田代 わこ

スキャンダルを巻き起こした衝撃ヌードも…マン・レイのアート250点が大集結

2021.8.6
東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで『マン・レイと女性たち』が開かれています。写真や絵画、オブジェなど、さまざまなジャンルで優れた作品を残した芸術家マン・レイ。彼の“ミューズ”となった女性たちの作品とともに、作家の生涯をご紹介します!

どんな展覧会?

【女子的アートナビ】vol. 219

『マン・レイと女性たち』では、20世紀を代表する芸術家マン・レイ(1890-1976)の写真を中心に、絵画やオブジェ、ジュエリーなど約250点を展示。

マン・レイのモデル兼恋人にもなった美しい女性たちに焦点をあて、その当時のアートやファッションのスタイルにも触れながら、さまざまな作品が紹介されています。

人気モデルと熱愛!

アメリカ・フィラデルフィア生まれのマン・レイは、ニューヨークの美術学校で学んだ後、芸術活動を開始。油彩画を展覧会に出品したり個展を開いたりしますが、作品はなかなか評価されません。

1915年にフランス出身の芸術家、マルセル・デュシャンと知り合い、共同プロジェクトにも参画。その後マン・レイは渡仏し、パリでシュルレアリスム(超現実主義)の前衛作家たちと親交を深め、自らもシュルレアリストとして創作活動にはげみます。

また、記録写真などを撮るようになり、写真焼付作業中にカメラを使わず画像を焼き付ける技法を発見。「レイヨグラフ」と名付け、さまざまな写真を制作します。

1921年末、パリのカフェで人気モデルのキキ(本名:アリス・プラン)と出会い、即恋に落ちて同棲を開始。キキは藤田嗣治やキスリングなど当時の芸術家たちのモデルとして活躍していた美しい女性で、マン・レイは彼女の肖像写真や裸体写真を撮り続けます。

代表作《アングルのヴァイオリン》のモデルもキキ。女性の魅力を最大限に引き出すマン・レイの写真は評判となり、キキの名声も高まります。ただ、奔放で移り気だった彼女とは喧嘩することも多く、1929年、二人は同棲を解消しました。

再びモデルと交際…!

キキと別れて数か月後、マン・レイはリー・ミラーと出会います。リーは『ヴォーグ』誌のモデルをしたこともある知的で美しいアメリカ人女性。写真家を目指していた彼女は、マン・レイの助手兼モデルとなり恋人にもなります。

リーは「ソラリゼーション」という露光過度の状態を効果として使う写真技法を発見。マン・レイも、この技法で多くの作品を生み出します。

魅力的なリーは男性にモテモテで、ジャン・コクトーの映画にも出演。またもやマン・レイは嫉妬にかられます。さらにリーは別の資産家男性に惹かれはじめ、結局二人は1931年に別れました。

スキャンダルを巻き起こした衝撃ヌード

このころ、マン・レイは女性芸術家たちの裸体写真も多く撮影しています。そのひとつが、スイス人画家メレット・オッペンハイムを撮った作品《エロティックにヴェールをまとう(メレット・オッペンハイム)》。版画インクでモデルの手と腕を黒く汚して撮影された写真は官能的で、当時スキャンダルを巻き起こします。

展覧会の監修者、巖谷國士さんは同作品について図録で次のように述べています。

「スキャンダルを呼んだほど鮮烈な連作ですが、ポルノグラフィー的な要素はなく、冷たく硬い機械に対比された裸体像に、マン・レイ特有のクールで客観的なエロティシズムがあらわれています」

会場には、ほかにもメレットの裸体写真がいくつか展示されています。どれも嫌悪感をもよおすいやらしさはなく、クールで幻想的な美しさを感じる作品ばかり。マン・レイに撮ってもらいたいと思う女性も多かったのではないかと思います。

実際、マン・レイは画家としての仕事よりも肖像写真の依頼のほうが多く、ファッション写真も手がけるようになります。展示室では、モード界の著名人、ココ・シャネルの肖像写真やシャネルのドレスなども見ることができます。

ダンサーと交際、妻となる女性との出会い

1934年、マン・レイはパリのダンスホールで若く美しいダンサーのアディ・フィドランと知り合います。明るく快活で野心のないアディとの交際は順調だったようですが、戦争が二人を引き裂きます。

1940年6月、パリにとどまる選択をしたアディを残し、マン・レイは船でニューヨークに脱出。しかしアディと離れてわずか数か月後、50歳のマン・レイは、ハリウッドで29歳のジュリエット・ブラウナーと出会い、恋に落ちます。その後二人は結婚。ジュリエットとは最期まで添い遂げることになります。

晩年は再びパリに渡り、写真家や文筆家、画家として活動。最後まで絵のほうは売れませんでしたが、写真家としてヴェネチア・ビエンナーレで金獅子賞を受賞。さらにフランス政府から芸術功労賞を受けるなど、高く評価されました。最後はパリで死去。享年86歳でした。

女性が見たくなるアート

マン・レイは恋人だけでなく、女性芸術家やファッション・モード界の女性、映画女優など多くの女性の姿を作品に残しました。モノクロで撮られたヌードや肖像写真はどれもクールビューティで、女性が見たくなるものばかり。

オブジェやジュエリーもあり、展示室にいると当時のパリにいる気分になれます。

20世紀アートの世界を存分に味わえる『マン・レイと女性たち』は9月6日まで開催。

取材・文:田代わこ

Information

会期    : ~9月6日(月) ※全日程日時予約制
会場    :Bunkamura ザ・ミュージアム
開館時間  : 10:00-18:00(入館は17:30まで) 毎週金・土曜日は20:00まで(入館は19:30まで)
観覧料   :一般¥1,700、大学生・高校生¥ 800、中学・小学生¥ 500

ウェブサイト: https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/21_manray/ 
※最新情報は、美術館のウェブサイトをご確認ください。