貫禄がスゴイ!…世渡り上手なおじいさん猫さまが唯一苦手なこととは

取材、文・Manabu Matsunaga — 2023.1.8
フランス在住のカメラマン、松永学さんによる、フランスの猫さま紹介! 第95回目は長毛赤茶のトラ(tola)さま。

グルメなおじいちゃん猫さまの物語

【フレンチ猫さま】vol.95
猫さまの話をもっと聞かせて! 
トラさまは14歳の男性猫さまです。


猫 保護猫 フランス

パリ郊外の小さな庭付き一軒家で、日本語の国語教師をしている飼い主とその家族と一緒に生活をしています。僕は今年15歳になります。巷ではもうおじいちゃん世代と言われています。ほぼほぼ一日中いびきをかいて寝ていると飼い主は言っていますが、それも健康の秘訣かもしれません。


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老体のうえ肥満気味なのでRoyal Canin Veterinaryの「Satiety Weight Management」と「Urinary S/O Moderate Calorie」をミックスしたものを食べています。
お留守番のお礼には美味しい「almo nature」のチキンやツナ缶をもらうことがあるのですがこれはまた食欲をそそります。
飼い主家族は長期間留守にする際、猫シッターさんに「ちゅーる」を預けます。それを知っている僕は、シッターさんにとことん甘えて隙を狙っています。


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おもちゃにはもう興味を示さなくなってしまいました。飼い主が心配して運動不足を解消するため、Amazonで高評価の猫じゃらしを買いましたが、「疲れるのでもう止めてくれ!」と言っています。


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人懐っこくて犬っぽいところもあります。何かお願いするときは「ウゥ~ワフッ!」と吠えて主張します。意外に臆病なところや、自立しているけど甘えん坊なところが、飼い主の息子と似ていると言われます。


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また、名前を呼ばれると飼い主のところまで行きます。まだ耳は遠くないですよ。そして、体を撫でられると喜んでお腹を出して「もっと撫でろ!」とねだります。
昔から自分のことを猫ではなく人間だと思っていて、毎晩飼い主の隣で寝るときは、人間のように真っ直ぐに身体を伸ばして寝転がります。


飼い主から見たトラさまとは?

日本で子どもの頃飼っていたのは、ミミーとその子どものミーコ。その後が今我が家にいるトラです。フランスに来て間もなく、友達もいなくて仕事も始めていなかった頃、ご近所さんの知人宅に猫ちゃんがたくさん生まれて引き取り手を探していると聞き、ぜひに! と立候補しました。その後、生後1か月を待って我が家にやってきてくれました!
2年前の夏に日本に帰省した時には、実家付近でまだ目も開いていない生まれたての子猫を保護して夏の間育てました。今はその子は実家の両親宅にいます。


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トラとのいちばん楽しかったエピソードを選ぶのは難しいですが…。たまに外でどうしようもなく汚くなって帰ってきたとき、お風呂に入れてあげるのは、疲れるけど楽しいイベントでもあります。すごく彼は嫌がりますけど。
また、これは我が家のよくある光景ですが、猫が「トラ」で息子が「ソラ」なので、私がよく名前を呼び間違えます。または、トラを呼んでいるのに息子が「何ー?」と言ってやってきたりします。


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トラと一緒にいると生きる活力が湧いてきます。「この子がいる間は、私もここで頑張ろう」という気持ちにさせてくれるのです。私がフランスに来たばかりの頃は、何のために自分がこの国のこの街にいるのか、それは自分にとって意味のあることなのかよくわかりませんでした。でもこの子が我が家に来てくれたお陰で「ああ、そうだ、私はトラのためにここにいるのだ!」と彼の存在に心が救われました。この子は私にとって「フランス生活」そのものなのです。
なので、この子との別れが来るときは私のフランス生活の終わりなのかな…と漠然と考えたりもしています。私がフランスで生きた証として、彼と共に過ごした時間をしっかりと心に刻みたいと思っています。


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小学一年生の国語の教科書に『ずーっと ずっと だいすきだよ』という、男の子と飼い犬の友情と別れの物語があり、言葉にして「好きだ」という気持ちを伝えることの大切さが描かれています。私も、この物語の主人公の少年にならって、できる限り悔いのない別れが迎えられるよう、必ず毎日トラに「大好きだよ」「いつもありがとう」と愛情と感謝の気持ちを伝えています。


――お話を聞いていると飼い主が大の猫好きなのが滲み出てきますね。トラさまはお年でも、食欲はあるしまだまだ元気な毎日を送って欲しいです。そして飼い主を勇気づける存在としてこれからも家族を見守っていてください。

取材、文・松永学