結婚初夜に7度も夫を殺され…「美しいのに残酷すぎる」名画が来日!
巨匠たちの作品に会える!
【女子的アートナビ】vol. 244
『スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち』では、スコットランドが誇る美術品のなかから、ラファエロやレンブラント、ルノワールなど、巨匠たちの作品や、ターナーやミレイなどイングランド出身の画家たちの作品なども含め、約90点が集結。西洋美術の流れを名画とともに楽しめます。
スコットランド国立美術館が開館したのは、1859年。ヨーロッパの他国のように、王室コレクションからスタートした美術館ではなく、購入や地元の名士たちによる寄贈や寄託などによってコレクションを増やしていき、世界有数の美術館となりました。本展では、コレクションのエピソードを楽しめる作品も見ることができます。
あだ名が有名!
では、おすすめ作品を数点ピックアップしていきます。
まずは、第1章「ルネサンス」から、巨匠エル・グレコの《祝福するキリスト(「世界の救い主)」》にフォーカス。
イタリアやスペインで活躍したエル・グレコは、ギリシャ出身の画家。本名は、ドメニコス・テオトコプーロスですが、あだ名のエル・グレコ(ギリシャ人)として知られています。故郷のクレタ島で美術の修業をし、その後ヴェネツィアに移住、さらにローマでも働き、最後はスペインに永住しました。
本作は、表現力豊かな筆遣いと、赤と青のコントラストが目を引く美しい作品です。
学芸員さんのおすすめは…?
続いて、第2章「バロック」では、スペインの画家、ディエゴ・ベラスケスの描いた《卵を料理する老婆》をご紹介。
ベラスケスは、国王フェリペ4世付きの画家に任命され、「画家の中の画家」と呼ばれた巨匠。国王に信頼され、王室の肖像画を数多く描いたほか、王宮配室長も任されるほど出世した人です。
本展担当の東京都美術館学芸員・髙城靖之さんによると、この作品は、ベラスケスがまだ若いころに、自分の力量を知らしめるために描いた野心作。本作の注目ポイントについて、次のように語っています。
髙城さん 作品の手前には静物を描いている部分があり、金属などの質感をたくみに描き分けています。なかでも一番の注目ポイントは、調理中の卵。素揚げにしているところですが、白身が固まっている最中のものと、すでに固まっている状態のものとがきちんと描き分けられています。卵が固まっていく様子を絵画で見事に表現しているので、ぜひご覧になってみてください。
7度も夫を殺された…!?
もう一点、バロック絵画で筆者のおすすめ作品をご紹介。オランダ絵画の黄金期に活躍した巨匠、レンブラント・ファン・レインの《ベッドの中の女性》です。
一見すると、ふつうに美しい絵画ですが、解説を読んで作品の背景を知ると、あまりに残酷なストーリーに驚愕します。
本作品の女性は、聖書の登場人物であるサラと考えられています。彼女は、過去7度も結婚初夜に夫を悪魔に殺されており、この絵は、8人目の夫が悪魔を追い払うところをサラが見守っている場面。この絵を見て、聖書の物語を読み解ける教養や見識が鑑賞者に求められているそうです。
絵の背景にあるストーリーを知ると、作品の見え方ががらりと変わります。絵は表面的な美しさだけを見ても十分満足できますが、解説を読むとさらに別の楽しみ方もできます。
スコットランド人の故郷愛が伝わる…!
最後は、スコットランド国立美術館のステキなエピソードがある絵画をご紹介。本作品は、アメリカの風景画家フレデリック・エドウィン・チャーチの作品です。なぜ、アメリカ絵画が最後に展示されているのでしょう?
髙城さんによると、この絵は、スコットランドの貧しい家庭に生まれた人がアメリカに移住し、実業家として成功したあと故郷に寄贈した作品。スコットランド国立美術館は、市民らの寄付などによりコレクションを増やしていった美術館なので、その象徴として最後にこの作品を展示したそうです。
巨匠たちの競演を楽しんで!
巨匠たちの名画、いかがでしたか?
本展は7月3日まで開催。幅広い西洋美術の名品を、まとめて見られる貴重なチャンスです。ぜひ美術館で楽しんでみてくださいね!
Information
会期 :~7月3日(日) ※休室日は月曜日
会場 :東京都美術館 企画展示室
開室時間 :9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)※金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)※夜間開室については、展覧会公式サイトでご確認ください。
観覧料 :※本展は日時指定予約制
一般¥1,900、大学生・専門学校生¥1,300、65歳以上¥1,400 高校生以下無料(日時指定予約必要)
※最新情報は展覧会公式サイトでご確認ください
展覧会公式サイト: https://greats2022.jp
問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)