志村 昌美

映画、ときどき私 Vol.6『アデライン、100年目の恋』で読み解く、人が歳を重ねる“本当の意義”。

2015.10.11
今回ご紹介するのは、女性たちから絶大な人気を誇る女優ブレイク・ライヴリー主演の映画『アデライン、100年目の恋』。女性のための“現代のおとぎ話”と言われている本作が伝えたいこととは?

数奇な運命をたどることになった女性の名は、アデライン・ボウマン

アデラインが生まれたのは、1908年1月1日。21歳で結婚し、娘をもうけるが、29歳の時にある信じられない出来事がアデラインの身に起こる。それがきっかけで年を取らなくなり、“永遠の29歳”となってしまったアデライン。

それ以来、誰にも言えない秘密を抱えたまま、住居を転々とし、名前や年齢を偽りながら逃亡生活を送ることになってしまう。そんなアデラインの心の支えは、母の秘密を唯一知る年老いた一人娘のフレミングと愛犬だけだった。

100歳を超えてもなお美しいアデラインがついに運命の出会い!

魅力的な青年エリスが現れ、アデラインに熱烈なアプローチをする。そんなエリスにどんどん惹かれてしまうアデラインだったが、自分が抱える秘密と過去の恋が心にブレーキをかけてしまっていた。

しかし、ある人物との再会がアデラインの運命を大きく動かすことに!

それは、エリスと一緒に彼の実家を訪れた際、アデラインの過去を知る人物であるエリスの父親と偶然の再会。この出来事がアデラインの心を大きく揺さぶり、事態は思わぬ方向へと進むことに……。100年の時を超えてアデラインが見つけたものとは?

自分の秘密を打ち明けられず、偽り続けて苦しむアデラインの姿に、人が歳を重ねることの意義や大切さを考えさせられます。

実は、私は1番近いある人に12年もの間、年齢を詐称されていました。

しかも10歳も年齢を偽っていた人物とは……なんと、私の母です!

衝撃の事実を知ったのは、私が小学6年生にとき。うっかり立ち聞きしたことで発覚したのですが、さらに驚いたのは、当時の小学校の担任にまで口裏合わせを頼む用意周到さ。とはいえ、決してアデラインのように身元を隠して逃げ回っていたわけではなく、そこにはある理由がありました。

実は私が生まれたとき、母は44歳という高齢出産だったのです。その当時は、今よりも自然分娩で高齢出産をする人は少なかったようで、入院中も入れ替わり立ち替わり、いろんな先生が病室を訪ねていたほどとのこと。そうなると当然、ほかのお母さんよりも年齢がかなり上になるため、そのことで娘たちが傷つかないようにという母なりの配慮があったのだと思います。

50年前にはイタリアに数年間滞在していたり、服飾に興味を持っていたりと、当時としては割と“ハイカラ”なほうだった母。その裏には、自分自身でもある種のコンプレックスを感じていたのかもしれません。そして、アデラインが大切な人たちに年齢や正体を詐称していたときと同じように、罪悪感や後ろめたさも感じていたに違いないとは思います。

そこで、20年以上経った今、真実を聞いてみた!

そろそろ時効だと思い、本当の理由とその当時の心境を聞こうと訪ねてみたところ、第一声に「そうだっけ? 憶えてないわ!」とまったく悪びれることのない満面の笑みで返され、それ以上聞く気が起きなかったのは、言うまでもありません。とはいえ、都合の悪いことは忘れてしまうというのも、若さを保つ秘訣かもしれないとも感じたのでした。

実際、娘の私から見ても、今なら10歳サバ読んでもいいんじゃないかなと思うほど。70代に入っても、クラブで遊ぶ姉について行ってみたり、30~40歳年下の人たちと飲みに行ってみたり、ジムに通っては近所を自転車ですっ飛ばしてみたり、78歳にしてファッション関係の本で読者モデルをしてみたり、身も心もまだまだ若い母。

年を取るのも悪いことだけではないのかもと感じさせられます。今では逆に、若く見られることがうれしいようで、喜んで本当の年齢を公表するほど。

ちなみにお医者さんも驚くことに、70代後半にして骨密度の年齢がなんと20代! まさに"骨だけアデライン"の自慢の母です!

と、ここでそろそろ映画の本題に戻りたいと思います。

“永遠の29歳”であるアデラインの悩みは贅沢にも年を取れないこと。女性からすれば「29歳で止まりたいと誰もが願うことなのに?」って思うかもしれません。でも、自分の好きな人だけが年を取っていき、自分だけ一緒に年齢を重ねられないことを想像してみてください。どうですか?

年代によって、感じる喜びや悲しみは変わるものです。アデラインを見ていると、それを愛する人たちと共有できないことがいかに悲しいことか身に染みるはず。

心の年齢はまわりの環境や自分次第!

そして、興味深いのは、娘といるときは心だけ107歳の母の顔になり、好きな人の前では心も29歳の女性に若返りすること。あくまでも年齢とは“肉体の年齢”であって、“心の年齢”はまわりの環境や自分の気持ち次第でいくらでも変えられるものなのだと感じさせられます。

ポジティブな年の取り方とは?

「年を取る」というのはネガティブに聞こえるかもしれませんが、自分にとって大切な人たちと「楽しい年月を重ねる」と考えれば、年を取るのも悪くないと思えるはず。

年を取らない人なんていないのだから、見た目の若さだけにこだわるのではなく、これからのアンチエイジングに一番必要なものは、"心のアデライン化"なのかもしれません。

作品情報

『アデライン、100年目の恋』
公開表記:10月17日(土)より、新宿ピカデリーほか全国公開
配給:松竹
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http://adaline100.jp/