KREVA「この3年ぐらいで1番好き」と語る新曲を緊急リリース

写真・角戸菜摘 取材、文・かわむらあみり ヘアメイク・結城藍 — 2020.6.22
【音楽通信】第38回目に登場するのは、ソロデビュー15周年を超えて、さらに前進し続けるヒップホップ界のカリスマ、KREVAさん!

【音楽通信】vol.38

ソロデビューしてからの15年は楽しくやってきた

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2019年にソロデビュー15周年を迎えたKREVAさん。昨年は9カ月連続リリース、『成長の記録~全曲バンドで録り直し~』『AFTERMIXTAPE』と2枚のアルバムを発売、日本武道館でのワンマンライブに加え、横浜アリーナでの<908 FESTIVAL 2019>開催、「KREVA CONCERT TOUR 2019-2020『敵がいない国』」のライブハウスツアーを実施するなど、精力的な活動を展開されました。

そんなKREVAさんが、2020年6月24日にニュー・シングル「素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI」をリリースされるということで、お話をうかがいました。

ーーまずソロデビューされてからの15年を振り返ると、どのような日々でしたか。

この15年の変化を広い意味で言うと、テクノロジーの面で、だいぶん変わってきた気はしますね。CDもどんどんストリーミングに変わってきて、曲を作る機材も変わってきました。パソコンの変化ともいえますね。

ーーKREVAさんは、常に何かに挑戦していらっしゃるようなイメージがあります。

そうですねえ。楽しいですよ、進んでいくテクノロジーについていくというのは。たとえば、ロボット掃除機って、最初出たときに「いらない」って思ったんですが、いまは性能も上がってきて「あると便利だな、ないと困るな」という感じになってきている。音楽でもロボット掃除機的な、便利なものがたくさん出てきて、それもどんどん使いやすくなって、自分のような完全独学でやっている身としては、助かっています。

その面白みで、音楽を続けていられますね。お米を炊く以外に、料理もできる炊飯器を買うと、とりあえず一発目にパエリアいっとこうか、みたいな(笑)。そしてまた、パエリアから違う料理にいってみようとする感じ。この道具があるから、この音楽を作ろう、という考え方も増えました。

ーー15年はあっという間でしたか。

振り返り方、切り取り方にもよるんですが、シンプルに年月だけを言うと「おお、もうそんな?」という感じもするし。ただ、やってきたことを振り返ると「なっげぇ!」って、なってくると思うんですけどね(笑)。楽しくやってきました。

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ーー今年、2月から6月まで開催予定だった「KREVA CONCERT TOUR 2019-2020『敵がいない国』」のホール&アリーナツアーを新型コロナウイルス感染拡大防止のため、はやい段階で無期限延期とされました。2月には無観客ライブをYouTubeで配信されていましたね。

「敵がいない国」というタイトルを掲げたツアーだったことが、無期限延期する決断がはやかった理由です。「敵がいない国」というのはファンタジーで、ライブのMCでも、「敵がいない国ってないじゃん、でもあるじゃん」って伝えていて。「ここにいる人たちだけでも、敵がいない国を作ろうって全員が思えば、そうなるよね」って、ファンタジーで作り上げていく世界だったんです。

でもそのファンタジーを上回る、全世界が敵の見えない状態になるなんて、想像だにしない現実がやってきてしまったから。本番同様のリハーサルであるゲネプロもやってみたんですが、何をやってもハマんないというか。自分が考えていたすじ道のことも全然響かなくなって、「やめましょう」と言いました。

ーーすごいご決断でしたね。

いまとなればね。あのときはやったほうがいいのかなという気持ちも少しはありました。みんなが不安な気持ちで来ても、俺が楽しめていれば、「楽しもうか」という気にもなれたかもしれないですが、こっちもみんなも迷っている状態で「敵がいない国」はありえなかったです。

新曲はこの3年で1番好きなメロディとトラック

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ーー本来は「敵がいない国」ホール&アリーナツアーで披露されるために書き下ろされた新曲「素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI」が6月24日に発売されます。KREVAさんが見出されたシンガー・SONOMIさんとの楽曲ですね。

「敵がいない国」のツアーに、SONOMIを呼んでいたんです。2006年に出した『愛・自分博』というアルバムに入っている「涙止まれよ feat. SONOMI」という曲をこのツアーで歌いたくて。当時から、ふたりでひとつの声になっている感じがあるんです。

今年のホール&アリーナツアーは無期限延期になりましたが、昨年12月には「敵がいない国」のライブハウスツアーがあったので、そこでSONOMIと一緒に歌ってみたんです。どちらもベストな声が出る高さの曲じゃないんですが、大きくもない、小さくもない声で、ほどよく歌うふたりの気持ち良さがあって。

これはやっぱりすごいなと思って、そんな曲がもう1曲できたらと考えていたんです。この曲は、自分がこの3年ぐらいで作ったなかで1番好きなメロディ、トラックです。

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ーー『愛・自分博』のときの「KREVA TOUR 2006 愛・自分博〜国民的行事〜」のツアーファイナルとなった日本武道館ライブに、私も行かせていただきましたが、当時からSONOMIさんは堂々とされていた印象です。

SONOMIは、何年一緒にいるかわからないですが、妹みたいな感じなんです。自分の声の成分のなかに、SONOMIの声の成分も聴こえてくるというか(笑)。科学的に調べたら、同じ成分が出てくる気がして、以前から響き合うところがありました。

ーーSONOMIさんの一番の良さはどこですか。

なんかずっと垢抜けない感じかな(笑)。ただ、キャリアも長いんで、SONOMIが出演しているイベントでは“姉さん”という捉えられ方をしていて、俺からすると「お前が!?」と(笑)。「敵がいない国」でも、SONOMIは“国民の妹”というキャラクターで出演していたんですが、俺からすると、“永遠の妹”。視点が人とちょっと違う感じがあって、そこが面白いんです。

音楽的な面では、グッとくるポイントがすごく似ていると思います。そこはすごく大事。「これ泣ける!」と言ったときに、「はっ?」って言われると困るんですが、そこはお互いに同じことをキャッチできていると思います。

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ーー「素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI」のKREVAさんのラップ部分で、「自分で終わらせるのは無し 必ず生きる いつかは笑えるかな これもかすり傷って」という歌詞がありますが、とても深い言葉だと感じました。

うちの事務所の社長と20年前ぐらいから、「とりあえず死ぬのは無しにしよう」って、ずっと言っているんです。ヤバいものとか、エグいものとか、いろいろあるとしても、自分で人生を終わらせるのはとにかく無しにしようというのは、よく言っていたんですよ。

あと「敵がいない国」のライブハウスツアーのときに、ファンクラブの方と直接会う企画の“ミート&グリート”をやったんです。各公演5人ぐらいの方とお話をしたんですが、「よくそんなにつらいことがあって堪えられたな」という経験をしている方がいて。

そういう方が、俺の音楽を聴いて「がんばろうって思えた」と言ってくれるんですよ。俺なんて、9対1ぐらいで嫌なことばっかりなんですが、このレベルで「もうやだ」と言っている場合じゃないなって。そこで、その歌詞が出てきました。

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ーー今回、楽曲からアートワークまですべてKREVAさんご自身が手がけた完全セルフプロデュース作品ということですが、ジャケット写真には幼少期のKREVAさんの写真を使用されたそうですね。

このジャケ写は“棚から牡丹餅”的な感じなんです。昔から趣味のようにやってきた、コラージュで作っています。今回のツアーに向けて、ファンじゃない人も含めて来てもらえるようにとYouTubeを始めてみて、自分で動画の編集もやって、できるようになってきたんですよ。そうやって動画編集ソフトを使えるようになったら、デジタル的にコラージュができると思って、やってみたらこうなりました(笑)。

この写真は、うちの父親が写真好きで、3歳ぐらいのときに撮ってくれたものです。母親はなんでもとっておくタイプで、たとえば俺が子どものときに使っていたマグカップをまだ家で使っているみたいなのが、いっぱいあって(笑)。そのなかで、とっておいていた写真のひとつをジャケ写にコラージュしました。

それとバンドメンバーに、「ヴィンテージの楽器の写真を撮って送ってくれたら、コラージュするよ」と言っていたんです。(ホールツアーの)バンドメンバーの田中義人さんのギターとか、ベースの大神田智彦くんとか。神ちゃんは1960年代後半の楽器を持っていて、「いい音するんだよね」って、楽器をずっと使い続けられるのはいいなと。

一発目に、ドラムの白根(佳尚)から、ヴィンテージシンバルの写真が送られてきて、そのシンバルの写真がまるで“年輪”みたいだなと。シンバルにもともと「15」という数字も入っていて、最初俺は気づいてなくて、メンバーから「ちょうど15周年だね」と言われて、今回のジャケ写にぴったりだと思いました。

未開拓の領域に踏み込むと、いい時を重ねられる

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ーーお話はかわりますが、KREVAさんは活動自粛制限期間はどのように過ごしていましたか。また、自粛が解除された現在はどのように過ごしていますか。

自粛期間は、とにかく家にいましたね。1週間、外出しないことも多かったです。以前は、ちょっと買い物に行くだけでもひとりで行っていましたが、いまは子どもを連れていくこともできるようになりましたね。

ーーおうちではどんなふうに過ごしていたんですか。

最初のうちは断捨離をしていたんですが、途中から捨てるものもなくなってきて、家で曲を作っていました。ただ、それを自分のスタジオで聴いてみたら、集中できていない感じがして、あまりよくない出来でしたね。

ーー新曲でも「素敵な時を重ねましょう」とおっしゃっていますが、一般的に年を重ねることに肯定的な方は多くない印象もあります。どうすれば、素敵な年を重ねられると思いますか。

たとえばリモートワークをしていると、前進している感じがあまりないかもしれないですよね。さっきの曲を作った話もそうですが、曲を作ってトラックが1個増えたはずなのに、なんか前進した気がしない。それを超えていくには、スキルアップしていくのが大事なのかなと思いました。未開拓の領域にちょっとでも踏み込んでみると、いい時を重ねられるんじゃないかな。

この曲のジャケ写も、やってみて「デジタルでできるんだ、コラージュ!」と思って。いままでできなかったことができたという意味で、“ゼロから1”は、“1から2”よりも、前進した感じが強いじゃないですか。

だから、まったくしたことがなかったジャンルの料理をするとか、釣りなのか、ランニングなのか、手を出したことがなかったやつを一歩進んでやってみると、充実感がハンパないです。心がふさぎ込んでいると、だんだん心も体も衰えていく気がします。

ーーそれは若くても、年を重ねても、関係なくそうかもしれないですね。

そうなんですよ。俺は50歳から、字がうまくなるって決めているんですよ(笑)。無限のスキルアップの可能性がある、何歳からでも、字をうまくすることはできるじゃないですか。手が震えてきたことからの“達筆風”とかも(笑)。可能な領域に残されています。

ーーでは、そうやって前進していくことで、魅力的な女性になっていくと。

やっぱり、いろいろなことに挑戦している人は、魅力的だと思いますね。あとは自分が熱中して取り組んでいることで、前進感が得られるなら、それも魅力になると思います。心と実績とを得ていくことが大事なんじゃないかと思います。

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ーー今年の11月6日公開予定の、V6の井ノ原快彦さん、なにわ男子/関西ジャニーズJr.の道枝駿佑さんらの映画『461個のおべんとう』にご出演されていますね。劇中では、井ノ原さん、やついいちろうさんと「Ten 4 The Suns」というバンド仲間として、KREVAさんはMC担当の古市栄太役を務めていらっしゃいますが、撮影はもう終わられたんですか。

もう終わりました。撮影中は、イノッチ(井ノ原さん)と、やっつん(やついさん)と、ずーっと3人でしゃべっていましたね(笑)。

ーー音楽のお話ですか。

いや、くだらないことから、何から何まで(笑)。ライブシーンがあったんですが、ステージに出てからも、3人ともずっとしゃべっていました。観客役のエキストラのみなさんを盛り上げるために、俺も、イノッチも、やっつんもずっと黙らないから(笑)。本番では使われないシーンなんですが、3人でずっとしゃべり続けたことによって、お芝居ではなく本当にライブ感が生まれたので、良かったと思いますし、楽しかったです。正直、映画に出たという感覚はない(笑)。

ーーそれはミュージシャンの役だからでしょうか。

そうですね。それに、自然でいるほうがいいなと思って。映画ではラップもしていますし、ミュージシャン役だったんで、より自分らしく、自分のまんま出ている感じですね。

ーー井ノ原さんの息子役の道枝さんとは、お話しされましたか。

話しましたね……話したと思うけど、振り返ると、イノッチとやっつんとずっとしゃべっていた記憶しか(笑)。兼重淳監督も、現場に緊張感を走らせるタイプの方じゃないので、みなさんにもよくしていただきました。

ーーでは最後に、いまはなかなか予定も立てづらい時期ではありますが、今後のご予定は。

いまはもう、何にも考えてないですね。いままでもそうだったんですが、ある時期から、「こうしたい、ああしたい」という目標がだいぶんなくなってきて。よりいっそう、ひとつずつ全力でやっていこうかなと思いました。次の曲を出したら、「これが最後」くらいの気持ちでやろうかなと。

でもね、求めているものは、さらっとしたものを出したい。最後だと思って、「全身全霊をかけてやりました!」というものが誰かから来たら、俺からすると重い気がするので(笑)。そこらへんの塩梅をよく読みながら、今後もやっていけたらと思います。

取材後記

日本のヒップホップシーンを牽引し続けているKREVAさんは、常に挑戦し、私たちに新しい驚きと喜びをもたらしてくれる稀有な存在です。折しも自粛制限は解除された時期でしたが、さまざまなことに配慮をしながらの取材となりました。そんななか、快く取材に応じてくださったKREVAさんは、シングル発売日と同日の6月24日に、無観客有料生配信ライブ、KREVA Streaming Live『①(マルイチ)』を急きょ開催されます。ぜひライブもチェックしてみてくださいね。

KREVA PROFILE
国民的人気を誇るヒップホップアーティスト。ヒップホップの殿堂『B-BOY PARK』のMCバトルで3年連続日本一の栄冠に輝く実績を持ち、現在に至るまでその記録は未だに塗り替えられていない。2004年9月08日(クレバの日)に、シングル「音色」でソロメジャーデビュー。

2006年2月リリースの2ndアルバム『愛・自分博』は、ヒップホップソロアーティストとして史上初のオリコンチャート初登場1位を獲得。リリースされる楽曲は常にチャート上位にランクイン。9月08日は「クレバの日」と日本記念日協会に正式認定される。

2019年、1月から9月08日(クレバの日)まで9ヵ月連続リリースを敢行し、ニューベストアルバム『成長の記録~全曲バンドで録り直し~』と8枚目のオリジナルアルバム『AFTERMIXTAPE』の2枚の作品をリリース。さらには、日本武道館ワンマンライブとKREVA主催の“音楽の祭り”「908 FESTIVAL 2019」横浜アリーナ公演を開催。12 月、「KREVA CONCERT TOUR 2019-2020『敵がいない国』」ライブハウスツアーを実施。

2020年2月から6月のホールツアー&アリーナ公演は、新型コロナウイルス感染拡大抑止のため、全公演の無期限延期を決定。6月24日、シングル「素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI」を発売。同日、無観客有料生配信ライブ、KREVA Streaming Live『①』を開催する。

11月6日にはTOKYO No.1 SOUL SETの渡辺俊美さんによるエッセイ「461個の弁当は、 親父と息子の男の約束。」(マガジンハウス刊)原作の映画『461 個のおべんとう』が公開予定。常に新しいことへ挑み続ける、日本の音楽界最重要人物のひとり。

Information

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New Release
『素敵な時を重ねましょう feat.SONOMI』

(収録曲)
01.素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI
02.素敵な時を重ねましょう feat. SONOMI (Inst.)

2020年6月24日発売
NCS-970
¥908(税別)
※紙ジャケット仕様。
※KREVAオフィシャルオンラインショップのみでの数量限定販売。


KREVA オフィシャルサイト
https://www.kreva.biz/
KREVA Streaming Live「① (マルイチ)」宣材

2020年6月24日開催 KREVA Streaming Live『①』特設サイト
https://www.kreva.biz/maruichi/

KREVA YouTubeサイト
https://www.youtube.com/channel/UCBw5UGXnygjDQRoGfl8HaDQ