田代 わこ

日本の文化を守った! 世界に3碗しかない“奇跡の茶碗”も「三菱創業家の至宝」一挙公開

2021.7.9
三菱一号館美術館で『三菱創業150周年記念 三菱の至宝展』が開かれています。三菱を創業した岩崎家が4代にわたり守り育ててきた美術工芸品など約100点が一堂に集結。世界に3碗しかない“奇跡の茶碗”も登場します!

どんな展覧会?

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【女子的アートナビ】vol. 213

『三菱創業150周年記念 三菱の至宝展』では、三菱を創業した初代の岩崎彌太郎(1835-1885)から4代社長の小彌太(1879-1945)までの岩崎家4代の社長たちが築き上げ、現在は静嘉堂、東洋文庫所蔵となっている国宝12点、重要文化財31点を含むコレクションと三菱経済研究所の所蔵作品をあわせた約100点を紹介。

完品は世界に3碗しかない“奇跡の茶碗”、国宝《曜変天目(稲葉天目)》をはじめとした美術工芸品から、絵画、刀、歴史書に至るまでの幅広いジャンルにわたる貴重な作品を見ることができます。

日本の文化を守った…!

岩崎家が本格的に美術収集をはじめたのは、2代目社長、彌之助(1851-1908)のとき。彼は若いころから学問や研究、芸術文化に興味をもち、アメリカにも留学。帰国後は兄の彌太郎が築いた三菱商会に入り、事業をさらに発展させながら、芸術家や研究者たちとも交流していきます。

当時、明治維新後の日本では西洋文化をさかんに取り入れ、日本や東洋の文化は軽んじられていました。廃仏毀釈の影響を受け、日本の重要な文化財が海外に流出していたのもこの時期です。

芸術文化を深く愛していた彌之助は、日本の文化財が散り散りになってしまうことを防ぐため、自ら積極的に美術品を収集し、保護していきます。

また、彌之助は、経済的に余裕のある人間が文化や学術を保護し、社会に還元していく使命があるという考えをもっていました。

単なるお金持ちの道楽ではなく、社会貢献活動のひとつとして美術品を集めていき、それらを収蔵するために静嘉堂文庫を創設。息子の小彌太がコレクションを拡充させ美術庫を築き、財団法人静嘉堂を設立しました。現在、静嘉堂には国宝7点、重要文化財84点を含む6,500点の東洋古美術品が収蔵されています。

鳥肌が立つほど美しい…! 奇跡の国宝

そんな彌之助父子がつくりあげた静嘉堂のなかで、もっとも有名なのが国宝《曜変天目(稲葉天目)》。茶碗の中がまるで宇宙空間のようで、鳥肌が立つほど美しい作品です。

中国福建省の建窯でつくられ、焼成のとき“偶然に”青色や虹色に輝く光彩が現れた茶碗を曜変天目といいます。完全な形で存在するものは世界に3碗しかないという大変貴重な作品です。(ちなみに、3碗とも日本にあり、すべて国宝に指定されています)

静嘉堂の曜変天目が「稲葉天目」と呼ばれているのは、この茶碗が3代将軍徳川家光から乳母の春日局に下賜され、その後稲葉家へ伝えられたため。歴代の所有者が超一流という点も、この作品の魅力のひとつです。

アジア最大級の研究図書館もつくった…!

本展には、東洋文庫の所蔵品も出展されています。

東洋文庫とは、彌太郎の息子で3代社長の久彌(1865-1955)が1924年に設立した、東洋学分野の研究図書館。若いころから読書家だった久彌は、東洋の古典にも親しんでおり、美術品ではなく文献資料を収集し活用することで社会貢献する道を選んだのです。

現在、東洋文庫は約100万冊を所蔵するアジア最大級の東洋学術研究図書館となっています。

社会貢献活動を明治のはじめから実践してきた岩崎家。彼らが守り、現代まで大切に受け継がれてきた至宝の数々をぜひご覧になってみてください。

取材・文:田代わこ

Information

会期    : ~9月12日(日) *展示替えあり
前期:8月9日(月・振休)まで/後期:8月11日(水)から
会場    :三菱一号館美術館
開館時間  : 10:00〜18:00 ※入館は閉館の30分前まで ※夜間開館日あり。開館日、営業時間は変更の可能性があります。詳細は公式サイトをご確認ください。
休館日   :月曜日 展示替えの8月10日(火)(ただし、祝・振休の場合、7月26日、8月30日、9月6日は開館)
観覧料   : 一般¥1,900、高校・大学生¥1,000、高校生¥900、小・中学生無料
※マジックアワーチケット:毎月第2水曜日17:00以降に限り適用 :¥1,200
 ウェブサイト: https://mimt.jp/kokuhou12/