志村 昌美

4人の夫たちが大反乱! 異文化の婿たち「想像を超えた現実」

2020.3.25
ひと昔前に比べると、国際結婚も増えてきているだけに婚活に励んでいる女子のなかには、日本国内だけでなく、すでに世界を視野に入れているという人もいるのでは? とはいえ、文化の違いなどによる問題が起こるのはいつの時代も同じこと。そこで、国際結婚をテーマにした話題作をご紹介します。それは……。

4年振りに帰ってきた『最高の花婿 アンコール』!

【映画、ときどき私】 vol. 299

フランス・ロワール地方に暮らすヴェルヌイユ夫妻。敬虔なクリスチャンで、保守的な夫のクロードと妻のマリーだったが、4人の娘たちはいずれもアラブ人、ユダヤ人、中国人、コートジボワール人と結婚していた。

家族間でも文化の違いよるさまざまな衝突が起きていたが、パリで受ける“異文化ハラスメント”に耐えられなくなった4人の婿たちは、ついに海外移住を宣言。家族がバラバラになってしまうことに心を痛めたマリーは、ある作戦を思いつくのだった……。はたして、その結末とは?

本作は、4年前にフランスで5人に1人が観たというほどの大ヒットを記録した『最高の花婿』の続編。前作では、四女の結婚を巡って巻き起こる騒動が中心となっていましたが、今回は4人の婿たちによる“大反乱”が描かれています。そこで、こちらの方にお話をうかがってきました。

フィリップ・ドゥ・ショーヴロン監督!

この連載では、4年前にもショーヴロン監督に取材させていただきましたが、今回もご自身の経験を含めて、国際結婚のさまざまな疑問にお答えいただきました。

―フランスは国際結婚率が非常に高い国ということもあり、このテーマは多くの共感を呼んでいるようですが、続編の反響はいかがでしたか?

監督 今回も観客の反応はすごくよかったですよ。ある調査資料によると、フランスでは20%近くが異なる民族、人種、宗教間で結婚しているといわれています。フランス以外のヨーロッパ諸国ではわずか3%なので、その点においてフランスは“チャンピオン”と言ってもいいかもしれないですね。

―そのほかの統計でも、フランスは国際結婚の世界一だそうですね。そこには移民が多いという背景もあると思いますが、それによって現代のフランスが抱えている問題を教えてください。

監督 少し前のフランスでは、移民問題よりも政府に対する抗議活動である「黄色いベスト運動」のことばかりが取り上げられていましたが、いまはみんな新型コロナウイルスのことでみんな頭がいっぱい。毎年、何かしらの新しい問題が勃発しているように感じています。

移民についてまず説明したいのは、移民と移民二世が混同されがちであるということ。移民とされているのは、本作に出てくる婿たちのお父さんやお母さんのことであって、彼らのようにフランスで生まれている人たちは、本来フランス人とされるべきなんですよ。

夫婦間で起こる問題に肌の色は関係ない

―なるほど。ちなみに、監督も国際結婚をされていますが、そこで感じている難しさはありますか? 

監督 僕自身はアフリカ系の女性と国際結婚していますが、正直言って肌の色はあまり関係ないと思っています。なぜなら、夫婦間で起きる問題というのは、たとえ肌の色が同じでも起こることですから。

それに、僕の妻はフランスで生まれていて、学校もフランスで通っていたので、精神的な部分ではフランス人。同じ本を読んだり、映画を観たり、文化的にもまったく同じだから、国際結婚の難しさは最低限といえるかもしれないですね。ただ、料理という点では違いを感じることもありますが、それくらいですよ。

―では、ご自身の経験が今回の作品に反映されているようなところはありますか?
 
監督 特にこの体験からインスピレーションを受けたというシーンはないですが、僕の両親もカトリックで、ブルジョアで、保守的なところはクロードとマリーと同じかもしれません。でも、僕の両親はもっとクールですけどね。実際、僕のお母さんも「全然違うわ!」と言いかねないですから(笑)。

あと、映画では4人姉妹が登場しますが、僕自身も4人兄弟で、国際結婚をしている人もいるので、その部分も似ているところはあると思います。

相手を愛しているかいないかが一番大事

―「国際結婚をしてよかったな」と感じる瞬間があれば、教えてください。

監督 僕の意見としては、国際結婚のほうが、人生が豊かになるような気がしています。というのも、たとえば違う国にいる親戚にバカンスで会いに行ったりすると、「あぁ、やっぱり違うんだな」と思うことはありますけど、そういう違いを知ることは自分にとってプラスになることですから。

ただ、さっきも話したように僕の妻はフランスで生まれ育ったこともあるので、もし本当に違う国の人と結婚したら、違いはもっと明確だったかもしれませんけど……。

とはいえ、僕が重要だと思うのは、国の違いよりも、本当に相手を愛しているか、愛していないかということ。なぜなら、愛している人と一緒にいると、相手のルーツが外国にあることなんて考えないはずですからね。

―確かに、国の違いよりも、相手への思いのほうが大切ですね。今後、日本人も移民や他の国の人たちとうまくやっていかなければいけないと思いますが、いい関係を築くためのアドバイスがあれば、教えてください。

監督 日本社会のことがあまりわからないので、的確なアドバイスができるか難しいけれど、受け入れる側も受け入れてもらう側も、「ここにいてよかったなぁ」と思えるような快適さをお互いに感じられることが大事なんじゃないかなとは思います。

今回の撮影で一番心配だったこととは?

―ぜひ、その意識を心がけるようにしたいです。また、本作を制作するうえで大変だったことはありましたか?

監督 前作があまりにも大ヒットしたので、あの当時ほとんど無名に近かった俳優たちは、一気にスターダムにのし上がって大人気になりました。そのために僕が一番心配していたのは、作品を掛け持ちしていたメンバーが欠けてしまわないかということ。

僕にとっては、全員が集合することがこだわりであり、揃わないことが不安の種でもあったので、実現できてよかったです。

―それでは最後に、続編を心待ちにしていたファンに向けてのメッセージを一言お願いします。

監督 もし1作目を気に入ってくれていたのなら、同じキャラクターたちが集まって繰り広げるユーモアは今回の作品でも同様に楽しんでもらえるはずです。

とはいえ、前作を観ていない人でも大いに笑える作品になっているので、ぜひ多くの方に観ていただきたいと思っています。

笑いも家族の愛も止められない!

これからますますグローバル化が進む日本人にとっても、さまざまな文化の違いを学べる本作。お互いの違いを受け入れた先に生まれる絆は、人生において何よりもかけがえのないものとなるはず。パワーアップして帰ってきた“お騒がせ一家”とともに、異文化のおもしろさを体験してみては?

波乱の予告編はこちら!

作品情報

『最高の花婿 アンコール』
3月27日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開
配給:セテラ・インターナショナル  
© 2018 LES FILMS DU PREMIER - LES FILMS DU 24 - TF1 FILMS PRODUCTION
http://www.cetera.co.jp/hanacore/