耳は聞こえないけどパパが帰るとわかるよ…猫さまが飼い主の帰宅を認識する手段とは
取材、文・Manabu Matsunaga — 2024.9.16
フランス在住のカメラマン、松永学さんによる、フランスの猫さま紹介! 第269回目は白いメインクーンのエメラ(Héméra)さまの登場です。
耳が聞こえない猫さまの物語
【フレンチ猫さま】vol.269
猫さまの話をもっと聞かせて!
エメラさまは12歳の女性猫さま。
<エメラさまが語ります>
私の家はリビングルームとオープンキッチンのある平屋建てです。独立したベッドルームが4部屋あり広いです。私の他に5匹のメインクーンが同居していて、私が最年長です。
毎朝6時頃に飼い主とほぼ同時に起きます。飼い主を追いかけてまずは浴室の蛇口から水を飲みます。それが終われば朝食です。そしてたくさんの抱擁。それから家具の上に座って外を眺めます。
飼い主が昼休みに仕事から帰ってくると挨拶は欠かせません。少しご飯を食べたあと午後6時から7時まで寝ます。そして夜のご馳走を待ちます。いつも『Hill’s』ブランドです。大きな声で鳴き、飼い主たちに時間が来たことを知らせます。毎晩、鶏肉、牛肉、魚のパテを食べます。魚を包むソースが大好きで、ソースがなければ食べません。
食後はまた寝ます。夜は高いところに登って、外で何が起こっているかを観察します。高いところがいちばん安心できます。
<飼い主から見たエメラさまとは>
12年前に近所に住んでいた友人が、メインクーンのブリーダーでした。私たちは彼女を訪問し、生後わずか2か月の小さな白い2匹に出会いました。彼女らはとてもかわいくて、一日中私たちの膝の上で過ごしました。彼女たちは私たちを認めてくれたので、エメラとその後10歳で別れた彼女の妹を養子にしました。最初は切り離せない2人の白猫の姉妹の物語でした。
エメラの穏やかでとても愛情深い性格は、私たちの安らぎと幸福の源となりました。
彼女はとても落ち着いていますが生まれつき耳が聞こえず、邪魔されないように観察するため、すぐに高いところに移動します。妹たちが突然遊びに来たとき、彼女は怖がりますが、それは普通のことです。
彼女は音で気配を感じることができない聴覚障がいがあるため、私たちは注意深くケアをしています。エメラを怖がらせないように日々の生活行動を変化させました。エメラは私たちがベッドやソファにいるとき、私たちのそばにいて落ち着くのが好きです。よく喉を鳴らし、すやすやと眠っているので安心なのでしょう。冬には寝室のベッドに敷く毛布が大好きで、その中で丸まってよく寝ています。夏になると、灰色のキャビネットの上に行き、外を眺めます。
エメラはまざまな理由で非常に大きな声で鳴きます。蛇口から水を飲みたいとき、ドアが閉まるとき(ドアが閉まるのが嫌いです)、食事の時間の午後6時が近づいているとき。聴覚障害がありますが、彼女は車の振動を聞いて、夫の車であることを認識します。夕方彼が帰ってくると彼女はドアの外で待っています。
彼女は真っ白です。単一の色の毛並みは非常に滑らかで光沢があります。多指症であり、各脚(前部と後部)に追加の爪があります。12歳になりましたが、ほかに健康上の問題はありません。赤ちゃんの頃と同じように機敏で、今でもいちばん上のキャビネットに飛び乗ります。
彼女は目を半分閉じていることが多く、長い間私たちを見つめ、スフィンクスのように座っています。エメラが私たちに謎を解くように頼んでいるかのような印象を持ちます。
自慢の毛並みは、白くて光沢があり、周りにとても透明感のあるオーラを醸し出しているようです。エメラは穏やかで、私たちに対してとても優しく、それが彼女をとても愛らしいものにしています。性格は私と同じように冷静で観察力のある面をもっていて、人と交わるよりも引きこもりたいタイプです。
私が腰の問題で寝たきりになっていたとき、エメラは私と一緒にベッドで日々を過ごしました。彼女は私を抱きしめて、頭をなめてくれて、とても助けになりました。
彼女は毎日たくさんの喜びと愛をもたらします。家族の一員です。障がいは人生の障がいではないということを彼女は私に教えてくれたと思います。最初は聴覚障がいがあることを知りとても悲しかったのですが、エメラは決して不幸そうには見えなかったのです。
私はエメラを観察し、毎日彼女の近くで生活することで、障がいが妨げるものは何もないということを理解しました。彼女は障がいを障がいとせずに適応し、彼女の人生を創造していました。それは性格の強さだと思います。
私はまた、エメラを信頼し、彼女の適応力とただ生きる能力を信じることを学びました。
また、私にシンプルに生きることを教えてくれたと思います。エメラをしばらく撫でる、この平和と交わりの瞬間に時間を割くこと、それは世界で最高の治療法です。穏やかさと優しさを教えてくれる猫がいるのは幸せなことだと思います。
残念ながら、猫にも寿命があります。別れの日には彼女をこの腕の中に抱きしめたい、時間が止まるまで…。彼女が私にどれだけの幸せをもたらしてくれたかを伝えます。心から感謝していると。そして、エメラの妹が柔らかい雲に乗って迎えに来ることでしょう。いつの日にか私も雲に乗る日が来ます。そして私たちは永遠に寄り添うことができるでしょう。
ーー聴覚障がいのエメラさまですが、振動などに関しては体で感じることができるようです。車やドアが閉まる振動には敏感です。飼い主はメインクーン種が大好きで、エメラさまの他には8歳の白とグレー色のモンタナという男性猫さま、そして1歳の兄妹のウニクとウルトラがいて、まだ来たばかりの姉妹ウリエルとウイスティティの2名も! なんとも賑やかな生活ですが、エメラさまは別格の存在感をもっていました。
著者情報
松永学
猫さま好きフォトグラファー。雑誌、webなど多くの媒体で活躍。猫歴、実家に通っていた野良を含めると10匹以上、パリには2匹の猫さまを連れて移住、現在は保護猫3匹と暮らす。どこへ行っても通りで見かけた猫さまに挨拶は忘れません!