田代 わこ

「日本女性はセンスがいい!」92歳のマリー・クワントが日本を好きだったワケ

2022.12.11
イギリスで最も愛されているデザイナー、マリー・クワント。現在92歳の彼女は、ミニスカートやタイツなどを世の中に広め、「ミニの女王」とも呼ばれるファッション界のレジェンドです。現在、Bunkamura ザ・ミュージアムで、マリー・クワントのすてきなファッションを紹介する展覧会『マリー・クワント展』が開かれています。今回、マリー・クワント本人とゆかりのある方々にお会いし、当時のファッションや展覧会の見どころなどを聞いてきました!

女性のファッションを一変! マリー・クワントの破壊力

右:ヘザー・ティルベリー・フィリップスさん、左:ウルリカ・ヘインズさん

【女子的アートナビ】vol. 273

『マリー・クワント展』では、服や下着、コスメ、インテリアなどライフスタイル全般をデザインし、世界的なブランドにまで成長させたマリー・クワントの歩みを紹介。英国・ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(略称V&A)が所蔵する約100点の衣服を中心に、小物や写真、映像なども展示されています。

本展はロンドンを皮切りに、スコットランド、オーストラリア、ニュージーランド、台湾でも開催されている世界巡回展。イギリスでは、約40万人も訪れたという人気の展覧会です。

マリー・クワントは、1930年ロンドン生まれ。25歳の若さで若者向けのアイテムを揃えたブティック「バザー」をロンドンに開き、それまでの伝統的な価値観を打ち破って時代を先導。今では当たり前のミニスカートやタイツ、ジャージー素材のアイテムを浸透させ、当時の女性たちのファッションを一変させました。

本展の開幕に合わせ、マリークワント社元取締役のヘザー・ティルベリー・フィリップスさんと、元モデルのウルリカ・ヘインズさんが来日。

ヘザーさんは、1970年からマリークワント社で広報・マーケティングを担当されたあと経営に携わり、マリーさんとも家族ぐるみのお付き合いをされています。また、ウルリカさんは、1974~75年までマリークワント社のモデルとして活躍。その後、大手ブランドや日本でもモデルを務めていた方です。お二人に、展覧会の見どころやマリー・クワントさんの魅力などをお聞きしてみました!

なぜ今も人気? マリー・クワントの魅力

――まずは、お二人にお聞きします。日本での展示をご覧になって、いかがでしたか。

ヘザーさん カラフルで遊び心があり、マリー・クワントらしさを効果的に見せていると思います。もともとオリジナルの展覧会をやっていたヴィクトリア・アンド・アルバート博物館の基本を踏襲しながらも、日本ながらの解釈を加えて、すべての世代の方々にアピールできる内容になっていると思います。

ウルリカさん 私はこの展覧会が好きです。すばらしいと思いました。私たちがロンドンで見たのと同じくらい、日本の方々がこの展覧会を楽しむことができるのか、当時の若々しい刺激的な現象や雰囲気を、日本の方々も感じることができるのか、知りたいですね。

私のドレスを見て!

――この展覧会では、1955年から75年にかけてのマリー・クワントの活動に焦点を当てています。anan読者の若い女性たちには知らない時代だと思いますが、そんな女性たちでも楽しめますか?

ウルリカさん 私が着ているマリークワントのドレスを見てください! ほら、今でも新鮮でしょ。ミニスカートは、今でも若い世代にうけると思いますよ。ロンドンで開かれた展覧会では、実際に若い世代のモデルさんたちに当時のドレスを着てもらったのです。

ヘザーさん その若いモデルの子たちは、マリークワントのドレスをおしゃれに着こなしていました。当時のドレスにドクターマーチンのブーツを合わせてみたり、白いソックスを履いたり、スニーカーを履いたりして、いろいろ組み合わせていました。今の時代に着ていても、まったく変に見えないし、居心地よく着られるドレスだと思います。ロンドンで展覧会が開かれていたとき、会場でお客さんたちの話を聞いていたのですが、18歳の女性は「このドレス着たい!」と言ったのです。マリークワントの服は、タイムレスな存在になっているのだと思いました。

ファッションを手に届く存在に…

――マリー・クワントさんは、ファッション界への多大な貢献を認められて、英国王室から2度も勲章を授与されています。イギリス人にとって、彼女はどんな存在ですか。

ヘザーさん 今は主に、起業家のロールモデルとしてみなされていると思います。衣服だけでなく、ライフスタイルのクリエイターとして認められている存在です。変革を起こしたいとき、彼女のように強い思いや自信をもって取り組めば、どんな人でもやりたいことを実現できるのではないか、と思わせてくれる存在です。

ウルリカさん 彼女を特別な人にしたのは、ファッションを低価格にした、という点です。大量生産することにより、ファッションを手に届く存在にした人だと思います。当時、デザイナーの服というのはオートクチュール(高級仕立服)で、お店ですぐ買うことができるものではなかったのです。ファッションを多くの人に届けることができたのがマリー・クワントです。

専属モデルに求められていたのは…

『マリー・クワント展』展示風景

――マリー・クワントさんは、ご自身もスタイルが良く、ミニスカート姿でメディアに出られてファッションアイコンのような存在になっていました。当時、モデルとして活動されていたとき、マリーさんからは、どんなことを求められましたか?

ウルリカさん fun(楽しさ)を求められていましたし、性格の良さも求められました。ポジティブで熱心に仕事をする、いわゆるプロフェッショナリズムを持っている人をマリー・クワントは求めていました。モデルのチームのなかに、ディーバ的な存在、例えばケイト・モスのような人はいなくて、常にチームワークで物事が進んでいたと思います。チームで仕事をして自らを解放し、楽しく仕事ができる人を彼女は求めていました。

ヘザーさん それに、インテリジェンス、賢さも求められていたと思います。マリー・クワントのデザインを理解してカラダを動かせる人、デザインを身につけることによる高揚感を伝えることができるような人を求めていました。

――マリー・クワントさんの服を着ると、どんな気分になりましたか?

ウルリカさん 気分は良かったですよ。新鮮なデザインで、常に楽しさを与えてくれた洋服で、モデルたちはみな「着る」ということに誇りを持っていました。着心地がよくて堅苦しくなくて、軽く動きやすい服でしたので、本当に着ていて気分が良かったです。

――展覧会では、当時のファッションショーの映像も見ることができます。ステージに踊りながら登場したり、ドラマティックなポーズをとったりして、今の時代に見てもとても刺激的です。

ウルリカさん ファッションショーは仕事ですから、当然、みんなまじめに取り組んでいましたけれど、常に同じモデルたちと仕事をしていたので、いい雰囲気でした。さらに、モデルの数は何十人もいたわけではなく、5、6人という選ばれた数人だけでした。選ばれているということ自体が、モデルの喜びにつながっていたと思います。人数が少なかったので、着替えは急いでしなければならなかったですけどね(笑)。それも楽しかったです。

なぜマリー・クワントは日本好き?

『マリー・クワント展』展示風景

――マリー・クワントさんの回顧録を読むと、日本についての記述がたくさん出ています。彼女は日本の女性たちについてどう思っていたか、ご存じですか。

ヘザーさん マリー・クワントは日本が大好きで、日本人のライフスタイルに感銘を受けていたようです。日本女性の着こなしのセンスにも感銘を受け、上品でありながらファッションを賢明な形で解釈しているというのが彼女の感想でした。また、日本人が自分たちの文化を大事にするという点も感激していました。
マリーは息子を一時期日本で働かせていたほど、日本人と日本の文化を愛していました。日本人のお嫁さんが来てくれるといいな、と思っていたほど日本が好きでしたよ。

――ウルリカさんは、モデルとして日本のブランドや百貨店ともお仕事をされていました。日本の印象はいかがでしたか。

ウルリカさん 私も日本が大好きで、来る機会があればすぐにでも行きたいと思うほどです。日本から大きな影響を受けていましたし、文化的にも違う部分が多いのでワクワクします。日本では細かい部分まで気配りがされていて、すばらしいと思っています。エキサイティングな場所ですね。

――興味深いお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

インタビューを終えて…

マリー・クワントさんと一緒に華やかな時代を過ごされてきたお二人。鮮やかなピンクのジャケットを羽織ったヘザーさん、ミニスカートとタイツ姿で颯爽と歩くウルリカさん、どちらも美しくキュートに服を着こなされ、見とれてしまいました。色あせないマリー・クワントブランドの底力をお二人が体現されているようでした。

多くの刺激とインスピレーションを与えてくれるマリー・クワントの展覧会、ぜひ足を運んでみてくださいね!

Information

会期    :~2023/1/29(日)※12/6(火)、1/1(日・祝) 休館
会場    :Bunkamura ザ・ミュージアム
開館時間  :10:00-18:00(入館は17:30まで) 毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
※状況により、会期・開館時間等が変更となる可能性があります。
※12/31(土)は18:00まで(入館は17:30まで)
観覧料   :一般¥1,700、大学・高校生¥1,000、中学・小学生 ¥700
※学生券をお買い求めの際は、入館時に学生証(小学生を除く)のご提示をお願いします。

お問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)

※本展は会期中すべての日程で【オンラインによる事前予約】が可能です。
予約なしでも入場できますが、混雑時にはお待ちいただく場合があります。
予約方法等の詳細は展覧会HPにてご確認ください。

展覧会公式HP: https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_maryquant/