田代 わこ

一生に一度は観るべき! 美しすぎる“日本の宝”が集まる春の展覧会4選

2022.3.13
春のお出かけにぴったりの展覧会が、都内各所で次々とはじまっています。今回は、特に日本が誇る美しい芸術品を見られる場所にフォーカス。サントリー美術館、山種美術館、アーティゾン美術館と東京国立近代美術館の企画展をまとめてご紹介!

サントリー美術館『よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる天平の技―』

【女子的アートナビ】vol. 237

御大典記念 特別展『よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる天平の技―』では、奈良にある正倉院宝物の精巧な再現模造のなかからセレクトされた逸品をまとめて展示。近現代の一流工芸家により再現された天平時代の技と美をたっぷり楽しめます。

正倉院宝物とは、東大寺の重要な資財を納める「正倉」に伝わった約9,000件の品々のこと。聖武天皇ゆかりの品をはじめ、奈良時代の貴重な宝物が多く、調度品や楽器、武具、仏具、染織品など多彩な品があります。

でも、なぜ本物の宝物ではなく再現模造を展示するのでしょうか? 

宮内庁正倉院事務所保存課長・飯田剛彦さんによると、正倉院宝物は壊れやすく、全国各地の展覧会で積極的に作品を公開するのは難しいとのこと。代わりに再現模造で理解を深めてほしい、とのお話でした。

明治期の模造製作は、宝物を修理するための試作品としてつくられたことが多く、今では万が一の際のスペアとしての役目や、今回のような展覧会に出品する役割も担っているそうです。

例えば、正倉院の国宝「螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」の模造をつくる際、まず製作前にレントゲンやCTスキャンなども駆使して徹底的な調査を実施。痕跡を探り、さらに当時と同じ材料も各地から探し集め、そのうえで当代の名工たちが当時の技法を再現しながらつくりあげたそうです。

「螺鈿紫檀五絃琵琶」は、正倉院宝物を代表する名品のひとつ。楽器としても大変珍しく、世界で現存するのは正倉院の現宝物のみ。それと同じものをほぼ完ぺきに再現した模造も、やはり素晴らしい芸術品といえると思います。

前出の飯田さんは、この企画展の楽しみ方について、次のように教えてくれました。

飯田さん 再現模造には変色や欠けている部分もなく、ストレートな美しさがあります。また、現代の一流工芸作家が失われた技術をどのように再現したのか、という部分も注目点です。模造のパーツなども展示されているので、製作過程も含めて楽しんでみてください。

本展は3月27日まで開催。その後、長野に巡回します。

山種美術館『上村松園・松篁 ―美人画と花鳥画の世界―』

渋谷区広尾にある山種美術館では、美人画の巨匠として知られる上村松園と、その長男・松篁(しょうこう)に焦点を当てた展覧会『上村松園・松篁 ―美人画と花鳥画の世界―』が開催中。気品あふれる日本画を心ゆくまで堪能できます。

上村松園(1875~1949)は、京都で活躍した女性画家。葉茶屋の娘として生まれ、京都府画学校(現:京都市立芸術大学)で鈴木松年に、その後は竹内栖鳳などのもとで日本画を学びます。

1902年に長男・信太郎(のちの松篁)を出産。家業の茶商を廃業して画家に専念し、シングルマザーとして息子を育てます。1948年には、女性初の文化勲章を受章。格調高い美人画で人気を博し、日本画家として成功を収めました。

上村松篁(1902~2001)は、花鳥画で有名な画家。特に鳥の絵に定評があり、アトリエで多くの鳥を飼って観察しながら描いていたことで知られています。1984年には文化勲章を受章。息子の上村淳之も、日本画家として活躍しています。

会場では、山種コレクションの上村松園作品全18点・松篁作品全9点を一挙に公開。さらに、淳之も含めた三世代の作品を見ることができます。

なかでも時期的に必見なのが、松園の《春芳》(しゅんぽう)。梅の木の前でたたずむ女性の姿が描かれた大変美しい作品です。芳しい梅の香りが漂ってきそうで、作品の前に立つだけで一気に春の空気に包まれます。

本展は4月17日まで開催。

アーティゾン美術館『はじまりから、いま。1952ー2022』

公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館では、現在『はじまりから、いま。1952ー2022 アーティゾン美術館の軌跡―古代美術、印象派、そして現代へ』が開かれています。

本展では、石橋財団コレクションの歴史を約170点の作品とさまざまな資料で紹介。古代美術や日本東洋古美術から現代美術まで、幅広いジャンルの名作を楽しめます。

展覧会は3部構成。

第1章「アーティゾン美術館の誕生」では、近年収蔵された作品や、これまで開催された展覧会のポスターなども展示。ブリヂストン美術館時代の懐かしい企画展などを思い出しながら、美術館が歩んできた歴史に触れられます。

第2章「新地平への旅」では、中国出身の画家ザオ・ウーキーによる墨で描かれた大作が登場。

また、新所蔵作品《平治物語絵巻 常磐巻(ときわのまき)》も初公開中です。これは鎌倉時代に制作された作品で、清盛勢が内裏に討ち入りする場面などがドラマチックに描かれています。

さらに、みんな大好きな“日本の宝”も第2章に登場! 国宝《鳥獣戯画》(京都・高山寺蔵)甲巻の一部だった作品《鳥獣戯画断簡》も、石橋財団コレクションの所蔵作品です。

最後の第3章「ブリヂストン美術館のあゆみ」では、開館初期のコレクションを紹介。モネやマネなどの絵画やギリシア彫刻などを楽しめます。

本展は4月10日まで開催。

東京国立近代美術館『没後50年 鏑木清方展』

最後にご紹介するのは、美人画の大家として活躍した鏑木清方(1878~1972)の日本画約110点を集めた展覧会『没後50年 鏑木清方展』。こちらは3月18日からはじまります。

鏑木清方は東京・神田生まれ。浮世絵系の画家に師事したあと挿絵画家としてデビューし、新聞や小説雑誌などの挿絵を手がけます。その後、人物画を中心とした日本画にも取り組み、庶民の暮らしや文学などをテーマに絵画を制作。

関東大震災後、清方は再開発で失われていく明治の景色をテーマに作品を描き、代表作のひとつ《築地明石町》が誕生します。

明石町は、明治時代に外国人居留地だった場所。本作の背景には洋館の垣根が描かれ、黒い羽織姿の女性の髪形は、明治期に流行した「イギリス巻」になっています。

鏑木清方は、先にご紹介した上村松園と並び称されることも多く、特に美人画の雰囲気が似ているので違いがわかりづらいと思う人もいるかと思います。

でも、山種美術館の企画展と本展を見れば、その違いがきっとわかるはず。ぜひ、どちらにも足を運んで、じっくりと本物の作品をご覧になってみてください。

本展会場の東京国立近代美術館は千鳥ヶ淵にも近く、周辺にお花見スポットがたくさんあります。アートとお花見と一緒に楽しむのもおすすめです!

Information

御大典記念 特別展『よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる天平の技―』
会期    :~3月27日(日)※火曜休館 ※3月22日は開館
会場    :サントリー美術館
開室時間  :10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)※3月20日(日)、3月21日(月・祝)は20時まで開館※いずれも入館は閉館の30分前まで ※開館時間は変更の場合があります
観覧料   :一般¥1,500、大学生・高校生¥1,000
公式サイト: https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2022_1/ 

『上村松園・松篁 ―美人画と花鳥画の世界―』
会期    :~4月17日(日) ※月曜休館 ※3/21(月)は開館、3/22(火)は休館
会場    :山種美術館
開室時間  :10:00-17:00(入館は16:30まで)
観覧料   :一般¥1,300、春の学割 大学生・高校生¥500、中学生以下無料 (付添者の同伴が必要) 
公式サイト: https://www.yamatane-museum.jp/exh/2022/shoen.html
 
『はじまりから、いま。1952ー2022 アーティゾン美術館の軌跡―古代美術、印象派、そして現代へ』
会期    :~ 4月10日(日)※月曜休館 ※3/21(月)は開館、3/22(火)は休館
会場    :アーティゾン美術館
開室時間  :10:00-18:00(入館は17:30まで) ※金曜日は20:00まで
観覧料   :ウェブ予約チケット¥1,200、当日チケット¥1,500、学生無料(※要ウェブ予約)
公式サイト: https://www.artizon.museum/exhibition_sp/hajimari/ 

『没後50年 鏑木清方展』
会期    :3月18日(金)~5月8日(日)
休館日   :月曜(※3月21日、28日、5月2日は開館)、3月22日(火)
会場    :東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
開室時間  :9:30-17:00(金・土曜は9:30-20:00)(入館は閉館30分前まで)
観覧料   :一般¥1,800、大学生¥1,200、高校生¥700、中学生以下無料
公式サイト: https://kiyokata2022.jp/