志村 昌美

初来日の人気女優レイチェル・マクアダムスに直撃! 最新作『スポットライト 世紀のスクープ』の裏側を語る!

2016.4.19
最近のメディアでよく見かける言葉の1つといえば、“スクープ”! ですが、かつてある地方紙が掲載したスキャンダルが、全米をはじめ世界中を揺るがすスクープとなったことを知っていますか? そしていま、その事件の裏側を映画化した作品が映画界のみならず、全世界に新たな衝撃を与えているのです。そんな話題作といえば……。

本年度の賞レースを席巻しつづけた『スポットライト 世紀のスクープ』!

【映画、ときどき私】 vol.32

2002年1月、あるスキャンダルがスクープされ、全米に衝撃を与えた。その記事を掲載したのは、アメリカ東部の新聞「ボストン・グローブ」の特集記事欄である《スポットライト》。この連載で明らかにされたのは、神父たちの “許されざる罪” だけでなく、それをカトリック教会が隠蔽し続けていたという驚愕の事実だった。わずか数名の記者たちが命懸けで巨大権力の “タブー” に切り込み、見つけ出した真相とは……?

今回は、本作を知り尽くした “ある人物” の緊急来日にあわせて、その舞台裏を探るべくご本人を直撃してきました! その方とは、なんと……。

本作でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたレイチェル・マクアダムス!

2004年に『きみに読む物語』のヒロイン役で一躍トップスターの仲間入りを果たして以来、さまざまな話題作に出演し、“ラブロマンスのクイーン” ともいわれているレイチェル。そのキュートでセクシーな魅力で、男女ともに多くの人を惹きつけている彼女が、本作ではオシャレとは無縁の新聞記者サーシャ・ファイファー役を演じ、数々の賞でその名を響かせたのです。

今回が初来日となったレイチェルに、役作りや仕事に対する思いなどについて語ってもらいました。

まず、完成した作品を観たときの感想は?

レイチェル 初めて観たときは、みんなで一緒に観ましたが、すごくワクワクしました。全体図というのは、演じている自分たちにはわかりませんでしたが、見逃した部分がすべて1つになったのを観たときに、「この作品の一部になれて誇らしい」と思いましたね。脚本を読んだときには、「誰がこの作品を観に行ってくれるのかな」と感じたくらいでしたが、監督が美しく素晴らしい作品に作り上げてくれました。

ご自分で取材もしたそうですが、実在の人物を演じる上で心がけていたことは?

レイチェル サーシャとやりとりして気がついたこととしては、過剰にエモーショナルにならないということですね。彼女は、「正しいことをするべきだ」ということを心から信じていて、たとえ家族や地元のコミュニティに影響があったとしても、どんな代価を払ったとしても、「真実を伝えるべきだ」と思っているんです。彼女の粘り強さやタフさは本当に素晴らしいと思ったし、役作りにおいても重要なポイントになりましたね。

ご本人と接してみて、影響を受けたことありますか?

レイチェル サーシャは好奇心がすごくあるので、出会った人や場所について、取材対象ではなくても、何百万も質問を投げかけることができる人なんです。それだけでなく、彼女は非常に思いやりのある素晴らしい聞き手でもあるので、それが、被害者の方々が彼女に打ち明けることができた理由だと思います。私自身も彼女を取材する立場で質問をしているのに、気がつけば逆に自分の人生について彼女に話しているということも多くありました(笑)。

そういう素晴らしい聞き手であるということは、役者にとっても重要で欠かせないことだと思うんです。というのも、役者も、相手のセリフを聞いてそれに答えるという点で同じですから、とても参考になりました。そういう意味では、ジャーナリストと役者とは似た人種なのかもしれないですね。

この作品を観ていて、《スポットライト》の記者たちのように、1つの信念を持って突き進む様子は、1つの作品を完成させることに全力を注ぐ俳優の仕事とも重なる部分があるようにも感じました。そこで、仕事に対する考え方について聞いてみたいと思います。

仕事をする上で、“信念” として持っているものを教えてください!

レイチェル 大切にしていることの1つとしては、「真実に迫りたい」ということ。監督が本作でやっていることでもあると思います。自分が役作りをする上では、「キャラクターになろう」とするのですが、私にとってベースとなるのは、「自分自身と役がどこで交錯するのかというのを見極める」ということなんです。そうすれば、道を外れずに役にたどり着けるんじゃないかなと思っています。

あとは、チームで作っていることが映画作りの大好きな側面なので、トレーラーで隠れて、呼ばれるまで出てこないというタイプではありません(笑)。現場のファミリーのような雰囲気が好きなので、サマーキャンプに行くような感じで楽しんでいます。役者がキャストやスタッフと長い時間を一緒に過ごして、絆が深くなればなるほど、それはスクリーンで観ている方には伝わると私は思っているのです。

どの出演作もとても人気がありますが、作品を選ぶ基準は何ですか?

レイチェル 理想としては、「最高の役柄ばかりやりたい」というのがあります。なぜなら、映画作りの中で唯一自分がコントロールできるのは、自分の役だけだからです。ただ、この作品の場合は他と違って、派手でオイシイ役ではなかったですが、絶対に語らなければいけない物語ですし、すごい作品だと感じたので、出演したいと思いました。それ以外のケースでは、「自分に向いてないな」と思っていても、監督のビジョンが素晴らしくて触発されたり、その情熱に感化されたりして決めることもありますね。

多忙な生活だと思いますが、どのようにリフレッシュしていますか?

レイチェル この仕事の面白いところは、仕事をしているときはめちゃくちゃ忙しいのに、間が空くとまるで無職状態になってしまうということです(笑)。だからこそ、両方の時間を大切に思えるようにもなるんですが、カナダに住んでいるので、ビジネスから少し離れた場所であるのもいいのかもしれませんね。

それと、好きなのは旅をすることです。今回は、映画のキャンペーンでの来日ではあるけれど、ビジネスと旅がコンビになっているので、そういう意味では楽しんでいます。あとは、本を読むのが好きなので、脚本以外の本を読める時間がすごくうれしいです。

とても充実していると思いますが、俳優をやめたいと思ったことは?

レイチェル いつもよ!(笑) だって、神経症的であるのは役者の仕事だし、そういう部分があるからこそ、こういう仕事をしているのよ。自己疑念があるからこそ、もっといい仕事をしたいとか、もっといい自分でありたいと思うんです。

私を駆り立てるものは、恐怖心であったり、達成できるかわからない挑戦であったりもするので、仕事の前に「なんでこれ引き受けちゃったんだろう?」って思うこともあるんだけど、それでも翌日ちゃんと現場に行くんですよ。そんな風に気持ちが行ったり来たりすることが、自分を奮い立たせているんですが、それは私がどこか少し変わっているからかもしれませんね(笑)。

そういう思いを抱えて出演した本作で感じたことは?

レイチェル 私にとっては、一生に一回の素晴らしい作品で、特別だと思っています。エンタメが悪いと言っているわけではないけれど、エンタメだけではない映画もどんどん作られて欲しいですね。

ちなみに、今回のアカデミー賞で一番うれしかったのは、なんといっても作品賞です。受賞したことによって、アメリカでは1500館に再拡大してまた上映されたそうで、それこそが映画作りの力なんじゃないかと実感しました。この作品によって、「自分だけじゃないんだ」というようにみんなが孤独感を感じずにすむようになって、「何かしらの傷を癒すということにも繋がればいいな」と思いました。

インタビューを終えてみて……。

昔から大好きな女優さんであっただけに、今回取材をさせてもらえて密かに大興奮してしまったのですが、「こんなにかわいい人がこの世に存在するのか?」と思うほどキュートな笑顔と気さくで優しい人柄を目の当たりにして、すっかり虜になってしまいました! 思い入れのある作品となった本作を通じて、さまざまな経験をした彼女が今後どのような作品で楽しませてくれるのか、ますます目が離せなくなりそうです。

信念はただ持っているだけでなく、貫くためにある!

正しいことを正しいと言いにくい現代では、つい周りの意見に流されてしまったり、権力に負けてしまったりすることが多いかもしれません。それでも、誰もが心のなかに “自分なりの信念” を必ず持っているはず。《スポットライト》の記者たちの正義感あふれる熱くまばゆい姿は、あなたの内に秘めた想いを照らし、“信念を貫くことの大切さ” を教えてくれるのです。ぜひ、スポットライトのように光り輝く感動と希望をスクリーンから感じてください。

作品情報

『スポットライト 世紀のスクープ』
TOHOシネマズ 日劇ほか全国公開中
配給:ロングライド
Photo by Kerry Hayes (C) 2015 SPOTLIGHT FILM, LLC
写真:(C)MASAHIRO MIKI

http://spotlight-scoop.com/