志村 昌美

広瀬アリス「絢香さんの曲をずっと聴いていました」失恋の乗り越え方

2022.1.12
できれば経験したくないけれど、多くの人が経験したことがあるものといえば失恋。まさにいま傷ついているという人もいるのでは? そこで、新たな一歩を踏み出したいと気持ちが高まるいまの時期にオススメのドラマ『失恋めし』をご紹介します。今回は、こちらの方にお話をうかがってきました。

広瀬アリスさん

【映画、ときどき私】 vol. 442

失恋にまつわるさまざまなエピソードとともに、元気をくれる思い出の味を描いた本作で、エッセイ漫画「失恋めし」の連載を持つ主人公のキミマルミキを演じた広瀬さん。撮影の裏話や食にまつわる家族との思い出、さらに自身の失恋を乗り越えた話などについて語っていただきました。

―まずは、本作のどういったところに惹かれたのかを教えてください。

広瀬さん 「失恋」というのは、ワードとしてはネガティブな印象がありますし、人生にとってもマイナスなことだとは思います。でも、この作品では、「悲しくて傷ついているかもしれないけど、おいしいものを食べたら、明日ちょっとがんばれるかもよ」と背中を押してくれるところが素敵だなと感じました。

―広瀬さんと言えば、漫画がお好きなので、漫画家という設定にもテンションが上がったのではないかと思いますが。

広瀬さん それが漫画家さんに憧れたことが一度もないので、正直なところそういう感覚はなかったです。というのも、私には絵心がまったくないんです(笑)。でも、だからこそ絵を描いているシーンでは、「やっぱり漫画家さんはすごいなぁ」と思いながら演じていました。

―今回、役作りで意識したのは、どのあたりでしょうか。

広瀬さん ちゃんとしているよりも、自然体でいられたらいいなというのはありました。そのなかでも一番意識していたのは、嫌な子に見えないように気をつけること。失恋ネタを探している女の子なので、他人の失恋トークが聞こえてくるのはうれしいんだけど、あからさまにうれしい顔をすると失恋した人に対して嫌な子に見える可能性があるので、そうならないように表情の出し方については、大九(明子)監督ともかなり話し合いました。

どれもおいしくて、撮影中は太りました(笑)

―なるほど。そのなかで、広瀬さんご自身の癖やリアルなリアクションが出ているシーンもあるのだとか。

広瀬さん そうなんです。たとえば、私が本当に道を間違えてしまって戻ってきたときの様子とか、ボサボサの髪の毛を必死に戻しながらセリフを言っているところなど、全部実際の様子をそのまま使ってもらっています。そういった細かいところを生かしてもらったので、役にも重みが増す感じはありました。

―大九監督の演出は、いかがでしたか?

広瀬さん 女性を主人公にした作品をよく撮られていることもあって、いろいろな感情が同時に来たときの女性の撮り方が繊細だなと思いました。自分の漫画が書籍化されることが決まったあと、家のなかで喜んでキャッキャしている最中にほかのことを思い出してシュンとしてしまうシーンでは長回しで撮っていただいています。そのおかげでリアルな反応がすべて映し出されているので、生っぽさが出ていてよかったなと。そういうところは、大九監督ならではだと感じました。

―劇中で印象的だったのは、広瀬さんがさまざまな料理をおいしそうに食べる姿。なかでも、お気に入りの一品といえば?

広瀬さん 本当にどれもおいしかったです。さばの味噌煮定食は実際に全部食べてしまいましたし、翌日むくんでしまうと知りつつも、深夜に我を忘れて酒盗カルボナーラをバクバクと食べてしまったことも。とにかく全部おいしくて、そればっかり食べていたので、撮影中はしっかりと太りました(笑)。

食べるシーンは朝から晩までずっと同じものばかりを食べていました。カニクリームコロッケのエピソードなら、1日中カニクリームコロッケしか摂取していない、なんてこともあったくらいです。

自分の好きなもので体を満たすのが心のケアになる

―事前に「いつか私が失恋したら、美味しいごはんをいっぱい食べよう! と思います(笑)」とコメントされていましたが、もし失恋したら何を食べたいですか? 

広瀬さん 超高カロリーのラーメンです(笑)。ちょっとやけ食いに近いかもしれないですが……。普段あまり食べないものなので、気持ちが落ち込んでいるときほど、自分が食べたいものをいっぱい食べるのがいいのかなと。というのも、「おいしい!」と思っている瞬間というのは、不幸な気持ちと一番かけ離れている気がするからです。自分の好きなもので自分の体を満たして幸せを感じたいですし、結果的にそれが心のケアにもつながると思います。

―ちなみに、いままでに失恋の痛みを癒してくれた食べ物があれば、教えてください。

広瀬さん これまでは食べ物よりも、時間に身を任せていましたが、今回のドラマでおいしいものを食べるというのはいい解決法だと学びました。

―以前、子どもの頃に憧れていた水嶋ヒロさんが結婚したとき、中学生で失恋を味わったとお話されていたこともありますが、そのときはどうやって元気になったんでしょうか。

広瀬さん 当時はまだ若かったので落ち込みましたけど、絢香さんの曲をずっと聴いていました(笑)。

―それはなかなか斬新な乗り越え方ですね(笑)。食べ物以外に、落ち込んだときの対処法はありますか?

広瀬さん 私はモチベーションを上げようとするよりも、リセットしようと考えるほうなので、まず半身浴をしてたくさん汗をかき、ストレッチをして体を温めたら、お酒を飲んで大熱唱して寝る、みたいな感じです。それがストレスの発散にもなっている気がします。

今日やるべきことは、その日のうちに終わらせる

―つまり、次の日まで持ち越さないと。

広瀬さん そうですね。基本的に、今日やらないといけないことはその日のうちに全部終わらせるようにしています。というのも、いかに翌日の朝ゆっくり起きられるかを大事に考えているので。悩みごとも人には言わずに、自分のなかで消化するか、流すかのどちらかなので、自分のルーティンをこなしてすっきりして寝るというパターンが多い気がします。

最後に決めるのは結局自分です。これは10代から仕事をするなかで徐々に培ってきた方法ではありますが、最近になってやっとできるようになりました。

―では、広瀬さんの勝負めしといえば? 

広瀬さん めちゃくちゃ好きなのは、お肉です。焼肉もステーキもしゃぶしゃぶも、どれも大好きですね。

―普段は自炊することが多いですか?

広瀬さん そうですね。普段は、現場と家の行き来が多いので、自分で作ったものをお弁当に詰めて持って行くのが一番の理想です。

―最近ハマっている得意料理があれば、教えてください。

広瀬さん 得意料理というのは、特にないんです。スーパーで安いものを買うか、気になる食材をバーッと買うか、事前に食べたいものを検索して材料を買うか、みたいな感じなので。できれば、食べる専門になって誰かに作ってもらいたいくらいです(笑)。

恋愛に関しては、意外とビビりなところもある

―食にまつわる忘れられないエピソードはありますか?

広瀬さん うちは家族全員スポーツをしていたこともあって、体づくりに関しては、母が人一倍厳しかったので、ものすごい量を食べさせられた記憶があります。ハンバーグとかおいしかったですけど、小学生のときからご飯を丼に5杯とか食べさせられていたので……。

あまりに量が多くて、一時は食事の時間が嫌になったこともありました(笑)。そんなこともありましたが、いまでは忙しいときに母が家に来て作り置きしてくれる料理がすごく楽しみです。

―本作では、ミキと花屋の青年が繰り広げる淡いラブストーリーも見どころです。登場する青年は、どこかつかみどころのないおとなしい男性でしたが、どう思われましたか?

広瀬さん ああいう不思議な空気感をまとっている人は、まず人間として興味を持ちますよね。何を考えているんだろうと。いつもは静かなトーンなのに、好きなお花のことになると急に熱量が上がるところも魅力的だと思います。

でも、あの2人はもどかしくて、小学生の恋愛を見ているような気分だったので、間近にいたら「早く行けー!」とか「2人でご飯に行ってきたら?」とかおせっかいなことを言ってしまいそうです(笑)。

―ということは、ご自身は思ったらすぐに行動できるタイプということでしょうか。

広瀬さん いや、意外とビビりなのでそんなに行動はしないほうです……。ただ、2人みたいに「見ているだけでいい」というのはないかなと。最低でも普通に話ができるレベルか、「ご飯に行こうよ」と言えるくらいにはするとは思います。

ほっこりした気分で、次の日もがんばってほしい

―ちなみに、もし友達に失恋した人がいたとして、広瀬さんならどんなアドバイスをされますか?

広瀬さん まずは、「おいしいご飯を食べたら元気になるよ」と言って食事に誘い、「趣味とか、恋愛以外のことで楽しみを見つけてがんばらない?」と声をかけれたらいいかなと。といいつつも、実は私は優しい言葉をかけるのがあまり得意ではないんですけどね(笑)。

―広瀬さんとご飯を食べるだけで元気になれそうです。それでは最後に、ananweb読者へ向けてメッセージをお願いします。

広瀬さん 最初にお話したように、失恋はマイナスイメージなものではありますが、この作品は「おいしいご飯を食べるだけで明日からがんばれるかも」と思わせてくれる心にもおいしい飯テロドラマとなっています。

1月といえば、ちょうど心機一転がんばろうという気持ちになっている時期でもあると思うので、そういう意味でもぴったりの作品かなと。ぜひ、夜寝る前に観てもらい、ほっこりとした気分で頭をリセットしてから、次の日もがんばってもらえたらと思っています。

インタビューを終えてみて……。

とても自然体で、笑顔が絶えない広瀬さん。明るい人柄が伝わってくるようなお答えばかりで、とても楽しい取材となりました。劇中では素の広瀬さんが垣間見れるシーンもあるので、そのあたりにもぜひ注目です。

おいしいご飯さえあれば、誰でも元気になれる!

食欲を刺激されてお腹は空くものの、心は温かい気持ちでいっぱいにしてくれるエピソードの数々。失恋に落ち込むことがあっても、何気ないひと言や人との出会い、そしておいしいご飯があれば、誰もが笑顔を取り戻せるはず。あなたを元気にしてくれる“失恋めし”を探してみては?


写真・山本嵩(広瀬アリス) 取材、文・志村昌美 

ストーリー

街のフリーペーパーで「失恋めし」という連載を持っている漫画家のキミマルミキ。街で見つけた失恋と、傷ついた心を癒すおいしいめしの物語を描いていた。

フリーペーパーを発行するSTO企画の面々とともに、新しいネタ探しに奮闘するミキは、街の人たちからさまざまな失恋話を耳にする。そんななか、ミキは不器用すぎる花屋の青年と出会うことに……。

続きが気になる予告編はこちら!

作品情報

『失恋めし』
1月14日(金)よりAmazonプライム・ビデオで独占配信
https://www.ytv.co.jp/shitsurenmeshi/
©木丸みさき・KADOKAWA/ytv