田代 わこ

グロい人面スイーツも!…穴場カフェが楽しめる都内の美術館3選

2020.11.3
緑に囲まれたオープンテラスがあったりドラマのロケに使われたり、美術館のカフェは知る人ぞ知るおしゃれな場所。展覧会のあとに訪れると、その楽しみは倍増します。今回は、食&芸術の秋に訪れたい都内の美術館を3つご紹介!

東京都庭園美術館『生命の庭』

【女子的アートナビ】vol. 186

まずは、東京都庭園美術館。アール・デコという装飾様式で統一された建物も見どころのひとつとなっているこの美術館は、目黒駅から徒歩圏内にありながら、周りは緑豊かな庭園に囲まれている最高の立地。四季折々の自然と芸術作品を一緒に楽しめるぜいたくなスポットです。

こちらで現在開催されているのが、現代アートの展覧会『生命の庭―8人の現代作家が見つけた小宇宙』。内装もおしゃれな洋館のなかで、日本を代表する8人の作家(青木美歌、淺井裕介、加藤泉、康夏奈、小林正人、佐々木愛、志村信裕、山口啓介)による絵画や彫刻、インスタレーションなどが展示されています。

展覧会を担当した学芸員の浜崎加織さんによると、アール・デコ様式の建物と現代美術は相性がよく、この場所でしか体験することのできない展示空間ができるとのこと。自然に囲まれたなかで、自然と人間の関わりをテーマにした展覧会をしたいということで、今回の企画展が実現したそうです。

思わず悲鳴が…

例えば、山口啓介さんの《花波ガラス》は、透明のカセットにドライフラワーや種子などの植物を入れ樹脂で固めたものが積み上げられている作品。見た瞬間、あまりに美しくて悲鳴をあげそうになりました。背景にある庭園の緑とカラフルな植物が一緒に目の中に飛び込んできて、夢の世界のような光景を生み出しています。

もうひとつ、悲鳴をあげそうになったのは、加藤泉さんの立体作品《無題》。人面飛行機のような、ちょっとグロい造形物で、上部にプラモデルの飛行機がたくさん乗っています。この美術館のなかでも特に壮麗な空間に展示されているので、不気味さと美しさのギャップにしびれます。

加藤さんは、人型に似せた彫刻や絵画などを制作されている作家さんで、今展では美術館の入り口をはじめ、会場内のさまざまな場所に作品が展示されています。どれも、一瞬ギョッとするシュールな造形ですが、見慣れてくるとカワイイと思える不思議な魅力があります。

カフェには人面スイーツが…

東京都庭園美術館に併設されているのは、『café TEIEN(カフェ庭園)』。こちらは、美術館の入場料を払った人だけが入れる穴場カフェ。庭園に面したガラス張りの明るい店内で、スイーツやドリンク、軽食も楽しめます。

現在、『生命の庭』にちなんで、8人の現代作家とコラボしたスイーツを展開中です。そのなかでアヤシイ雰囲気を出しているのが加藤泉さんの作品をイメージした「人型シュー」(税込¥660)。あのシュールな人面をスイーツにしてしまうなんて、カフェ庭園さん、ステキです!

府中市美術館『日本の美術を貫く 炎の筆《線》』

続いてご紹介するのは、府中市美術館。こちらも自然豊かな都立府中の森公園のなかにあり、さわやかな秋の散歩と芸術鑑賞を一緒に楽しめます。

現在開催されている展覧会は『日本の美術を貫く 炎の筆《線》』。作品のなかにある「線」にスポットをあて、縄文時代の火焔土器から令和の最新アートまで、絵画、刀剣、書、漫画、工芸品など幅広いジャンルの作品が紹介されています。

例えば、メインビジュアルにも使われている丸田恭子さんの油彩画《マイナスの質量》は、線の力強さが目の前に迫ってくるようなインパクトのある作品。じっと見ていると近未来の異世界へ連れていかれそうな気分になります。

また、椛田ちひろさんの2点も迫力ある線作品です。どちらも紙の上にボールペンで描いたもので、近くで見ると無数の線がびっしりと引かれていてちょっと感動します。細い線が集結したパワフルな作品です。

森を感じられるカフェ

府中市美術館内にあるカフェの名は、『府中乃森珈琲店』。府中の森などをイメージしたオリジナルのコーヒーや日替わりランチなどもあり、美術館を見たあとに立ち寄るのにぴったりです。上の写真は、お店イチオシのドリンク「自家製ジンジャーカフェラテ」(税込¥650)。スパイスの効いたチャイのような味を楽しめます。

日差しの降り注ぐ店内もいいですが、秋の晴れた日は緑豊かなテラス席がおすすめ。ずっと座っていたくなる、居心地のいいカフェです。

三菱一号館美術館『開館10周年記念 1894 Visions ルドン、ロートレック展』

最後にご紹介するのは、東京・丸の内にある三菱一号館美術館。オフィスビルに囲まれた都心の角地に建つ赤レンガの瀟洒な建物です。三菱が1894年にジョサイア・コンドルの設計で建てた「三菱一号館」を復元し、2010年に美術館として開館しました。

現在開催中の展覧会は、《開館10周年記念 1894 Visions ルドン、ロートレック展》。三菱一号館の建設年である1894年にフォーカスし、その前後の時代に活躍した画家たちの作品を展示しています。

特に、タイトルにもなっているルドンとロートレックの作品群は見ごたえ抜群。三菱一号館美術館が所蔵する作品に加え、本展の共同企画である岐阜県美術館所蔵のコレクションも展示されています。

本展では油彩画や版画など常時約120点を超える作品が集結していますが、なかでも目を引くのがルドンのパステル画《グラン・ブーケ(大きな花束)》。フランスのブルゴーニュ地方にあるロベール・ド・ドムシー男爵の城館の食堂を飾るために依頼された装飾画のひとつです。

描かれている花々はまるで奇妙な生き物のようで、ちょっと妖艶な雰囲気。色彩も美しく、いつまでも見ていたくなる作品です。

(前期・後期で展示替えがあります)

ドラマや雑誌に出てくるカフェ

三菱一号館美術館に併設されているカフェ・バー『Café 1894』は、ドラマや雑誌の撮影で何度も使われているおしゃれな場所。クラシカルな空間は、銀行営業室として使われていた場所を復元したもので、落ち着いた内装のなかで食事やスイーツを楽しめます。

展覧会とタイアップしたメニューも魅力のひとつです。今のおすすめは見た目も豪華な「おとなのグラン・ブーケ」(税込¥990)。作品を見たあと、余韻にひたりながらいただくと格別です。

秋は美術館へ!

秋におすすめの美術館3選、いかがでしたか。コロナの影響で外国から作品が借りられなかったり、展示内容が変更となったりしている展覧会もありますが、どの美術館も所蔵コレクションなどを使って工夫しながら楽しい企画展を開催しています。ぜひこの秋は、美術館に足を運んで本物の作品に触れてみてくださいね!

Information

『生命の庭ー8人の現代作家が見つけた小宇宙』
会期:~ 2021年1月12日(火)
休館日:毎月第2・第4水曜日(10/28、11/11、25、12/9、23) 年末年始(12/28-1/4)
開館時間:10:00–18:00 *入館は閉館の30分前まで
会場:東京都庭園美術館(本館+新館)
観覧料:一般¥1,000、大学生(専修・各種専門学校含む)¥800、中学生・高校生¥500、65歳以上¥500
展覧会公式サイト: https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/201017-210112_GardenOfLife.html

『日本の美術を貫く 炎の筆《線》』
会期:~11月23日(月)
休館日: 11月23日を除く月曜日
開館時間:10:00–17:00 *入館は閉館の30分前まで
会場:府中市美術館
観覧料:一般¥500、高校生・大学生¥250、小学生・中学生¥100
展覧会公式サイト: https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/

『開館10周年記念 1894 Visions ルドン、ロートレック展』
会期:~2021年1月17日(日)※展示替えあり ※本展覧会の会期は変更となる場合があります
休館日:月曜日*と展示替えの11月24日(火)、25日(水)、年末年始の12月31日(木)、2021年1月1日(金)
*月曜日が祝日の場合と11月30日(月)、12月28日(月)、2021年1月4日(月)は開館
開館時間:10:00〜18:00(祝日を除く金曜と会期最終週平日、第2水曜日は21:00まで)※入館は閉館の30分前まで
会場:三菱一号館美術館
観覧料(音声ガイド付き):一般¥2000、高校生・大学生¥1000、小学生・中学生は無料
展覧会公式サイト: https://mimt.jp/visions/