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志村 昌美

【初来日で直撃!】人生の意味を噛みしめる感動作『幸せなひとりぼっち』監督インタビュー!

2016.12.12
1年のなかでも、12月はとにかく人肌恋しくなる季節。特に、クリスマス一色の街を歩いているときに相手がいないと、独り身の寂しさがいつもより身に染みてしまうもの。そんなときこそ、心を温めてくれる映画があなたに救いの手を差し伸べてくれるはずです。そこで、イチオシの作品といえば……。

スウェーデンで5人に1人が観た空前の大ヒット映画『幸せなひとりぼっち』!

【映画、ときどき私】 vol. 65

愛する妻も仕事も失い、哀しみに暮れるオーヴェ、59歳。規律にうるさく、気難しい彼は、近所では厄介なおじさんと化して、鼻つまみ者扱いされていた。しかし、家でひとりになれば孤独に耐えられず、失意の日々を送っていたのだった。

そんなある日、隣に新しい一家が引っ越してくることに!

主婦のパルヴァネとその家族が巻き起こす騒がしい様子に、最初こそ怒りをぶつけていたものの、いつしかオーヴェとパルヴァネに思いがけない友情が芽生え始めていた。そして、ついにオーヴェは長年胸に秘めていたある思いを語りだすことになる……。

本作は、スウェーデンの人気小説家であるフレドリック・バックマンのデビュー作が原作となっており、世界30ケ国以上で出版され、250万部を超える大ベストセラーとなった作品。

そんな人気作を独自の視点から映画化し、多くの観客を虜にすることに成功した秘密を探るべく、ある方に直撃インタビューしてきました! その人物とは……。

スウェーデンのエンターテイメント界をけん引するハンネス・ホルム監督!

もともとは俳優としてキャリアをスタートさせるのも、その後は監督としてさまざまなヒット作を生み出し、国内外で注目されている監督のひとりです。初恋の相手が日系のハーフだったことやジブリ作品が大好きなこともあり、これまで日本への思いでいっぱいだったというハンネス監督。念願の初来日となった今回、その貴重な時間のなかでいろいろとお話を聞いていきたいと思います。

この作品は、スウェーデン映画史上歴代3位となる興行成績と樹立し、さらにアカデミー賞外国語映画賞でスウェーデン代表に選ばれるなど、いまや “スウェーデンの国民的映画”。

これだけの支持を得られるという手ごたえを感じた瞬間はありましたか?

監督 最初は、この作品がヒット作になるかどうかというのはわかりませんでした。でも、「観客がどういうものを気にいってくれるのか」ということだけを考えはじめると、監督としてのスキルが失われてしまうのです。だから、あくまでも自分が観たいものや感銘を受けているものを追い求めるようにしているので、そういうことはなるべく考えないようにしていますね。

ただ、映画が完成したあと、『スター・ウォーズ』と同じ日に公開されることが決まって、自分の子どもたちには「パパの映画は『スター・ウォーズ』よりもヒットするよ!」と冗談で言っていたら、それがスウェーデンでは本当になったので、そのときはすごくびっくりしました(笑)。それだけでなく、2年前に脚本を書いていたときには、日本でこうして取材を受ける日が来るとは思ってもいませんでしたね。

大成功を収めたあと、ご自身の心境に変化は?

監督 過去にも経験がありますが、成功する映画もあれば失敗する映画もあるので、特にそういうことはなかったですね。それでも、今回の映画に関しては、結果的に成功を収めたことはうれしく思っています。

というのも、犯罪ドラマのようにバイオレンスやドラッグが出てくるものではなく、普通の人間の普通の人生をきちんと描いた作品で評価されるというのは、監督としては一番幸せなことなんです。

今回、多くの共感を得た理由のひとつといえば、やはりオーヴェという愛すべきキャラクター。こういう気難しいおじさんは、誰の周りにも必ずいるなと感じて思わず笑ってしまう人が続出。

実際、スウェーデンにも彼のような頑固オヤジは多いのですか?

監督 確かに世界中のどこにでもいるキャラクターですよね。スウェーデンの一般的な男性も多少オーヴェに似ているところがあると思います。

ただ、責任感が非常に強いところは彼らの世代の典型といえるかもしれません。現代の若い世代でいえば、私もそうですが、正直で楽観的でちょっとシャイな男性が多いですね。

オーヴェは、隣人としてはちょっと偏屈で大変かもしれないけれど、女性目線でみると、「何よりも妻を愛する素晴らしい夫」だと感じるはず。

監督が考えるオーヴェの良さとはどんなところですか?

監督 実は本のなかでは、オーヴェの妻であるソーニャが友達から「なんでオーヴェみたいな男に惹かれるの?」といわれる場面がありました。でも、僕が思うに、彼は嘘がつけない正直者なので、そういうところにソーニャは惚れたんじゃないかなと思います。

では、逆に夫からあれだけ愛されたソーニャの魅力とは?

監督 ソーニャというのは、オーヴェにとって初めて恋愛対象として見た女性だったということもありますが、実際の人生でも人は恋に落ちるとき、相手のことを何も知らないで恋に落ちてしまうということがあると思うんです。もし、現実でそういうことがありえるのであれば、映画監督として恋愛を描くときには作品のなかでもそういう風にしたいと思っていました。

最初にこの映画のオファーをもらったときは、頑固で意地悪いおじさんの話だと聞いていたのですが、原作をきちんと読んでみたら、ラブストーリーが中心になっている部分もあったので、受けてみようと思ったんです。だから、2人の若い頃の回想シーンは、一番大事な場面でもあります。

ところで、初恋の相手が日系ハーフだったそうですが、何か監督に影響を与えたことは?

監督 彼女は父親が日本人のハーフでしたが、僕の人生で出会った人のなかで、一番美しい女性だと思うね。誰だって初恋は忘れられないものだけど、残念ながら僕たちは幼すぎたんだ。影響という意味では、その当時彼女の家で日本の写真を見せてもらったり、日本の話も聞いたりしていたので、日本は早くから自分の世界に入ってきたんだよ。

その後、10代で黒澤明監督の映画を観るようになったし、いまでは『となりのトトロ』をよく子供と一緒に観ています。それに、日本とスウェーデンは結構似ている部分もあって、効率性を重んじるところや謙虚さという面では共通点が多いので、今回初めての来日でもまるで自分の国にいるかのような感覚に襲われていて、不思議な気分だよ。

インタビューを終えてみて……。

映画と同じように、優しくて温かいオーラで包み込んでくれる監督にはとにかく癒されっぱなしでした。日本に対しても特別な思いを抱いてくれていることは、日本人としてもうれしかったです。

「いつか日本でも映画を撮ってみたい」とも話してくれましたが、なんと「そのときは、僕の初恋の人の役をやってくださいね」と言われました(驚)。監督、ぜひお待ちしています(笑)!

ひとりぼっちの人なんていない!

一般的に、人生とは「人が生きていくこと」を指しているけれど、それと同時に「人と生きていくこと」もまた人生。映画を観終わったあとは、そばにいてくれる人の温かさを改めて知り、こみ上げてくる感謝の気持ちを伝えずにはいられないはず。

人はひとりでは生きられないし、そもそもひとりで生きている人もいません。つまり、あなたも誰かに支えられて、そして誰かを支えながら生きているのです。ヒューマンドラマもラブストーリーもブラックユーモアも一度に味わえる “笑いと涙に巻き込まれる傑作” に、この冬一番のぬくもりを感じてみては?

温かさがじんわりと伝わる予告編はこちら!

作品情報

『幸せなひとりぼっち』
12月17日(土)新宿シネマカリテ&ヒューマントラストシネマ渋谷他順次公開!
配給:アンプラグド
© Tre Vänner Produktion AB. All rights reserved.

http://hitori-movie.com/