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「知りたくなかった怖い話」エレベーター恐怖体験 雨の夜に乗ると… #6

文・イラスト 犬養ヒロ — 2019.3.15
世の中には、科学では証明できないこともあるようです。憑依体質の漫画家・犬養ヒロさんが聞いてしまった【知りたくなかった怖い話】を紹介します。

【犬養ヒロの知りたくなかった怖い話】vol. 6

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エレベーターの女 

知りたくない度★★☆

(P.N ピョン吉 男 会社員)の体験談

友人Eの住むマンションは9階建てで、その上のR階は屋上になっている。

ある雨の夜、仕事が残業でマンションに帰り着くころには夜の0時近かった。エレベーターは誰かがこんな雨の日に屋上に行ったのだろうか、R階で止まっていた。

ボタンを押すと、9…8…7…とエレベーターが降りてきた。Eがいる1階に降りてきたが、当然こんな時間だから人は乗っていなかった。

目の前で、ゆっくりとドアが開いた。雨だから、エレベーターの中の床が濡れていた。Eはエレベーターに乗り込んで、自宅階の9のボタンを押した。

扉が閉まったのだが、エレベーターの中は、今までに嗅いだことの無い腐敗臭のような鼻をつく嫌なにおいがする。この異臭を体内に入れたく無いと思ったEは、思わず口もとを手でおさえた。

エレベーターが1…2…ゆっくりと動き出したのだが、ふと正面の扉を見ると、Eは恐怖で固まった。

扉の透明のガラス部分に、口元を手で押さえている自分の姿が映っていたのだが、その後ろに人が立っていたのだ。

正確にはそれは、この世の人ではなかった…。

それは黒い服を着た髪の長い女で、Eの真後ろにピッタリと張り付くようにして立っていた。髪から覗くその顔は、半分が何かに押しつぶされたように潰れていて、頭部の一部が欠損していた。

Eは恐怖で心臓が止まりそうになった。絶対に振り向いたらダメだと、強く思った。一刻も早くエレベーターから出たかったが、身体がこわばり動くことができなかった。

Eの部屋は9階。いつもなら、ものの1分もかからずに着くはずなのに、果てしなく遠く感じた。恐怖で目をそらすことも、唾をのむことさえもできない。

その女が崩れた顔で、嬉しそうに笑っているように思えた。

「早く9階に着いてくれ……!」心の中で必死で祈った。エレベーターが…3…4…階を通り過ぎた。

とにかく今すぐに、エレベーターから降りたい。

エレベーターは5階を過ぎた。9階で止まって扉が開いたら、一目散に走って部屋に逃げ込もう。そう思ってじっと気を失いそうな恐怖に耐えた。

6…7…8…
やっと扉が開く。

「9階に着いた……!!!」

と思ったら……! エレベーターはどうした事かそのまま通り過ぎ……屋上のR階に着いた。R階で止まると、ゆっくりと扉が開いた。

屋上は真っ暗で雨が降っていて、当然誰もいなかった。

「誰もいないのに、なぜR階に……?」

もう恐ろしさでパニックになりそうだったが、あの背後にいた女がいなくなっている事に気が付いた。

急いでエレベーターの扉を閉めて9階のボタンを押した。とにかく、今すぐこの場から離れなくてはいけないと思った。

9階のランプがついて、ドアが閉まった。

エレベーターがゆっくりと下へと動き出した時に、扉のガラスの向こうの屋上のフェンスの前に、あの女が立っているのが見えた。

その時Eは、すぐに理解した。

「ああ、あの女はここで飛び降りて死んだんだ……」

あの女を屋上に残したまま、エレベーターは今度はまっすぐに9階に着いた。

扉が開くと、Eは走って部屋に帰った。後ろで、勝手にエレベーターがまた屋上に上って行ったが、Eは振り返って確認はしなかった。

数日後、Eはそのマンションを引っ越した。

それからしばらくして、そのマンションで住人が飛び降り自殺があったことを噂で聞いた。雨の降る夜だったらしい。

「あの女に呼ばれたんだ……」

Eはそう言っている。

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