無理して人に合わせてない?…「本音を言える」居場所の見つけ方

文・三松真由美 — 2020.10.29
現在大量発生中のレスなひとびと、いわゆる「レスびと」の相談内容を、TVや雑誌など多くの媒体で活躍中の、恋人・夫婦仲相談所所長の三松真由美さんにうかがいます。セックスレス、恋愛レスと、レスにもいろいろある。今回は、LGBTであることを隠して友達付き合いをしている女性27歳。偽り続ける彼女に、三松先生が心地いい自分の居場所の見つけ方を伝授します!

【レスなひとびと】vol. 94

カリン(27歳)本音レス、無理して女子友コミュにいるけど胸がザワつく

LGBT 女子コミュ

カリンは、手慣れた様子で松屋の牛丼チケットを発券した。運ばれてきた牛丼に大好きな紅ショウガをたっぷりかけて思いきり頬張る。もちろんサイズは大盛り。

友だちの美穂からLINEが。

「今日はフルーツとヨーグルトを食べて生姜湯を飲んだよ」

少し考えてすぐに返事を打つ。

「わたしはお湯にレモン汁と塩をちょっぴりいれたドリンクを作って飲んだ~。胃腸がポカポカしていい感じ」

うさぎがハートを作っているスタンプも同時に送信。そんな健康おたくのドリンクを飲んだことなど、もちろんない。YouTubeで見たモデルのモーニングルーティンで紹介されたものを覚えていただけだ。

「えらいじゃん! レシピおしえてー」

スタンプの着信履歴が2件。既読はつけずに、味噌汁をズルズルすすっていると、他のLINEグループからも連絡が来た。

「カリン、アプリの進捗はどう? デートしたら写真見せてよ。盛ってない写真ね」

思わずスマホを裏向ける。これは数日未読でいいや。友だちのことは大好きだ。好きだから無視はしないし、遅れても返事は返す。

しかし…

なにゆえ、友だちというのは体型から、恋愛から、転職にいたるまで、頼んでもいないアドバイスを懇切丁寧、かつマメにくれるものなのか。はああ。ため息がでる。

リーディングダイエットも、出会い系アプリへの登録も、手堅い固定給の事務仕事への転職も、カリンは全然求めていなかった。出会い系プリは登録後、一度も開いていない。

女子会で恋バナ、聞くだけならいい。だがみんなは「カリンはどうなの? 気になる男いる?」と必ず聞いてくる。

そこで「好きな人はできたことない、これからもできないかも」と話すと「もったいない」「それはまだ本当に好きな人に出会っていないだけだよ」なんてことを口々に言われる。まるでカリンをダシにした討論会だ。

「まずは出会い系アプリを始めなよ」とアドバイスを受け、目の前で登録させられ、今にいたる。

カリンは部屋でアニメを見たり、本を読んだり、ぼっちになりたいのだ。寂しくなったときだけ友だちに会えばいい。ムラムラしたときは、ゆっくりひとりエッチを楽しみたい。

出会い系アプリだ? 私が魅力を感じるのは、髪の毛サラサラの女性だし。が、そんな本音を言えば友だちはドン引きショックだろうし、遊んでくれなくなるかも。だから「ありがと」と言って受け入れる。

「きっと私がほんとに変人なだけだから」

普通の友達関係に適合するために、カリンは今日も無表情でうさぎスマイルのスタンプを打つ。


【三松さんからのコメント】

女性は共感力が高いってよく言いますね。よかれと思ってアドバイスしたり、親身に相談に乗ったりと、友だちのために時間を割きます。その女子友マインドに救われて信頼関係が深まっていくケースもありますが、カリンさんのようにそれが負担になっている人もいるかもね、と最近よく思います。

女性にとって結婚だけが幸せのてっぺんでなくなった今の時代。セクシャルは十人十色であるという当たり前のことを、少しずつ世間が知ってきたのです。自分が異性愛者でも友だちは違ってて、カミングアウトをしていないのかもしれない。そんな当たり前のことをふまえながら付き合うだけで大切な友だちは、ぐんと生きやすくなるかも。

カリンさんの場合は、もっと自分を自由にしてあげてほしいなとも感じます。

恋愛に興味がないと話したときに受け入れてくれるコミュニティもあるはず。「いいじゃん。ところで、今日晩ゴハン何食べたい?」など、カリンさんを否定しないコメントが寄せられるってやつです。探せば必ずあります。ひとつのコミュニティの型に自分をハメるのではなく、自分の自然体にフィットする新たなコミュニティに出会ってほしいなと。

例えばSNSで趣味アカウントを作るのはどうでしょう。共通の趣味の友だちが見つかります。#牛丼とか#ボーイズファッションとかね。受け身で周りに合わせてばかりでなく、ちょっと横道を探して自分の居心地がいい広場に向かうのもありでしょう。

「本音言えないコミュ、本音言えるコミュ、いまの世の中、自分の居場所はいっぱい持ってるのが快適だ。我慢しないで、サイコーの友達をつくろう」

三松 真由美 
恋人・夫婦仲相談所所長・コラムニスト。バブル期直後にHanakoママと呼ばれる主婦の大規模ネットワークを構築。その後主婦マーケティング会社を経営。主婦モニター4万名を抱え、マーケティング・商品開発・主婦向けサイト運営に携わる。現在は夫婦仲、恋仲に悩む未婚既婚女性会員1万3千名を集め、「ニッポンの夫婦仲・結婚」を真剣に考えるコミュニティを展開。「セックスレス」「理想の結婚」「ED」のテーマを幅広く考察し、恋愛・夫婦仲コメンテーターとして活躍中。講演・テレビ出演多数。20代若者サークルも運営し、若い世代の恋とセックス観にも造詣が深い。コミック『「君とはもうできない」と言われまして』(kadokawa)好評発売中。


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