田代 わこ

谷原章介「見ていて切なくなりました…」鮮明に残る30年前の記憶を告白

2022.10.20
11月から上野の森美術館で『日中国交正常化50周年記念 兵馬俑と古代中国 ~秦漢文明の遺産~』がはじまります。この展覧会のナビゲーターに、俳優の谷原章介さんが就任。音声ガイドのナレーションも担当された谷原さんに、展示の見どころやお好きなアートについてうかがいました。

谷原章介さんがナビゲーター!

谷原章介さん

【女子的アートナビ】vol. 264

『兵馬俑と古代中国 ~秦漢文明の遺産~』では、秦漢両王朝の中心地域であった陝西省の出土品を中心に、中国における国宝レベルの貴重な文物など約200点が集結。日本初公開となる文物も多数含まれています。

特に注目したいのが、兵馬俑の展示。兵馬俑とは、陵墓(皇帝の墓所)に収められていた兵士や馬をかたどった像のこと。始皇帝陵には、およそ8000体もの兵馬俑があったと推定され、その像は一つひとつ顔や服装が異なるといわれています。

本展では、戦国、漢時代を含めた総計36体もの兵馬俑が来日。日本初公開の希少な将軍俑も展示され、過去最大級のスケールでの展示を楽しめます。

そんな注目の本展・東京版でナビゲーターを務めるのは、谷原章介さん。俳優だけでなく司会者としても活躍され、声も“イケボ”な谷原さんに展覧会の見どころなどを語っていただきました!

憧れの世界…

――本展のオファーを受けて、どのように思われましたか。

谷原さん 古代の中国は、幼いころから三国志のマンガやゲームで親しんできたので憧れの世界です。しかも兵馬俑はまだ見たことがないので、とても楽しみです。

――古代中国、どんな点に憧れていたのですか。

谷原さん 秦の始皇帝は、はじめて中国を統一しました。やはり、その権力を勝ち取っていくところに僕は惹かれるのだと思います。兵馬俑も、何千体もつくり、一緒に葬られていますよね。それをつくることができるのが権力の証。莫大な財があり、自分の偉大さを後世に喧伝したかったのだと思います。こんなすごい人がこの世にいたのだと思うのと同時に、畏怖の念も抱きます。

――兵馬俑もたくさん展示されるそうですね。

谷原さん 発掘された兵馬俑の写真を見て、この国の人たちは、なんてすごいことをやっているのだろうと思いました。展覧会で、中国の大きなスケールを感じていただきたいですね。当時、彼らは馬車で戦争をして、函谷関のような大きな城壁もあり、世界において間違いなく国力は強かった。その一端を見ていただければうれしいです。

ボソボソっと収録…

――私は歴史や古代中国にあまり詳しくないのですが、そんな人間でも展覧会を楽しめますか。イケメン兵馬俑とか、いるといいのですが…。

谷原さん 切り口は、なんでもいいと思いますよ。例えば、その時代の歴史ドラマでイケメン俳優が出ているものとかを見たりすると興味が持てるようになるかもしれないですし、あるいは、まず展覧会に来てみて、それで後からアニメやドラマを見てもいいですよね。

――さらに谷原さんの音声ガイドを聞くと、初心者でも理解が深まりそうですね。

谷原さん 僕は、今回のガイドでは作品を見ている方の耳元で「ボソボソっ」と話すイメージで、あまり声を張らずに収録をさせていただきました。声を張らないと、のどを使うので疲れるのですけど、がんばってやりましたので、ぜひガイドを聞いてください。

――なぜボソボソっと話されたのですか?

谷原さん 展示されているのは昔の文物で、一級の美術品でもあります。長い時を経て、ここまで生き残ってきたものですし、作品自体が強い存在ですから、声を張るよりは、僕は抑えていきたいな、と。ご覧になる方自身も、スポーツ観戦みたいに高揚するのではなく、静ひつな気持ちになると思うので、僕も静かに落ち着いたトーンにしました。

――ちなみに、古代中国に限らず、何か歴史ドラマでご自身が演じてみたい時代とかありますか?

谷原さん 僕が興味を持っているのは、坂上田村麻呂が征夷大将軍になるときの蝦夷(えみし)。族長のアテルイとか。奥州藤原氏にしても、東北の人たちが、中央から離れていたときの時代をやってみたいですね。ロマンを感じます。

思い出に残るアート体験は…

――谷原さんは、以前デザインの番組で司会をされていたこともあり、アートやデザインなどのジャンルにもお詳しいと思います。ご自身で何か思い出に残るアート体験はありますか?

谷原さん もう30年近く前になりますが、世田谷美術館でアウトサイダーの方々の作品を集めた展覧会がありました。そこではじめて、ヘンリー・ダーガーの作品を見ました。彼は精神疾患があり、自分の妹とは生き別れている方で、その妹をモチーフにしたと思われるような少女たちが悪と戦う物語を創造し、絵にした作品です。すごく長い壮大な物語で、大きな紙に描いてあるのですが、多くの子どもたちが殺されてしまうのです。ヘンリー・ダーガーは、病院の掃除夫として働き、稼ぎをすべて作品制作に使っていたらしいのです。

その展覧会で僕が見た西洋の方々の作品には、やはり宗教的なキリストの救いのようなものが埋め込まれていたように思えました。作らずにはいられない衝動や、救われたいという思いもあるのかなと感じて、見ていて切なくなりました。

生のスゴさを感じて!

――最後に、読者の方にメッセージをいただけますか。

谷原さん 兵馬俑は、何度か日本に来ていて、毎回ご好評をいただいているとうかがっています。そのなかでも、今回は日本初公開の将軍俑が来日するので、それは過去にはなかったものです。ぜひスマホの画面ではなく、生のスゴさを展覧会で感じていただけたらうれしいです。

インタビューを終えて…

歴史からアートのジャンルまで、本当に博識な谷原さん。特に、30年前の展覧会を鮮明に覚えていらっしゃったのが印象的でした。谷原さんの話されていたヘンリー・ダーガーの作品を見てみたくなり、世田谷美術館で開催された『パラレル・ヴィジョン―20世紀美術とアウトサイダー・アート』展の図録を入手。ダーガー作品はかなり衝撃的で、当時の若き谷原さんが受けた驚きや感動が伝わってくるようでした。

そんな博学な谷原さんが、わかりやすく語りかけてくれる音声ガイドを聞きながら、ぜひ展覧会で古代中国の世界を楽しんでみてください。

Information

「日中国交正常化50周年記念 兵馬俑と古代中国~秦漢文明の遺産~」

会期: 2022年11月22日(火)~2023年2月5日(日)
会場: 上野の森美術館
開館時間:9:30~18:00 ※入館は閉館の30分前まで
休館日:2022年12月31日(土)、2023年1月1日(日)
観覧料(税込):一般¥2,100、高校・専門・大学生¥1300、小・中学生¥900
※2022年11月2日(水)10時よりチケット発売開始予定
※本展は日時指定予約制です。
※最新情報などの詳細は展覧会公式HPをご覧ください

問合せ:ハローダイヤル 050-5541-8600
展覧会公式HP: https://heibayou2022-23.jp/tokyo