰豆子の葛藤が画面からも伝わり、物語にも大いに感動しました。役作りはいかがでしたか。
作品にもよるのですが、声をあてるときに、棒人間みたいなものしかない状態のときもありますし、カラーのときも線画のときもあるんです。でも、“鬼滅”の場合は、線画でしたがしっかりと表情が描いてありました。その映像を見て、台本からも禰豆子の心情を読み取って、そして原作も読んで、「こんな表情をしているからこうかな」と、想像しながらやっていましたね。
ーーまわりの方からの反響も大きかったのではないですか。
これまで声優になってからも、常に「売れるぞ!」「ビッグになるぞ!」という気持ちではいたんですが、いまはそこを飛び越えて、「未知の領域にいる」と思うところにいて(笑)。まさか自分がここまでいろいろなお仕事をさせてもらえるようになって、アーティスト活動もさせていただけるようになると思っていなかったので、毎日未知の世界が広がっています(笑)。いろいろと楽しくお仕事させていただいて、すごくありがたいですね。
私の目標のひとつに、親戚や家族など「まわりの人たちに恩返しがしたい」「自慢できる友達、娘、親戚になりたいな」という思いがあって。いまはまわりの親戚や家族もすごく喜んでくれているので、とてもうれしいですね。
ーーさまざまなキャラクターで声を務めていらっしゃいますが、鬼頭さんのなかでも、禰豆子役は少し違う存在なんでしょうか。
そうですね。私の地元の友人はあまりアニメを観ないんですが、そんな人たちでも「“鬼滅”すごいね」と言ってくれるようになりましたし、おじいちゃんもそうです。いままでアニメに出ていると言っても「ほうほう、よくわからんけどがんばっとるね」という感じだったのですが(笑)、『鬼滅の刃』のことはおじいちゃんのまわりのお友達からも「明里ちゃん、すごいね」と言ってくれるらしくて、「明里ちゃん、がんばっとるんですね」とようやく認識してくれました。だから、禰豆子はだいぶ、特別な存在なんじゃないかと思います。
『安達としまむら』のOPテーマ&EDテーマを歌唱
ーー2020年10月28日に、さわやかでドラマチックな3rdシングル「キミのとなりで」をリリースされます。表題曲は10月8日からスタートしたテレビアニメ『安達としまむら』(TBS系 深夜1時58分)のエンディングテーマで、同アニメの主人公・安達の声も鬼頭さんがご担当されていますが、オープニングテーマは“安達としまむら”が歌う「君に会えた日」なのですね。
エンディングテーマとなっている今回の新曲は私名義のもので、鬼頭明里として、アーティストとして歌わせていただいています。オープニングテーマについては、アニメの“安達としまむら”として、キャラクターソングとして歌わせていただいていて、安達というキャラクターになりきって歌っていますね。
キャラクターソングは、キャラクター目線で歌っている感じなんですけども、アーティストとして歌わせていただいている曲に関しては、作品や物語自体を俯瞰して見ているというか。なので、今回はふたつの視点から、オープニングとエンディングを歌わせていただいていて、作品への理解が深まった気がします。
ーー「キミのとなりで」には、ロックテイストの2曲目「Dive to World」、ファンクな感じもある3曲目「トウメイナユメ」も収録されています。
今回、3曲ともさわやかな感じの曲なので、どの曲もあんまり考えすぎずに歌うようにしてみました。
ーー2019年10月から、アーティスト活動をこれまで1年間されてきましたが、いまはどのようなお気持ちでしょうか。
役者として歌ったり踊ったりしているときは、キャラクターの気持ちだったり、キャラクターを表現したりという感じがあるんです。でも、アーティストとしては、自分を表現する、自分自身であるというところで、そこがすごく難しかったですね。自分を出すことが苦手ということもあって役者になったので、アーティスト活動は自分を出さなきゃいけない、自分を表現しなければいけないとなったときに「自分とはなんなんだろう?」とすごく考えました。
ーー今年6月には1stアルバム『STYLE』も発表されて、ご自身の曲数が増えていくなかでも、自分とはなにかという葛藤もありながら、歌われていたのでしょうか。
はい、曲が増えていくなかでもありましたね。いまだに、自分とはなにかが見つかっていないんですが、私は飽き性だし、いろいろなことをしたいタイプなので、これからも“新しい自分を見つけていく”気持ちでやっていけたらなと思っています。
ーー9月から10月には初ライブツアーも行われましたが、実際にステージに立たれて、手応えのほどはいかがですか。
初めてのライブでしたし、このコロナ禍というのもあって、ものすごく緊張しました。お客さまも声援を送れないので声を出せなかったり、マスクとフェイスシールドをしてもらったり、席もソーシャルディスタンスとなっていたり。いろいろな制限があるなかで、楽しんでもらえるんだろうかと不安もあったんですが、そんななかでも拍手してくださって、「すごく楽しかったです」と言って帰ってもらえたりしたので、すごく安心しましたし、ライブができて良かったと思いました。
ーー大阪公演では、LiSAさんが歌うテレビアニメ『鬼滅の刃』のオープニングテーマ「紅蓮華(ぐれんげ)」のカバーを披露されたそうですね。
各公演で毎回違うキャラクターソングや私が出演したアニメの主題歌のカバーを歌わせていただきました。アーティストとしての自分の曲よりも、カバー曲のほうが、前々からカラオケで歌い慣れている曲なので、今回のライブでバンド編成になったときもすんなり歌えたかもしれません(笑)。
ーー声優の方は、「声」がとても重要なものですし、アーティスト活動でも歌われることが多くなりますが、普段ノドのケアはされていますか。
昔からノドが強くて、たとえば加湿器をたくようなこともしていないですね。朝もとくになにもしていないんです。ノドを甘やかさないで、強くするというか(笑)。
ーーやはり声のお仕事は“天職”かもしれないですね。
そうですね、昔から声を出すのは好きだったので、お仕事はすごく楽しいです。
今後はおとなっぽい曲やコラボもやってみたい
ーーオフの日はどのように過ごしていますか。
人が好きなので、誰かと話すことも好きで、おやすみの日などは友達とどこかへ遊びに行くことが多いですね。カラオケへ行ったり、おしゃれなカフェで写真を撮ったり。スマホでインスタ映えしそうな写真を撮るのが好きで、以前はよくカフェに行っていました。コロナ禍ですし、最近はなかなか外出できませんが、友達とは「ご飯に行きたいね」と連絡はしていますね。
ーースキンケアやコスメなどでは、お気に入りのものはありますか。
最近お気に入りなのは、ランコムの「ジェニフィック アドバンスト N」という美容液です。すごくいいらしいと耳にしていて、実際に自分でも使い始めたら、本当に肌の調子が良くなりました。いま5本目ぐらいですが、ずっとリピートしていますね。友達や知り合いにも、この美容液をプレゼントするぐらい、気に入っています。
もともと気に入ったものをずっと使い続けるタイプなのですが、コスメだとディオールのクッションファンデーションもいま6個目になりましたし、気に入ると同じものをずっと使っていますね。
ーーちなみに、細身なのでダイエットなどはされないですよね。
めちゃめちゃしています(笑)! 昨年末ぐらいはすごく太っていて、そこからダイエットを頑張っているんですよ。でもやっぱり時間がないと痩せられないから、追い詰められて、いまはお金の力で痩せようかなと思っています(笑)。エステとか、トレーニングギアのシックスパッドを買ったり。
あとは食事ですね。現場などでお弁当が出ても、おかずは全部食べますが、ごはんの量を減らして、炭水化物を減らすとか。ニンテンドースイッチのエクササイズゲーム『Fit Boxing』をやることも。リズムに乗ってパンチするんですが、10分ぐらいやるだけでも、けっこう汗だくになるんです。
ーーでは最後に、アーティストとしての今後の抱負をお聞かせください。
いままでロックな曲やさわやかな曲を歌わせていただくことが多かったので、今後機会があれば、大人っぽい、カフェでゆったり聴けるような曲やブラスバンドのパレードのような曲も歌ってみたいなと思いますね。
あとは、同時期にすごく仲良い役者の友達もアーティストデビューしていて、和氣あず未さんという声優なんですが、その子といつか一緒にコラボレーションして歌ってみたいですね。一緒のステージにも立ってみたいなと思います。
取材後記
声優として、ソロアーティストとして、大活躍されている鬼頭明里さん。クールビューティな鬼頭さんは、撮影中もインタビュー中も、凛とした瞳が輝いて、取材陣を魅了。筆者が心から感銘を受けた『鬼滅の刃』の竈門禰豆子役では、おじいちゃんからも認識されたというお話に、母のような気持ちでほっこりさせていただきました。声優だけでなく、アーティストとしても、きっと多くの人たちの心を灯してくれるはずです。そんな鬼頭さんのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。
鬼頭明里 PROFILE
10月16日、愛知県生まれ。趣味は、絵を描くこと、歌うこと。
2014年より声優として活動。テレビアニメ『タイムボカン 逆襲の三悪人』にてヒロイン、カレン役を務める。他にも『鬼滅の刃』竈門禰豆子役、『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』近江彼方役、『Re:ステージ! ドリームデイズ♪』月坂紗由役、など多くの話題作に出演している。
2019年10月16日にシングル「Swinging Heart」でアーティストデビュー。収録曲の「dear my distance」はテレビアニメ『超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!』、2020年2月リリースの2ndシングル「Desire Again」収録曲「Tiny Light」はテレビアニメ『地縛少年花子くん』のエンディングテーマを担当。6月リリースの1stアルバム『STYLE』はオリコン週間ランキング7位を獲得。9月から10月まで東名阪での1st ライブツアー「Colorful Closet」を開催。10月28日、3rdシングル「キミのとなりで」をリリース。
「ニュータイプアニメアワード2018-2019」声優賞(女性)では、1位を獲得。
レギュラーラジオ番組、文化放送『超!A&G+』では『鬼頭明里のSmiley pop』(毎週水曜日19:30~20:00)を放送中。
Information
New Release
「キミのとなりで」
(収録曲)
01. キミのとなりで
02. Dive to World
03. トウメイナユメ
04. キミのとなりで (Instrumental)
05. Dive to World (Instrumental)
06. トウメイナユメ(Instrumental)
2020年10月7日発売
*全形態同収録曲。
(通常盤)
PCCG-01941(CD)
¥1,300(税別)
(初回限定盤)
PCCG-01939(CD+BD+ブックレット)
¥2,000(税別)
(アニメ盤)
PCCG-01940(CD)
¥1,300(税別)
New Release
「君に会えた日」
安達としまむら(CV:鬼頭明里と伊藤美来)
(収録曲)
01. 君に会えた日
02. メリーゴーランド
03. 君に会えた日 -TV size ver.-
04. メリーゴーランド -Glocken Ver.-
05. 君に会えた日 -instrumental-
06. メリーゴーランド -instrumental-
2020年10月28日発売
(通常盤)
PCCG.01929
¥1,300(税別)
鬼頭明里 オフィシャルサイト
https://kitoakari.com/
ヘアメイク・Yuu.