志村 昌美

Z世代に人気の吉田凜音「中国に行って無敵になった (笑) 」と語る理由

2022.7.20
自主的に母親のペットとなった30代の息子とその家族を描き、型破りな映画として注目を集めている『猫と塩、または砂糖』。いよいよ公開を迎えるなか、ヒロインに抜擢されたこちらの方にお話をうかがってきました。

吉田凜音さん

【映画、ときどき私】 vol. 504

歌とラップを織り交ぜたポップな楽曲で話題となり、Z世代に人気の吉田さん。歌手、女優、モデルなど幅広い活躍を見せるなか、女性ラッパーたちが競い合う中国の音楽ドキュメンタリー番組に唯一の日本人として出演するなど、現在は国内外で注目度の高い存在でもあります。

本作で吉田さんが演じているのは、主人公の一郎を翻弄し、父親のために白くて無垢なアイドルでいようとする謎の美少女・絵美。そこで、役との共通点や現場でのエピソード、そして幸せを感じる瞬間などについて、語っていただきました。

―まずは、脚本を読んだときにどのような印象を受けましたか?

吉田さん どんな作品になるのか、まったく想像がつかなかったので、「どうなるんだろう?」と頭のなかはハテナマークがたくさんになりました。でも、わからなすぎて、逆に興味が湧いてきたので、現場に入るのは楽しみでしたね。

―そんななかで、役作りをするのも大変だったのでは?

吉田さん 私としては、お父さんのために生きている普通の女の子の役かなと思ったので、まずはその部分を考えるようにしました。ただ、感情を表に出さない子でもあるので、無表情のまま感情を表現するのは難しかったです。とはいえ、一郎の家族と出会うことで絵美にも徐々に感情が表れてくるので、そのあたりは意識して演じています。こんなに役になりきれることはあまりないので、すごく楽しかったです。

何にでもなれる白みたいな人になりたい

―演じるうえで、共感するところもありましたか?

吉田さん そうですね。私もたまに「感情あるの?」と聞かれるタイプなので、そういうところは似ているのかなと(笑)。特に、撮影当時はまだ18歳くらいで、感情をあまり見せないようなところもあったので、絵美の気持ちは理解できました。

―監督からは、どういった演出があったのでしょうか。

吉田さん 私たちキャストが考えていたことと、監督が目指しているところが同じだったこともあり、演技指導のようなことも特にありませんでした。そんななかで、監督が何よりもこだわっていたのは、絵美を真っ白な存在にすること。4人が一緒のシーンでも、一瞬しか映らないようなシーンでも、私だけずっとライティングされていたので、本当に徹底しているなと感じました。おかげで、私はつねに光っています(笑)。

―そのかいあって、絵美はまぶしいほどの白さが印象的でしたが、もし自分を色に例えたら何色ですか?

吉田さん 私は白みたいな人でありたいなとは思いますね。白って、何にでもなれる色ですから。

―ちなみに、お好きな色も教えてください。

吉田さん 好きなのは、逆に黒です。特に、10代の頃の私服は「真っ黒じゃないと嫌」というくらいでしたね。でも、20代に入って心境の変化があったのか、最近は白い服が増えた気がしています。

音楽活動と女優業は生きてると感じられる場所

―劇中では、一郎を演じる田村健太郎さんをはじめ、宮崎美子さんや池田成志さんといった先輩俳優の方々がそろっています。現場で思い出に残っていることはありますか?

吉田さん ボクシングのゲームをしているシーンで汗をかいていないといけなかったので、田村さんと一緒に家の周りを走ってみたり、川を見に行ったりしました。宮崎さんは本当のお母さんみたいに優しかったですし、池田さんも本当のお父さんみたいに私を守ろうとしてくれて、うれしかったです。

―本作では「幸せとは何か」というのも題材となっていますが、ご自身の“幸せのベクトル”が向かっている先を教えてください。

吉田さん 私が幸せを感じるのは、やっぱり音楽活動と女優業をしているとき。どちらも、私が生きていると感じられる場所でもあります。曲作りをしていたり、現場に入ったりするたびに、ここに私の幸せがあるんだと実感しているところです。

―逆に、落ち込んでしまったときはどのようにして乗り越えていますか?

吉田さん どんなに悔しいとか、辛いと感じることがあっても、それ以上に「こんなところで負けていられない!」という思いが自分のなかにあるので、意外とすぐに忘れて前を向いていけるタイプです。そもそも、何があっても寝ればわりとすぐに立ち直るほうですからね(笑)。

―では、仕事をするうえでやめたいと思ったこともないと。

吉田さん それに関しては、中国で番組に参加しているときにリタイアしたいと何度も悩んだことはありました。いま振り返っても、あの半年間は21年生きてきたなかで一番大変だったかなと。でも、「中国まで来てこんな経験はいましかできない」と考えたら、最後まで残ることができました。あのときにめちゃめちゃ鍛えられたので、いまでは自分のことを“無敵”だと思っています(笑)。

人にパワーを与えられる存在でありたい

―いまとなっては、素晴らしい経験になったんですね。また、監督は常識という価値観を押しつけられることが嫌で本作にその思いを込めたそうですが、ご自身も周りに持たれるイメージと素の自分の間にギャップを感じることもありますか?

吉田さん 私は仕事もプライベートも家族といるときも、全部が素の状態。もちろん、いろんな顔を持ってはいますが、かわいこぶったりもできないのでありのままで生きてきました。ファンの前でも全部を見せているので、おそらくみなさんも知っているのではないかなと思いますが(笑)。

―吉田さんは、その飾らないところが魅力だと思います。ご自身が影響を受けている方はいらっしゃいますか?

吉田さん 子どものころから尊敬しているのは、中川翔子さん。小学2年生のときに見に行ったしょこたんのライブでたまたま舞台に上げていただき、それがきっかけでアーティストを目指すことに決めました。テレビの3分クッキングの音楽にも合わせて踊っていたくらい、小さいときから踊ることが大好きで、最初はダンスを習っていたんですが、しょこたんとの出会いで歌も習うことに。そこからは歌手になることだけを目指してがんばってきました。

あとは、東京事変さんとかも好きですが、やっぱり音楽そのものに大きな影響を受けていると思います。特に、ライブで感じる音からはパワーをもらいますが、私も人にパワーを与えられる存在でありたいです。

20代は先を見ながら進んでいけるようになった

―今後、さらに力を注いでいきたい活動や挑戦してみたいことがあれば、お聞かせください。

吉田さん もともと演じることは好きですし、音楽活動と女優業は「表現する」という意味では似ているところも多いので、これからもこの2つはずっと続けていきたいと考えています。女優のお仕事では新たな感情を教えられることがあり、それを音楽に活かすことで歌詞が生まれる場合もあるので、その連携されている感じも好きなところです。

いまやってみたい役を挙げるなら、悪役。これまでは活発な子やおとなしい子とか、意外と”普通の子“みたいなキャラクターが続いていましたから。ぜひ、めちゃくちゃ悪い役を演じてみたいです(笑)。

―楽しみにしています! 現在21歳ですが、20代に入ってから変わったことはありましたか?

吉田さん 仕事に対する思いは変わっていないですが、目の前のことばかりに立ち向かってきた10代に比べると、20代は先を見ながら進んで行くことができるようになったと感じています。あとは、お酒が飲めるようになったので、いろんな人と出会う機会が広がったのではないかなと。でも、そのくらいですね。

かっこいいと思うのは、好きなことをしている人

―美容面で続けていることや最近始めたことがあれば、教えてください。

吉田さん 私は美容がものすごく好きなので、お風呂から出たあとにいろんなケアをしているときが本当に楽しいです。どちらかというと、それによって得られる結果よりも、ケアの工程を楽しんでいるのかもしれません。

ちなみに、最近買ったのは、人気のダーマペンのなかでも、ダウンタイムが必要ないとされている光のダーマペン。使い始めたばかりで効果についてはまだわかりませんが、美容の最新情報を追いかけるのが大好きなので、いつも欠かさずチェックしています。

―いま目指している理想の女性像などもありますか?

吉田さん やっぱり好きなことをしている人が一番かっこいいなと思います。そんなふうに毎日を過ごしている女性は輝いているので、私もそうなりたいです。

―それでは最後に、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。

吉田さん この映画については、どこがおもしろいとか、何も言えない作品なので、まずはとにかく観てほしいです。人によって感じ方もまったく違うはずなので、幅広い年齢の方に観ていただけたらいいなと思っています。私自身に関しては、これからも好きなようにやっていけたらと考えているので、ぜひ応援していただけたらうれしいです。

インタビューを終えてみて……。

驚くほど高い透明感と、目力の強さが印象的な吉田さん。仕事の話をしているときのキラキラした表情からは、いかに充実しているかがうかがえました。今後、歌手としても女優としても、どのような振り幅を見せてくれるのか楽しみです。

クセが強くて、目が離せない!

多様性が重視される時代になったとされてはいるものの、いまだに仕事や結婚、子育てなど、社会の多数派による“常識”を押しつけられて生きづらさを感じている人も多いはず。そんなときだからこそ、一癖も二癖もある主人公たちが新たな“幸せのベクトル”を見つけようと模索する姿を観察してみては?


写真・北尾渉(吉田凜音) 取材、文・志村昌美 

ストーリー

舞台は、日本のどこにでもある住宅街に建つ一軒家。社会を拒絶し、自主的に母のペットである“猫”になった息子の一郎は、慎ましい母とアル中の父の3 人で淡々と暮らしていた。

そんなある日、母親が元カレと再会。得体の知れない金持ち紳士風の男は、父親のためにアイドルとして生きる娘とともに家にやってくる。そして、いつの間にか5人の奇妙な同居生活が始まることに……。

予測不能な予告編はこちら!

作品情報

『猫と塩、または砂糖』 
7月23日(土) より、ユーロスペースほか全国順次ロードショー
配給:一般社団法人PFF/マジックアワー
https://www.nekoshio.com/
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