【キュレーターいちおし!】#2 モンデンエミコさん 展覧会「Nous ぬう」女性アーティスト紹介
【キュレーターいちおし!】vol. 2
「Nous ぬう」展の小さくて壮大なプロジェクトは「モンデンエミコの刺繍日記」です。5月21日から始まり、会期の終了する9月25日までの128日間、毎日刺繍で綴られる日記なのです。
アートライブラリーの一角に置かれた小さな展示ケースに、日記なので1日1枚、128日間毎日綴られて、毎日1枚ずつ展示されています。つまり、モンデンさん、毎日作品を作って、(ほぼ)毎日美術館に来て、毎日作品を入れ替えてくれているのです。進行形の展覧会。これって新しいカタチだと思いませんか?



刺繍されているのはシリアルの箱!
3点とも photo : YAMANAKA Shintaro(Qsyum!)
もともと小さいころから日記をつけていたモンデンさん。2012年に長男アオくんが生まれてから、ぽつぽつと刺繍で日記を描きとめるようになります。

そして2016年2月、長女モモちゃん誕生!
モモちゃんがお腹のなかでその存在感をむくむくと発揮しだした12月から、刺繍日記は毎日綴られるようになりました。
モモちゃんが生まれた日、生まれて6時間後のベッドのなかで、モモちゃんのしわしわの手を刺繍、そして眠ってしまったモンデンさん。針がぶらさがったまんまの日記になりました。へその緒みたいですよね。

モンデンさんは1979年生まれ。金沢美術工芸大学の彫刻科出身で、大きな金属作品を制作していました。

それが、いつの頃からか布や紙や糸で作品を作るようになり、作品はどんどん小さくなって、いまや10センチほどの小ささです。けれど、この手のひらサイズだからこそ毎日の暮らしで、すごくいい。しかも刺繍されるのは、そこらへんにある紙切れたちです。

日記なのでたわいもないことばかりが記されています。
例えば、2016年7月17日。水族館のチケットに刺繍された裸ん坊の長男アオくん(現在3歳)。
「水族館にいったこは、自分で頭あらうんだよ。」
その夜から突然自分で洗いだした。謎な回路だ?
でも、どうってことない日々がこうやって大切に刺繍され、積み重ねられていくって、とても大事なことだなあと感じます。
私たちはモンデンさんみたいに刺繍どころか、ペンですら日記を毎日つけられなかったりするけれど、こうやって誰かが大事に残してくれたささやかな記録に出会うと、自分自身の毎日も思い出され、愛おしく大切なものに思えてきます。
モンデンさんの毎日は、パン焼き機を磨いたり、

旅先のホテルでも洗濯したり、

がみがみ怒ったりと忙しい日々ですが、

モモちゃんはこんなに大きくなりました。

現在、アートライブラリーではこれまでの作品をすべて見られるように展示しています。
また、インスタグラムでもモンデンさんの日々を追体験できますので、ぜひ覗いてみてください。
Information
展覧会情報
金沢21世紀美術館「コレクション展1 Nous ぬう」
会期:2016年5月21日(土)〜9月25日(日)
金沢21世紀美術館
9月19日(月・祝)にはトークも予定しています。
ご予約お待ちしております。
https://www.kanazawa21.jp/data_list.php?g=27&d=1936

作品はすべて©モンデンエミコ