コン・ユとパク・ボゴムが初共演!韓国界のスターが現場で見せた素顔
『SEOBOK/ソボク』
【映画、ときどき私】 vol. 398
かつて情報局でエージェントだったギホンは、脳腫瘍を患い、余命宣告を受けていた。死を目前にしていた彼に舞い込んだ任務は、国家の極秘プロジェクトで誕生した人類初のクローンであるソボクを護衛すること。しかし、任務早々に襲撃を受けてしまう。
なんとか逃け切ったギホンとソボクは、危機的な状況のなかで衝突を繰り返しながら徐々に心を通わせていくのだった。ところが、人類の救いにも、災いにもなり得るソボクを手に入れようと、闇の組織の追跡はさらに激しくなっていくことに……。
韓国では初登場1位に輝くなど、大きな注目を集めている本作。今回は、その舞台裏について、こちらの方にお話をうかがってきました。
イ・ヨンジュ監督
2012年に、恋愛映画としての歴代最高興行を達成する大ヒットを記録した『建築学概論』で知られているイ・ヨンジュ監督。9年振りの監督作となる本作で、韓国映画史上初となるクローンを題材にしたSFに挑戦しています。そこで、作品に込めた思いや現場の様子などについて、語っていただきました。
―本作の構想はいつ頃、どのようなきっかけから生まれたものでしょうか?
監督 企画を立ち上げたのは、2013年頃。その当時は、私の姉ががんの宣告を受けて闘病していたのですが、姉が亡くなってしまい、私と家族は大きな衝撃を受けていたときでもありました。本当につらくて、この映画に漂っているような空気感が家中に漂っているような感覚を味わうことに。
そこから抜け出すのにはかなり時間がかかりましたが、抜け出したいまでもまだ考え続けていると言えるかもしれません。そういった個人的な理由からも、この映画は絶対に撮りたいと思っていました。
この作品は、自分にとって意味のある挑戦になった
―劇中では「永遠の命」や「死の恐怖」が描かれていますが、それによって誰もが「生」について考えさせられるように感じました。監督が作品に込めた思いについてもお聞かせください。
監督 もちろん、以前から人はいつか死ぬとわかってはいましたが、どこかで自分とは関係ないことだと思って過ごしていたところがあったと思います。それが姉の死を経験してから、死というのは身近にある問題だと感じるようになりました。昔は目を背けていたところもありましたが、この映画を撮ることでようやく正面から見ることができるようになったのではないかなと。
そのなかで、いつまで怖がっていなければいけないんだろうと考えたときに、「死は明確にあるものであり、寿命は受け入れるしかない運命でもある。だから、必ずしも怖がる必要はないのではないか」ということに気がつきました。
そんなふうに、死をめぐる恐怖について見つめ直すうえで、この映画を作ることは私にとって癒しになったようにも感じています。もちろん、こういう映画を撮ることに対する怖さはありました。でも、それ以上に死を見つめることの大事さを痛感していたので、勇気を出して撮ることを決意したのです。いままで逃げていたことと向き合うことによって、本来の自分を発見できたところもあったかもしれません。私にとっては、意味のある挑戦だったと思っています。
人間は欲望のために、限界を超えようとしている
―今回、クローンをモチーフとして選んだのはなぜですか?
監督 当初は、突然変異してしまったキャラクターなど、ほかの設定も考えていましたが、韓国では10年ほど前に幹細胞が作られて非常に大きな社会問題になったことがありました。そこからクローンを思いついたのです。リサーチをして知ったのは、倫理的な観点から国際的に規制されてはいますが、幹細胞からクローンを作ることは技術的にはあまり難しくはないということ。もしかしたら、どこかで誰かが作っているのではないか、とも言われているそうです。
そういったことを調べていくなかで、クローンは私のなかで身近なものだと感じるようになりました。そして、私が関心を向けたのは、「クローンは、ある意味人間が作った“神”なのではないか」という考え。人間がクローンを作り出そうとすることは、“神の領域”につながっていると思われていることがわかりました。とはいえ、人間は自らの欲望を満たすために限界を超えようとするものの、結局は自分でも制御できない状況を生み出してしまっているように感じています。
―そこには、今後に対する危機感も監督のなかにはあるのでしょうか?
監督 『ターミネーター』のような映画でもすでに描かれていますが、将来的にはAIでも同じことが起きてしまうかもしれないという危惧はあります。つまり、人間が自分たちの領域を超えようとすることで、より大きな問題へと発展してしまうのではないかという心配です。
ただ、そういう恐怖をつねに抱えているからこそ、私は本作の舞台を未来ではなく、現在にしたいと思いました。そして、現時点で人間を超えた神のような存在には、クローンが当てはまると感じて、このモチーフを選ぶことにしたのです。
理想の2人に演じてもらえて、運がよかった
―では、コン・ユさんとパク・ボゴムさんをキャスティングした理由を教えてください。
監督 最初に伝えておきたいのは、コン・ユさんとパク・ボゴムさんは、監督であれば誰もがキャスティングしたい俳優であるということですね(笑)。なので、おふたりともに出演していただくことができて、今回私は本当に運がよかったと思っています。
コン・ユさんは、以前から「いつか自分の作品に出演してほしい」とずっと頭のなかに置いていた俳優のひとり。俳優としてもすばらしいですし、主演としても影響力のある方なので、今回の脚本ができたときはすぐに渡したいと思いました。
そのあと、ソボクの役にぴったりだと思って浮かんだのがパク・ボゴムさん。もしも断られてしまったら、新人から探そうかと考えていたほど、私のなかではほかに代案はないくらいでした。結果的に、私が理想としていたおふたりにそれぞれの役を演じていただけて、光栄に思っています。
―おふたりは初共演でしたが、現場での様子はいかがでしたか?
監督 コン・ユさんは大人で、すごく優しい方なので、現場にいてくださって本当にありがたかったです。彼は私よりも年下ですが、あるときは兄のようで、またあるときは友達のように接してくれました。パク・ボゴムさんとは年が離れていますが、コン・ユさんは「自分がそのくらいの年齢だったときを思い出す」と言って、本当によく面倒を見てくださったので、パク・ボゴムさんもコン・ユさんのことをすごく慕っていましたね。
特に、パク・ボゴムさんにとっては、これほど大きな役を演じるの初めてだったので、責任感からかなり緊張していたんです。そんなときに、コン・ユさんがたくさん話しかけて、緊張をほぐしてくれていました。本来であれば、監督の私がすべきことまでコン・ユさんがやってくれたと言ってもいいかもしれません(笑)。
彼のおかげで現場の雰囲気はとても和気あいあいとしたものになりましたし、スタッフともいい関係を築いてくれました。撮影現場がとても満足のいくものになったので、おふたりには本当に感謝しています。
誠意を込めて作った作品を楽しんでほしい
―撮影以外にも、おふたりとの印象的なエピソードがあれば、教えていただけますか?
監督 コン・ユさんとはいまでもよく連絡を取っていて、釣りにハマっている彼からは大きな魚を取ったときにいつも写真が送られてきます。「今度大きな魚を釣ったら、宅配で届けますね」と言ってくれたので、いまは魚が届くのを待っているところです(笑)。
パク・ボゴムさんは、いま入隊されているので休暇で出てきたときに電話で何度か話せたくらいですが、言葉遣いが変わっていて驚きましたね。以前は柔らかい感じの話し方でしたが、いまは軍隊式の堅い感じになっていましたから。除隊されたら、また一緒にご飯でも食べに行けたらいいなと思っているところです。
―それでは最後に、観客へのメッセージをお願いします。
監督 このたび、『SEOBOK/ソボク』が日本でも公開を迎えることになりました。この映画は、時間をかけて準備をし、私の誠意を込めて作った作品なので、ぜひ楽しんでご覧いただけたらうれしいです。
特別なパワーに惹きつけられる!
観る者をスクリーンに釘づけにしてしまう俳優陣の熱演と、映像の放つ圧倒的なエネルギーに惹きつけられる本作。背景にあるのは壮大な物語ではあるものの、ギホンとソボクの絆が生み出す人間ドラマと2人が迎える結末には心が揺さぶられるのを感じられるはずです。
取材、文・志村昌美
圧倒的な予告編はこちら!
作品情報
『SEOBOK/ソボク』
7⽉16⽇(⾦)新宿バルト9ほか全国ロードショー
配給:クロックワークス
https://seobok.jp/
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