田代 わこ

パリ在住の杏が明かす「いつか旅したい」画家たちにも大人気のフランスの地方とは?

2023.4.23
上野の国立西洋美術館で『憧憬の地 ブルターニュ』が開催中です。本展では、フランス北西部にあるブルターニュ地方をテーマにした作品が集結。モネやゴーガンなど巨匠たちの極上アートを見ながら、フランス旅気分を楽しめる展覧会です。音声ガイドを担当する杏さんのコメントもご紹介!

音声ガイドは杏さん!

杏さん ©Junko Tamaki(t.cube)

【女子的アートナビ】vol. 289

『憧憬の地 ブルターニュ ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷』では、国内外の美術館から集められた、「ブルターニュ」をテーマにした作品約160点を紹介。

絵画や版画だけでなく、当時の画家たちが旅先から送った絵ハガキや、旅行トランクなど関連資料も展示され、ブルターニュを旅した気分も味わえます。

さらに、本展の音声ガイドナビゲーターは、フランス在住の女優、杏さん。SNSなどでパリの様子を発信され、フランスの雰囲気が漂う杏さんの声を聴きながら、巨匠たちの名画を堪能できます。

展覧会に寄せられた杏さんのコメントは次のとおりです。

もともと美術展が好きで、時間があるとよく美術館に行きます。今回フランスに渡ったタイミングで、フランスと日本を結ぶ展覧会のアンバサダーをやらせて頂けることをとても光栄に思います。フランスにいて伝えられること、感じられることがあるのかな、と思いますので、それを今回の作品を通じてみなさまと共有できたら嬉しいです。
「ブルターニュ」というテーマの中で、同じ時代の同じ場所をさまざまな画家が、どのような視点を持って景色を見ていたのか、何を感じたのか…。
当時の画家たちの声が聞こえてくるような作品ばかりなので、展覧会でブルターニュという場所をよく理解し、味わい、いつか私も旅をしてみたいなと思います。

なぜブルターニュは人気?

展示解説をされている袴田紘代さん

19世紀後半から20世紀はじめにかけて、クロード・モネやポール・ゴーガンなど西洋の画家たちや、日本からパリに留学していた黒田清輝や藤田嗣治もブルターニュを訪れ、さまざまな作品を描いています。

なぜ、画家たちは、ブルターニュに魅了されたのでしょう?

本展を企画された国立西洋美術館主任研究員の袴田紘代さんによると、もともとブルターニュはケルト人が住み、公国として独立した地域だったので、文化的にも特徴がある、とのこと。また、各地に残る巨石遺構や海岸の断崖絶壁など自然の景観も独特なので、フランスのなかでも異郷として認識され、19世紀から画家たちが訪れるようになったそうです。

必見! モネのブルターニュ

左:クロード・モネ 《嵐のベリール》1886 年 油彩/カンヴァス オルセー美術館(パリ)、右:クロード・モネ 《ポール=ドモワの洞窟》1886 年 油彩/カンヴァス 茨城県近代美術館

では、いくつか見どころをご紹介。

第一章「見出されたブルターニュ:異郷への旅」での必見作は、モネの美しい絵画2点です。

モネは、ブルターニュ地域にある断崖絶壁の島ベリールに滞在し、海岸沿いの風景画を40点近く制作。限られた視点から、同じような風景を何枚も描いていました。この2点について、袴田さんは次のように述べています。

袴田さん ベリールは荒天の日も多く、嵐の日にはカンバスを岩にくくりつけて描いていたそうです。同じ場所を穏やかな日にも描いていますが、嵐の海と穏やかな海では色彩もタッチも違います。穏やかな天気のときはタッチも穏やかで、嵐のときは荒々しく描かれています。

極上のゴーガン10点以上!

『憧憬の地 ブルターニュ』展より、ゴーガンの作品が集まる展示室

続く第二章「風土にはぐくまれる感性:ゴーガン、ポン=タヴェン派と土地の精神」では、日本でも人気の画家、ゴーガンの作品が10点以上も登場! 見ごたえ抜群の展示室です。

株式仲買人をしていたゴーガンは、1883年に仕事を辞めて画業に専念。しかし、生活苦に陥り、物価や滞在費の安いブルターニュに移住します。

袴田さん ブルターニュの民族衣装や素朴な生活、キリスト教の信仰心や人々の精神に関心を寄せたゴーガンは、自分の解釈を加えながら作品にブルターニュの魅力を反映させていきました。最初は印象派風の作品を描いていましたが、次第に精神的なものを表現するようになっていきます。

日本の巨匠作品も!

『憧憬の地 ブルターニュ』展 会場写真

第三章では、ブルターニュに別荘やアトリエを構え、土地に根を下ろした画家たちの作品を展示。モーリス・ドニの明るい作品や、シャルル・コッテが描いた重厚な絵画、日本美術を愛した版画家、アンリ・リヴィエールの木版画も見ることができます。

最後の章では、黒田清輝や藤田嗣治など日本の巨匠たちが描いたブルターニュ作品も展示。画家が使った旅行トランクも展示され、ブルターニュの風景画とあわせて旅の雰囲気も味わえます。

本展は、大型連休中も開催。ぜひ、世界遺産に登録されている美術館で、アートなブルターニュの旅を体験してみてください。

Information

会期    :~6月11日(日)※休館日は月曜日(ただし、5月1日は開館)
会場    :国立西洋美術館
開館時間  :9:30~17:30(毎週金・土曜日は20:00まで)※5月1日(月)、2日(火)、3日(水・祝)、4日(木・祝)は20:00まで開館 ※入館は閉館の30分前まで
観覧料   :一般 ¥2,100、大学生 ¥1,500、高校生 ¥1,100、中学生以下無料
※5月7日までは事前予約制

公式HP: https://www.nmwa.go.jp