志村 昌美

共演者とリアルカップルに…フランスの注目女優が語る愛に必要なこと

2021.5.13
ステイホームが続くなか、ときには別世界に行ってしまいたいと思うことも多いのでは? そんな気分のときにオススメしたい映画は、主人公が“もうひとつの世界”に迷い込むことで真実の愛を知るファンタジック・ラブストーリー『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』。今回は、本作の見どころについてこちらの方にお話をうかがってきました。

ジョセフィーヌ・ジャピさん

【映画、ときどき私】 vol. 377

セザール賞やリュミエール賞で有望若手女優賞にノミネートされたことがあり、フランス映画界でも注目度が高い女優ジョセフィーヌさん。フランスの名門校を卒業した経歴を持つ才色兼備な女性としても知られています。

弾けるようなキュートな笑顔が魅力のジョセフィーヌさんが演じたのは、主人公ラファエルの妻でヒロインのオリヴィア。元の世界ともうひとつの世界(パラレルワールド)という2つの世界を舞台に描かれる本作で、前者では小さなピアノ教室を開いている妻、そして後者ではラファエルと出会わず、ピアニストとして成功しているという、それぞれ違う立場に置かれる女性を見事に好演しています。

この作品がきっかけで相手役のフランソワ・シビルさんと交際に発展したことでも話題となっていますが、今回は現場での様子や自身の恋愛観について語っていただきました。

―本作では、同じ人物でありながら設定に応じて2パターンで演じるという難しい役どころに挑戦されています。ご自身のキャリアのなかで、この役との出会いはどのようなものになりましたか?

ジョセフィーヌさん 劇中で私が演じたのは、同じルーツを持ちながら2つのパーソナリティを持っている女性。ひとりは人生で成功していて、もうひとりは自分がやりたいことをちゃんと認められていない女性でしたが、私にとっては、そんなふうにキャラクターを演じ分ける経験は初めてのことでした。

しかも、ロマンティック・コメディの作品に出演するのも初めてだったので、いろいろと試行錯誤することは多かったですね。でも、それぞれのオリヴィアをきちんと存在させることに専念できたので、非常に意義深い演技に挑めたと思っています。

周りから自然とインスパイアされる現場だった

―相手役を務めたフランソワ・シビルさんとの初共演はいかがでしたか?

ジョセフィーヌさん 実は彼とはもっと前にほかの作品で共演するはずだったんですが、そのときは企画自体が飛んでしまったんです。予定されていた作品も今回と同じようにラブストーリーで、カップルの役を演じる予定でした。

話が一回流れたにもかかわらず、こうしてまた同じような役どころでオファーがきたことに関しては、うれしいと同時に驚きもありましたね。現実のほうがフィクションに引き寄せられているようなところがあるんだなと。彼と一緒に演技をすることは、とても楽しかったです。

―満を持しての共演だったんですね。実際に撮影を通して、フランソワさんから刺激を受けたことはありましたか?

ジョセフィーヌさん これはフランソワだけでなく、監督のユーゴ・ジェランや共演者のバンジャマン・ラヴェルネにも言えることですが、この現場では家族のような関係を形成できたように感じました。監督にしても俳優にしても、みなさん称賛されるべき才能を持っている方々ですからね。自然な形で周りからインスパイアされました。

そのまま真似をするという意味ではありませんが、彼らの演じ方をどうやって自分のものにできるのかを考えることもあったので、私にとっては素晴らしい経験になったと思います。

愛も友情も成就したらゴールではない

―本作は、若くして結婚した監督の実体験から着想を得たお話だそうですね。この物語を通して、ジョセフィーヌさんの恋愛観や結婚観に変化はありましたか?

ジョセフィーヌさん 確かに、これは監督と奥さんの話から生まれた物語なので、とても親密な内容ですよね。実際、監督が感じた不安や恐怖、そして喜びなどが盛り込まれていますから。

ただ、私自身の考えはそんなに変わってはいないと思います。なぜなら、あくまでもこれは自分が演じるためのストーリーなんだと距離を置いていたからです。とはいえ、「私の人生に起きたことではなくてよかった」と感じた部分はありましたが(笑)。でも、この作品を通して気がついたことは、恋愛でも結婚でも友人関係においても、愛する人と一緒に支え合っていく姿はとても美しいんだなということでした。

―ラファエルは仕事熱心ではありますが、恋愛においても仕事においても自己中心的なところがある人物だと思いました。それがいろいろな経験をすることで相手を思う愛を知るわけですが、ジョセフィーヌさんが人を愛するうえで大切にしていることはありますか?

ジョセフィーヌさん うまくは言えませんが、相手のことを考えて、相手に興味を持つというのは、人を愛するうえではとても大切なことだと思います。愛も友情も一度成就したからと言って永遠に続くと思ったら大きな間違いですから。自分が相手に対しておざなりな扱いをすれば、人は離れていくのは当然のことですよね。

この作品では自分にとって大切な人にどう対処するべきかについて描かれていますが、私もその部分についてはグッときましたし、とても感動しました。

大切なのは、好きな人に囲まれて過ごす時間

―ちなみにジョセフィーヌさんがいま生活のなかで大切にしているのは、どんなことですか?

ジョセフィーヌさん みなさんもご存じのように、いまの私たちは特別な状況のなかで生きていますよね。だからこそ、私が楽しいと感じるのは、自分の好きな人たちに囲まれて過ごす静かなひととき。そういった時間をシェアできることが喜びになっているんだと思います。

あとは、イラストを描いたり、料理をしたりするのも好きな時間。いまのこういう状況のなかでも、最大限楽しめるように心がけています。もちろん、人生にはほかにも素敵なことはたくさんありますが、いまはそういったことが私にとっては大切な時間です。

―それでは、もし自分がラファエルのようにパラレルワールドに行ったとしたら、やってみたいことはなんですか?

ジョセフィーヌさん 実は、そういうことを実際に考えたことがあるんですよ! 私がやってみたいことは2つあって、1つ目はシェフになること。そして、2つ目は女性パイロットになることです。でも、女優という仕事では、すでにパラレルワールドを生きているような感覚を味わえているところがあるので、そういう意味では、ラッキーかもしれないですね。

インタビューを終えてみて……。

今回はオンラインでの取材でしたが、スクリーンを通してでも魅力が伝わってくるジョセフィーヌさん。思わず何度も「かわいい」とつぶやいてしまいました。本作で出会ったフランソワさんが恋に落ちるのもうなずけます。そんなチャーミングなジョセフィーヌさんが演じ分けた2人のオリヴィアは必見です。

愛とは何かを考え直すチャンスをもらえる

誰の人生においても繰り返されている大切な人との出会い。いてくれることが当たり前になってしまうときもあるものの、本作ではそれがどれほど自分にとってかけがえのないものかを気づかされてくれるはず。周りの人たちに対する思いを改めて振り返る時期でもあるいまこそ、ぴったりの1本です。


取材、文・志村昌美

ストーリー

高校時代にひと目惚れをして結婚したラファエルとオリヴィアは、結婚10年目を迎えていた。いまや子どもたちに人気のベストセラーSF作家となったラファエルと、小さなピアノ教室を開きながらピアニストの頂点を目指すオリヴィア。仕事ばかりのラファエルに対して、オリヴィアは孤独を抱えており、2人はついに大喧嘩をしてしまう。

翌日、人気作家の特別授業として中学校を訪れたラファエルだったが、周囲の反応がおかしいことに戸惑いを覚える。そして、自分がごく普通の中学校の教師で、オリヴィアが人気ピアニストという立場が逆転した“もうひとつの世界”にいることに気がつくのだった。愛を知ったラファエルが下す決断とは……。

胸がトキメク予告編はこちら!

作品情報

『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』
全国順次公開中
配給:シンカ
https://love-second-sight.jp/

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