絵画は私の命…描くことに人生をかけた天才画家の凄絶アート
どんな展覧会?
【女子的アートナビ】vol. 193
『ベルナール・ビュフェ回顧展 私が生きた時代』では、フランスの画家ベルナール・ビュフェ(1928‐1999)の油彩画を中心とした絵画作品約80点を紹介。展示されている作品は、すべて静岡県にあるベルナール・ビュフェ美術館のコレクションです。
黒い線と暗いトーンで描かれたビュフェの具象画は、第二次世界大戦後の不安な時代の空気と共鳴し、フランスだけでなく世界の人々の心をつかみました。現在もコロナ禍で世の中が不安定になっていることから、彼の絵はまさに今の時代の空気にもあてはまり、鑑賞者の心に響きます。
ナイーブなイケメン!
ベルナール・ビュフェとは、どんな画家だったのでしょう。会場に写真が展示されていますが、かなりイケメンです。
1928年にパリで生まれた彼は、ナチス・ドイツの占領下で名門エコール・デ・ボザール(国立高等美術学校)に通い、20歳で若手画家の登竜門といわれる「批評家賞」を受賞。その後、世界各地で個展が開かれます。
ナイーブで非社交的だったビュフェは、当時パートナーだったピエール・ベルジェにマネージャー的な仕事をしてもらい、自身は絵画制作に専念。南仏プロヴァンスに滞在して、著名な小説家ジャン・ジオノや詩人ジャン・コクトーとも親交を深めていきます。
ベルジェのサポートでビュフェは活躍の幅を広げていきましたが、1958年、彼と別れてファッションモデルで歌手のアナベルと結婚します。会場では、美しいアナベルをモデルにした作品も見ることができます。
いっぽうベルジェは、若きデザイナーのイヴ・サン=ローランのパートナーとなり、ファッション界で活躍しました。
上記画像は、ビュフェを取り巻く人々の相関図。『悲しみよこんにちは』で知られる小説家フランソワーズ・サガンとも交流がありました。
必見! ピエロの絵
20世紀半ば以降、美術界ではジャクソン・ポロックなどの抽象絵画が主流となっていきますが、ビュフェは人物や動物、建物などの具象画を描きつづけます。さらに1960年代に入ると、初期の地味な色調ではなく鮮やかな色を使った作品も増えていきます。
そのなかのひとつ、展覧会のメインビジュアルにも使われている作品が《ピエロの顔》。真っ赤な背景に、シルクハットを被った男が描かれています。
ベルナール・ビュフェ美術館の学芸員 雨宮千嘉さんによると、この絵は「画家自らピエロのメイクをして、自分の心を投影させて描いた」とのこと。楽しい道化師であるピエロのイメージとはほど遠く、見ていると少し不安になる絵です。雨宮さんの話では、この絵を見るために美術館を何度も訪れるファンもいるそうです。
絵画は私の命…
1973年に静岡のベルナール・ビュフェ美術館が開館し、1993年にはフランス政府からレジオン・ドヌール勲章を授与されるなど、経歴を見ると画家として幸せな人生を送っていたように思えますが、ビュフェは制作の苦悩を抱えていたようです。
さらに、晩年になるとパーキンソン病を発症。絵筆をとることができなくなり、1999年、自ら死を選びました。最終章の解説には、「絵画は私の命です。これを取り上げられてしまったら生きていけないでしょう」という画家の重い言葉が記されています。
展覧会は1月24日まで開催。お出かけの際には公式サイトで最新情報をご確認ください。
取材、文・田代わこ
Information
会期: ~2021/1/24(日)
※1/16(土)・17(日)・23(土)・24(日)の4日間に限り【オンラインによる入場日時予約】が必要(当日予約枠に余裕がある場合、予約なしで入場可能)
開館時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)
会場:Bunkamuraザ・ミュージアム
観覧料:一般¥1,600、高校・大学生:¥1,000、小・中学生:¥700
公式サイト: https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/20_buffet/
※本記事の写真は、プレス内覧会で主催者の許可を得て撮影しています。