「miwaさんを調べました」話題のましのみが彼女を意識したワケ

写真・大内香織 取材、文・かわむらあみり — 2019.10.18
音楽をこよなく愛する、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。【音楽通信】第12回目に登場するのは、キーボード弾き語りスタイルで活動している、シンガーソングライター・ましのみさん!

音楽を始めるきっかけはmiwaさんの存在だった

191002_AN8909

【音楽通信】vol.12

2016年に音楽コンテストで約3,000組の中からグランプリを獲得し、2018年、女子大生だった20歳のときに、アルバム『ぺっとぼとリテラシー』でメジャーデビューした、ましのみさん。今春大学を卒業して、10月14日に配信シングル「エスパーとスケルトン」をリリースしたましのみさんに、お話をうかがいました。

ーーいつから音楽活動をされているのですか。

活動を始めたのは4年前ぐらい。高3の終わりの1月頃に、初めてライブハウスでライブをしたのが始まりです。それまでは曲を作ったり、人前で歌ったりしたことはありましたが、ライブ活動は全然ありませんでした。ただの趣味として、吹奏楽やバンドをやって、文化祭で歌うぐらいだったんです。

ーーバンドをされていたときはボーカルだったのですか。

いえ、ベースです。高校の部活のお遊びバンドで、ベースをやる人がいなかったので担当して。あとはコーラスをしていたぐらいです。

ーー2015年1月の18歳のときに、東京の下北沢LOFTで初ライブをされていますね。

私が音楽を始めるきっかけが、(シンガーソングライターの)miwaさんの存在なんです。もともと幼稚園のときから「歌手になる」と言っていたのですが、小学生になって物心がついてくると、夢を言うのが恥ずかしくなってしまいました。

子どもの頃から心の奥底にあった「歌手になる」という夢は消えなかったものの、ちゃんとお勉強をして大学に行って、キャリアウーマンになってバリバリ働きたいという思いも出てきて、もう歌手になるのは無理だと思っていたんです。

そんなときに、miwaさんがシンガーソングライターをしながら、大学にも行かれていることを知って、「あ、そういうこともできるんだ」と思ったのが音楽活動をやろうと思ったきっかけです。

miwaさんがどうやって音楽活動を始めたのかを調べると、初めてライブをされたライブハウスが下北沢LOFTでした。個人でも「ライブがしたい」と思ったら、音源を送るとライブができるということも知って、miwaさんが初ライブをした同じライブハウスに応募したんです。

ーーそうだったのですね。デビューしてから、miwaさんにお会いしましたか。

放送局でご挨拶したことがあります。

ーー憧れのmiwaさんにお会いしてみてどうでしたか。

緊張しました。イメージしていた通り、ニコニコされていて、かわいらしい方でした。

「必死」の二文字で突き進んだインディーズ時代

191002_AN8760

ーー初ライブの翌年、2016 年3 月には、ヤマハグループが開催する音楽コンテストで約3,000 組の中からグランプリを獲得されていますね。

はい。ただ、当時は「現状に満足したら大変なことになる」「前に進めなくなる」「グランプリを獲っても、だからといって何かが変わるわけじゃない」と常に思っていました。

そのときは、「音楽活動をするうえでの足がかりをなんとか早く手に入れなければ」と焦っていたので、グランプリを獲ったことによって「やっと1個手に入る」と思っていましたね。

いまは年数を重ねて価値観が変わって、目の前で起こることをその都度喜んで、それが大きなものになっていく良さも考えられるようになりました。

ーー当時は目指すところがもっと高い場所だったのでしょうか。

そうですね。あとはポジティブにとらえるよりも、ネガティブに考えることによって、自分を傷つけないようにしていました。

ーーグランプリを獲得するまでにも、ほかにもコンテストには応募されていたのですか。

もちろんです。2015年に初ライブをやるのと同時に、ツイッターやユーチューブのアカウントを作って、家で適当にやったものをのせて、いろいろなところに手当たり次第に送っていました。

ーー学生生活と並行して、将来はアーティストになると決めて動いていたのですか。

就活もしていました。音楽活動を始めたのがほぼ大学1年生のときで、「あと3年後に就活が迫っている」と考えると、それまでに音楽でがんばっていけるという確かなものがないと、音楽の道に進めないと思っていたんです。自分としても、親に対しても、ケジメとして形にする気持ちがあったので、焦っていました。

メジャーデビューをするには、ライブを常にやり続けていろいろな人に見てもらう、ライブ力を高める、お客さんの目に触れるということを軸に行動しました。さらに、たくさんの音楽関係者に見てもらう機会を増やすということの二軸にして活動したんです。

ーー計画的に進めていらしたのですね。

そうですね。時間がなくて焦っていたんです。18歳や19歳は、人生の大事な時期ですから、その時間を賭けて音楽活動をするには、がんばりたいと思ってやってきました。

ーーキャリアウーマンの道もあったかもしれないのですね。

実はまだ、キャリアウーマンの道も消えてはいません。もちろん音楽を中心にやっていきたいのですが、今後いろいろなことをやっていくなかで、自分でビジネスを展開していくことへの興味は消えずにいます。

ーーインディーズ時代は初のワンマンライブのチケットが完売し、タワーレコード渋谷の未流通作品コーナーのタワクルで5 週連続売り上げ1 位と順調な活動ですが、ご自身では先ほどお話しされていたように、冷静に活動を進めていたのですか。

いえ、「必死」の二文字という感じでしたね(笑)。ただ、すごく縁に恵まれていたと思います。グランプリも選んでくださった審査員の方と相性が良かったということだと思いますし、タワクルもライブ活動をするなかで出会った方が紹介してくださって、そのときに買ってくれたお客さんのおかげで5週連続1位になっているから、周りの方に助けてもらいながらやってこられて、こうして走ることができていて、ありがたいですね。

聴く人が幸せになるような、魂を揺さぶる曲を書きたい

191002_AN8752

ーー2018 年2 月にアルバム『ぺっとぼとリテラシー』をリリースして、デビューされています。作詞や作曲もされていますが、ずっと書きためていたのですか。

詞は、初めの頃は「歌うために書かなきゃ」と考えていました。“シンガー”より、“シンガーソングライター”のほうが、いまの時代はいいだろうと思って書きはじめたのですが、半年くらいで書いているのが楽しくなってきたんです。

いまはリリースのために書きためているのではなくて、いまの感情がすぐ消えることがこわい気持ちもあって、そのときどきの思いを楽曲として残すために、曲を書いています。

ーー日記のようなところもあるのですか。

それもありますね。思ったことをメモに書いて、そこから、いろいろなものが出てくるので、生きているなかで自然に曲がたまっていく感じですね。

ーーインディーズ時代とデビュー後では、何か心境が変わったところはありましたか。

インディーズのときは渋谷店のみの発売となるタワクルと、ライブハウスの出演のみだったので、楽曲が全国流通していないんです。

それがデビューすると、ちゃんと音源が全国に届いて、サブスクリプションなどにも入って、リリースイベントも各地で行えるようになったことが大きな違いですね。

私が足を踏み入れたことのない地にも作品が届いて、行ってみると「聴いていますよ」と言ってくださる人がいて、すごくうれしかったです。「またがんばろう!」という燃料になりますね。

ーー手応えがあったのですね。

はい。それまで世間は壁や巨大な怪物に見えていて、そこに対していかに自分をぶつけて刺さないといけないかという気持ちでいっぱいだったのですが、聴いてくれている人と会うと、うれしい気持ちややさしい気持ちが生まれたんです。

よりいっそう、聴いてくださっている人に幸せになってもらえるような、魂を揺さぶれるような曲を書きたいと思いました。

ーーLINE LIVEなどで、「通称・ましらっぷ」というラップ、寸劇などもされているそうですが、それはどのような表現活動でしょうか。

“いま”を表現するのが好きなので、遊びのような感覚を取り入れながら活動しています。ラップに関しては、正式なラップではないので、ラップ界に失礼のないように「ましらっぷ」と名づけました(笑)。おふざけとして動画で出したり、ライブでやったり。

寸劇は、ライブをエンターテインメントとして見せるために取り入れました。私が飽き性なので、見ている方も展開が少ないと飽きるかもしれないということで、曲につながるようなかたちで寸劇をライブに入れていたり。

どれも「絶対このスタイルでずっとやっていきます」とは思っていませんが、歌とMCのみというシンガーソングライターとしての形にとらわれずに、活動していきたいとは思っています。

ていねいに時間をかけて作った思い入れのある新曲

191002_AN8927

ーー10月14日にデジタルシングル「エスパーとスケルトン」をリリースされましたが、どのような思いでこの曲を作られたのでしょうか。

デビューしてからエレクトロのサウンドを取り入れてきて、やることは本能的ですし、作るものはそのときに届けたい音楽を作っているのですが、それを「どうやって届けたいか」という意識が変わってきたんです。

ピカピカ、ツルツルに完成されたものを届けるよりも、自由に音楽を作って表現したいというのが、音源でもライブでもあって。音源にしようとすると、コンプレッサーにかけて、エレクトロのサウンドでガッチリかためてピカピカになって世に出されるじゃないですか。

そうなると、自由な感覚を届けられないもどかしさもあったので、それをどうにかできないか考えたうえで、今回は制作期間に8か月いただきました。エレクトロを1年やってきて、エレクトロのいいところと、ここだけかいつまみたいという部分もわかってきて。

今回でいうと、レコーディングでは、私が生ピアノをグランドピアノで弾いて入れています。ベースは、高等な打ち込みで生っぽく入れてくださって、生のベースでもスラップにも対応していただいたり。

生のセッションのような温度感と、耳に引っかかるエレクトロの効果音、踊れるところを良い具合にかいつまんで、音を詰めすぎないで余裕感や隙間感のあるものにしました。本能的に、楽しくて踊りたくなるようなものが音楽だと思っています。

ーーそうして新曲が完成したのですね。

はい。今回、sasakure.UKさんという方にアレンジしていただいたのですが、私が「こういうふうにしたい」という思いに応えてくださる方なんです。もともと作っていらっしゃる曲が型にとらわれない、拍子とか意味のわからない曲もあって、すごく好きで。

何かにとらわれないで作りたい、あとはコンプレッサーなどをかけてキレイになりすぎない、そして粗いところもすてきなんだという感覚を持っていてくださる方です。

そして音楽を作るときは、曲とメロディについてはあまり頭を使わないようにしています。というのも、がんばって作ったときは、“がんばって聴かなきゃいけない”雰囲気があるので、気楽に作って気楽に聴けるものにしようと思ったんですね。

ただ、届けるところに関しては、頭を使わなきゃいけないなって。ジャンル分けされたくないですが、聴いてくださる人たちには、ビジュアルや音、歌詞などをわかりやすくすることを意識して行いました。

そんなふうに丁寧に作ったので時間がかかりましたが、そのぶん、思い入れのあるものになりました。

ーー今回の歌詞はどうでしょうか。

「迂闊に恋せよ乙女」と歌っているのですが、恋愛の歌ではないんです。たとえば通勤や通学の帰り道にこの曲を聴いて、そのテンポ感や歌詞、メロディなどに「なんか背中を押される」という、さりげない後押しの曲にしました。

「迂闊」にというところと、「幸あれ」という歌詞がキーワードなんです。何をするにも心配や不安はあるかもしれないですが、何をやるにも「迂闊にやっちゃえばいいんじゃない?」って。

力を入れてがんばるというよりも、何かをやってみたことの結果、結局は祈るしかないのだから、聴いているあなたにいつも「幸あれ」という思いを込めて歌詞を書きました。

ずっと音楽を続けてたくさんの人に曲を聴いてもらいたい

191002_AN8813

ーー「エスパーとスケルトン」のミュージックビデオも拝見しました。不思議な世界観ですね。

ヒサノモトヒロくんという、2ndアルバム『ぺっとぼとレセプション』のジャケ写を撮ってもらったカメラマンに作ってもらいました。

ヒサノくんは初めてのミュージックビデオの監督作品になるのですが、感性の部分で面白い、シュールな場面を撮るのが得意な方だと感じていたので、「一緒に作ってくれませんか」とお願いしたんです。

ミュージックビデオでも、観ている人に押しつけがましくなく、意味合いが出ないほうがいいと思って作りました。ただ、音に対しても動画に対しても、ある種の“ひっかかり”はあったほうが良いと思っているので、ヘンテコな部分もあります。

ーーそうなのですね。ではご自身以外の音楽で、ましのみさんが普段聴いているのはどんなアーティストの楽曲でしょうか。

いまはとくに、自分のやりたいことや表現したいことが定まってきたのに、技量の部分で追いつかないジレンマがあるので、いろいろな人の音楽をたくさん聴いて勉強しています。昔のジャクソン5やモータウンなどの時代から、ロックやエレクトロ、フォークといったものを掘るのが楽しいんです。

サウンドに対しての自分の理解が広がったからこそ、「この人はこんなふうに曲を作っているんだ」という発見もあるので、これまでより掘りたいと思うようになりました。「これは好き」「これはいまいち」と、だいたい1日か2日で1アーティストを掘っていく作業をやっているところです。

ーーおやすみの日はどのように過ごしているのでしょうか。

それこそ、おやすみのときのほうが打ち込みの勉強ができたり、アーティストの聴き込みができたりするので、そういうことをやっていますね。sasakure.UKさんやさまざまな人たちとの出会いで、さらに勉強したい意欲がわいています。

あとは映画、本、美術館ですね。インプットすることに対して好奇心が深まっているので、何かを得られそうな場所に行くこともあります。

ーー友達と遊ぶというよりも、オンオフなく勉強されている印象です。

普通に友達と遊びに行って、いろいろな話をして、面白いなと思うこともあります。吸収したことを全部、音楽のために還元するという意気込みもありません。最近、人生においてやりたいことと、音楽に対してやりたいと思っていることを二軸で考えるようにしているんですが、結局どちらも混ざってしまいますね。

人生において海外に行ったり、美術を見たり、感性に触れ合えたりしたいと思ったときに「じゃあ海外に行くから英語を勉強しよう」と思ったりしますよね。人生でやりたいことは音楽にも還元されるだろうし、音楽でやりたいことも結局は人生に還元されるので、そこに関してはわけようとしても、わけられないなと思ってきたところです。

ーーわかりました。では、今後の目標はどのようなことでしょうか。

最終的な目標は、人生の真ん中に音楽を置くこと、たくさんの人たちに曲を聴いてもらうこと、ずっと音楽を続けることにつきますね。

取材後記

ライブのステージドリンクに2リットルのペットボトルのお水を愛用している、ましのみさんは、取材の際も大きなペットボトルのお水を持参されていました。理知的な印象のましのみさんが作り出す音楽は、これからもさまざまな人たちへと届いていくことでしょう。まずはニューシングルをチェックしてみてくださいね。

ましのみ PROFILE

1997年2月12日生まれ。2015年1月、下北沢LOFTで初ライブを実施。2016年3月、ヤマハグループが開催する日本最大規模の音楽コンテスト「Music Revolution 第10回 東日本ファイナル」で約3,000組の中からグランプリを獲得。

インディーズデビューアルバムが、タワーレコード渋谷の未流通作品コーナー(タワクル)でCDの取り扱いが開始され、5週連続でタワクル売り上げ第1位に。

2017年3月、タワーレコード渋谷限定CD発売と同時に、2ndレコ発ワンマンライブを渋谷O-Crestで実施し、ソールドアウト。10月、フリーワンマンライブ@Shibuya WWWを開催し、メジャーデビューを発表する。

2018年2月、メジャーデビューアルバム『ぺっとぼとリテラシー』をリリース。3月11日にShibuya WWW Xでワンマンライブを開催。8月、1stシングル「どうせ夏ならバテてみない?」をリリース。9月、代官山UNITでワンマンライブを開催。

2019年2月、2ndアルバム『「ぺっとぼとレセプション」をリリース。3月、東京は渋谷ストリームホール、大阪はアメリカ村BEYONでそれぞれリリース記念ワンマンライブを開催。

10月14日に配信シングル「エスパーとスケルトン」をリリース。リリース記念イベントを10月19日(土)ポニーキャニオン3Fイベントスペースで開催。
11月15日は渋谷TSUTAYA O-WEST、11月20日は大阪アメリカ村 BEYONDでワンマンライブを行う。

Information

ましのみ

New Release

「エスパーとスケルトン」

10月14日配信
¥250(税込)

ましのみ オフィシャル SNS / MUSIC SERVICE
https://lnk.to/mashinomi

ましのみ オフィシャルサイト
https://mashinomi.com

ましのみ オフィシャルTwitter
https://twitter.com/mashinomi55

ましのみ オフィシャルYouTube
https://www.youtube.com/c/mashinomi