好きなこと、話そ!

田代 わこ

ざわざわしています…学芸員が注目した実力派作家の衝撃アート

2020.7.3
自粛生活も緩和され、各地で少しずつ展覧会もはじまっています。久々の本連載では、東京・京橋のアーティゾン美術館で開催中の展覧会『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×鴻池朋子 鴻池朋子 ちゅうがえり』をレポート。国内外で活躍する現代美術家、鴻池朋子さんの作品と19世紀フランス絵画がコラボした展示室の様子や、学芸員さんのお話もご紹介!

アーティゾン美術館、再開!

【女子的アートナビ】vol. 177

ブリヂストン美術館を前身とするアーティゾン美術館が誕生したのは2020年1月。館名も建物も新しくなったこちらの美術館では、「創造の体感」というコンセプトのもと、石橋財団コレクションの多彩な作品群を個性的な企画展で紹介しています。

1月に開催された開館記念展のあと、緊急事態宣言の発出によりしばらく休館していましたが、6月23日から3フロアで待望の展覧会がスタート。

本記事では、6階展示室で開催中の『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×鴻池朋子 鴻池朋子 ちゅうがえり』をレポートします!

見たことのない空間が…

展示室に入ると、目の前に不思議な空間が現れます。一般的な展覧会の入り口に置いてある「作品リスト」が見当たらず、また順路案内もないので、どこから見たらよいのか一瞬戸惑います。(※作品リストは展示室出口にあります!)

でも、すぐに「どれを見ようかな~」とワクワクした気分に変わりました。

やはり、一番気になるのが足場スロープのある大きな作品。これは何? と回り込んでみると、なんとすべり台が見えてきました。しかも、実際にすべることができるのです!

こちらが、すべり台の上から見た景色。モノクロームの襖絵を見ながら一気にすべります!(急傾斜なのでけっこうなスピードが出ました…)

野生のニオイが…

すべり台で興奮したあとは、薄暗い展示コーナーに向かいました。ここには動物の皮が何枚も天井からだらりと垂れ下がっています。

まともに歩くと、毛皮が顔に引っ付きそうになるので、頭を下げて中腰で入っていきます。これらの毛皮も作品のひとつ。害獣駆除で殺されたオオカミやシカ、熊などの毛で、鴻池さんが北海道の毛皮なめし工場から譲り受けたそうです。

見上げると、天井にも作品があります。毛皮に愛しさを感じて画材にしたという鴻池さん。死んだ動物たちのエネルギーが狭い空間からびりびり伝わってきます。

ほかにも、絵本の原画やさまざまなオブジェ、刺繍や映像作品など多彩なアートが楽しめます。

学芸員さんに聞いてみた!

あまりにも刺激的なこの展覧会、いったいどんなふうに企画されたのでしょう? その舞台裏を、担当学芸員の賀川恭子さんにおたずねしてみました。

――今回の展覧会では、鴻池さんと美術館側がセッション(対話)を重ねたとのことですが、具体的にどんなふうに進められたのですか?

賀川さん 鴻池さんは、美術館関係者への取材やインタビューというかたちで「セッション」されました。対話を重ねながら、展覧会が構成されていくかたちでした。

鴻池さんは模型に配置しながら全体をご覧になっているのですが、拝見するたびに配置が異なり、作家さんがあれこれと試行錯誤されている様子が印象的でした。

なぜフランス絵画?

――鴻池さんの作品と一緒に展示されているコレクション作品3点(クールベ、コロー、シスレー)は、賀川さんが選んだそうですが、なぜこれらの絵を選ばれたのですか?

賀川さん フランス近代美術を専門とする学芸員として、19世紀から現代までの「森」をテーマとした企画をかねてから構想していました。「森」をテーマに当館のコレクションを選び、鴻池さんの作品と一緒に展示できれば嬉しい……と思い、最初にお目にかかったときにご提案した作品のうちの3点が、今回展示されることになりました。

ざわざわしています…

――すべり台の作品は、実際にすべりながら襖絵を見ることもでき、楽しかったです。この作品の誕生エピソードを教えてください。

賀川さん 今回展覧会の中心に襖絵を……というお話が出てから、襖絵の枚数や配置はいろいろと変わりました。スロープとすべり台の案をうかがったときには、とてもおもしろい展覧会になりそうな予感がしました。

準備の段階で、施工業者さんが建具にうまく襖絵がはまるか試したり、照明実験をしたりしていたのですが、全体像が見えるのは、展示室内での施工時でした。全体がどのように見えるのか、ワクワクドキドキでした。

――この展覧会では展示室を「ざわつかせること」を期待されたそうですが、一番ざわついた作品はどれですか?

賀川さん どれかひとつの作品が……というのではなく、展示室の空間全体が、これまでとは異なる風景に変わっていて、「ざわざわ」しているように思います。インスタレーションの作品ですので、写真ではなく、ぜひ展示室で空間を体験していただければと思います。

クレーや印象派も!

6階で鴻池さんの作品を楽しんだあとは、ぜひ下の階の展覧会もご覧になってください。

5階展示室では、第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展『Cosmo-Eggs|宇宙の卵』、4階展示室の『石橋財団コレクション選』ではパウル・クレーや印象派の女性画家たちの作品が展示されています。

アーティゾン美術館では、1枚の入場チケットで3フロアの異なる展覧会を見られるので、とってもお得。チケットは日時指定入場制なので、来館前にウェブ予約してください。また、入館前には体温測定とアルコール消毒が実施されています。

エネルギーを浴びに美術館へ!

おこもり生活中はネットやテレビで国内外のアート作品を見ていましたが、やはり本物の作品から放たれるパワーは全然違います。特に、鴻池さんの作品からあふれるエネルギーはかなり強く、視覚、嗅覚、聴覚など体のさまざまな器官を刺激されワクワクしました。

作家さんのエネルギーを全身で浴びることができる美術館に、ぜひ足を運んでみてください。

Information

会期 : ~10月25日(日)

時間 : 10:00~18:00(入館は閉館の30分前まで) ※当面の間、夜間開館は中止。
休館日 : 月曜日(祝日にあたる 8月10日、9月21日は開館)、8月11日、9月23日
入館料(税込): 日時指定予約制
一般ウェブ予約チケット ¥1,100、当日チケット(窓口販売) ¥1,500、学生無料(要ウェブ予約)
※ウェブ予約チケットが完売していない場合のみ、美術館窓口でも当日チケットを販売。
会場:アーティゾン美術館
展示室案内 :
6F 『ジャム・セッション 石橋財団コレクション×鴻池朋子 鴻池朋子 ちゅうがえり』
5F 『第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 Cosmo-Eggs|宇宙の卵』
4F 『石橋財団コレクション選』
特集コーナー展示|新収蔵作品特別展示 パウル・クレー
特集コーナー展示|印象派の女性画家たち

美術館公式サイト:https://www.artizon.museum/