一生に一度は見たい! 世界が注目する「現代アートの聖地」直島で出会える最高峰アート
直島って、どんなところ?
【女子的アートナビ】vol. 259
直島があるのは香川県。瀬戸内海に浮かび、現在3000人ほどが暮らすこの島は、古くから海上交通の要所として栄え、海運業や製塩業、さらに大正時代には製錬所ができ発展してきました。
昭和後期には人口の減少とともに過疎化も進みましたが、1992年に美術館とホテルが一体となった「ベネッセハウス」がオープン。しだいに現代アートの島として注目されはじめます。
また、2010年からスタートした現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」も定着。今や直島は、世界中から多くの人が集まる「芸術の島」となっています。
屋外アートがいっぱい!
ジョージ・リッキー「三枚の正方形」(1972-82)
直島には、ベネッセハウス ミュージアムをはじめ、地中美術館や李禹煥美術館など見ごたえある美術館があります。美術館を訪れて作品を見るのも楽しいですが、同じくらい魅力的なのが屋外に設置されているアートの数々。
屋外アートは、季節や天気、時間帯によっても見え方がさまざまに変わり、作品が光に反射してキラキラしたり、風に揺れたり、ときには雨が滴る姿も見ることができます。
蔡國強「文化大混浴 直島のためのプロジェクト」(1998)写真:表 恒匡
また、「サイトスペシフィック・ワーク」も見どころのひとつです。「サイトスペシフィック」とは、英語のsite(場所)とspecific(特定の)を組み合わせた言葉。アーティストたちが直島を訪れ、その特定の場所のために制作したサイトスペシフィック・ワークは、風景と一体化して見ごたえ抜群です!
アート×絶景!
李禹煥「無限門」(2019)写真:山本糾
では、ここから絶景と一緒に楽しめる屋外アートをピックアップしてご紹介!
まずは、李禹煥の彫刻作品「無限門」(2019)。アーチ状の作品で、その下には道のようなものがあります。遠くから見るのも美しいですが、アーチをくぐってみるのも楽しく、また目の前に広がる海の絶景もステキです。
李は、ベネッセアートサイト直島の広報誌のインタビューで「門(アーチ)をくぐると何かしらの道が見え、新しいエネルギーが生まれ、新しい世界と出会う」と述べています。実際、この開放的な空間でアーチをくぐると、かなり気分が上がりました!
大竹伸朗「シップヤード・ワークス 船尾と穴」(1990)写真:村上宏治
直島では、大竹伸朗の作品にもたくさん出会えます。愛媛県・宇和島のアトリエで、廃船を利用したアートなどを制作している大竹。「シップヤード・ワークス」と名づけられた作品シリーズが、ベネッセハウス近くの海岸やベネッセハウス ミュージアムカフェの近くなどに点在しています。
ちなみに、ベネッセハウス ミュージアムカフェではアート作品をイメージしたスイーツも楽しめます。筆者が注文したのは、宮島達男作品をイメージしたティラミス。とてもおいしかったです!
左/カレル・アペル「かえると猫」(1990)右/ニキ・ド・サンファール「らくだ」(1991)
また、ベネッセハウス パークのエリアにもさまざまな屋外アートが点在しています。
原色を使った鮮やかな作品で知られるオランダの画家・彫刻家、カレル・アペルの大きな作品「かえると猫」はインパクト大。
フランスの芸術家、ニキ・ド・サンファールの作品は、敷地内の植物と一体化して、とってもかわいい雰囲気です。筆者はベネッセハウスに連泊していたので、毎朝このパークを散歩するのが楽しみでした。
Hiroshi Sugimoto, Glass Tea House "Mondrian", 2014 (c) Hiroshi Sugimoto, Photo: Sugimoto Studio The work originally created for LE STANZE DEL VETRO, Venice by Pentagram Stiftung
杉本博司の作品「硝子の茶室『聞鳥庵』」もベネッセハウス パークにあります。この茶室は、そもそもヴェネツィア建築ビエンナーレに出品するためにつくられたもので、その後はフランスのヴェルサイユ宮殿、京都市京セラ美術館に展示され、2021年、直島にやってきました。
屋外にある作品ですが、鑑賞するためには『杉本博司ギャラリー 時の回廊』の予約と鑑賞料が必要です。
家プロジェクトも感動的!
家プロジェクト「角屋」宮島達男"Sea of Time ’98" 写真:鈴木研一
また、直島の街中で展開されている「家プロジェクト」も見どころ満載です。千住博や宮島達男、大竹伸朗、内藤礼など世界で活躍する現代アーティストが古い家屋などに作品を展示。家の中や敷地内に入り、ときには靴を脱いで和室などにあがり、至近距離で作品を見ることができます。
筆者は、ベネッセハウス宿泊者限定の「家プロジェクト」作品鑑賞ツアーに参加し、「角屋」や「護王神社」、「南寺」などを見てきました。
特に印象的だったのは、「角屋」。ここでは宮島達男の作品がいくつか展示されていますが、そのうち「Sea of Time '98」の制作秘話に感動。本作品は、直島町のさまざまな人々が制作に参加されているのですが、ガイドさんから詳しいエピソードを聴いてから作品を見たら泣きそうになりました。
直島がアートの島になっていく経緯や、作品についてのさまざまなエピソードは、ベネッセハウスの鑑賞ツアーに参加したり、『直島 瀬戸内アートの楽園』(新潮社)などの本を読んだりすると深く知ることができます。
建築も見逃せない!
ベネッセハウス 写真:山本糾
島内にある各アート作品もすばらしいのですが、建築物も見どころのひとつです。
直島の玄関口、宮浦港はSANAAのデザインでとてもスタイリッシュ。地中美術館や李禹煥美術館、ヴァレーギャラリーなどおもな美術館の建物は、安藤忠雄が手がけています。特に、アーティストの希望を聞きながら建てられた李禹煥美術館は、展示されている作品との親和性も高く、とてもステキな空間になっています。
まさに島全体が美術館になっている直島は、一生に一度ではなく何度も訪れたくなる「現代アートの聖地」。筆者は3泊しましたが、それでもすべて見ることはできませんでした。また、近隣の島にもアート施設があるので、瀬戸内の島めぐりをするのも楽しいと思います。ぜひ一度、足を運んでみてください。
参考資料:
『直島 瀬戸内アートの楽園』(新潮社)
ベネッセアートサイト直島広報誌 2019年10月号
Information
ベネッセアートサイト直島: https://benesse-artsite.jp/
直島観光協会: https://naoshima.net/