好きなこと、話そ!

志村 昌美

初恋、母の不倫、友人の事故…少年が経験した衝撃のひと夏の思い出

2019.5.30
いよいよ夏が近づいてくると、今年はどんな思い出が増えるのかと胸が高鳴るところ。そこで、人生を変えるひと夏を過ごしたある少年を描いた注目作をご紹介します。その作品とは……。

心を揺るがす話題作『メモリーズ・オブ・サマー』!

【映画、ときどき私】 vol. 236

1970年代末の夏、ポーランドの小さな町に暮らしている12歳のピョトレック。父親は海外へ出稼ぎに行っているため、大好きな母とふたりで夏休みを存分に楽しんでいた。ところが、母親はピョトレックを残して毎晩出かけるようになり、いつしか不穏な空気が漂い始める。

そんななか、ピョトレックが好意を抱き始めていたのは、都会からやってきた少女のマイカ。しかし、マイカもまた不良青年へ夢中になり、ピョトレックは失望するのだった。はたして、ピョトレックが経験したひと夏の行方とは……。

近年、映画界において注目度の高いポーランドですが、今回は「ポーランドから生まれた新たな才能!」と言われているこちらの方に、本作についてお話をうかがってきました。それは……。

アダム・グジンスキ監督!

グジンスキ監督にとって長編2作目となる本作ですが、日本での劇場公開は初めて。そこで、作品の背景やそこへ込めた思いなどについて語っていただきました。

―本作はご自身の経験にもとづいている部分もあるということですが、具体的にはどのあたりが作品に反映されているのでしょうか?

監督 まずはここに描かれている子どもたちの世界。つまり、小さな町の中にある湖で過ごす子どもたちのなかには、さまざまな人間関係があるということです。首都であるワルシャワから女の子がやってきて、みんなが興奮したというような出来事も、すべて私が経験したことでした。

そのなかで一番忘れられないのは、劇中にも描いている子どもが溺れてしまう事故。これは私が溺れたわけではなく、学校の友達に起きてしまった出来事でした。12歳前後のときに、その子の両親は外国へ働きに行っていましたが、そのために子どもがひとりで夏を過ごしており、溺れてしまったのです。そういう不幸が人間には起こり得るんだと、非常にショックを受けた覚えがあります。

―では、ピョトレックのキャラクターのなかにご自分を投影したところもありますか?

監督 そうですね、彼は私に似ていると思います。特に、感受性の部分では、私の持っているそれに近いかもしれません。それから、私自身も母親と非常に密接な絆があったので、そういう意味でも似ていると言えるでしょう。ただ、映画に出てくる両親に関するエピソードは、実際の話ではありませんよ。

そのほかに、当時を反映しているといえば、子どもの目線から見た大人の女性たちの世界。昔はいまよりも遅い時間まで仕事をしていなかったこともあり、他人が家に集まることもよくありました。そんななかで、大人の女性たちがどのように振る舞うのかというのは、自分の目でよく見ていたと思います。

人は初恋や人間関係を通して大人になっていく

―本作では、ピョトレックが大人への階段を上る瞬間が映し出されていると思いますが、監督にとっても、“大人への通過儀礼” だったと感じるような出来事はありましたか?

監督 あるひとつの具体的な瞬間というのを覚えているわけではないですが、私はゆるやかに話し方や考え方が変わっていき、いつの間にか大人になっていったと感じています。

というのも、この映画ではひと夏ですべてが起きてしまうように描かれていますが、通常はもっと長い時間をかけて変わっていくものですよね。つまり、初恋や大人たちとの関係性を通してだんだんと変化していき、あるとき別の観点から世の中を見ていることに気がつくものなのです。

―母と息子の関係というのは、普遍的なテーマでもあると思いますが、今回この題材を選んだ理由を教えてください。

監督 この物語を父と娘にすることもできたとは思いますが、いずれにしても母と息子、あるいは父と娘というのは人間が最初に結ぶ非常に強い絆だと感じています。それだけに、男性であればその人にとっての女性観というのを一生に渡って作り上げてしまうものだと思うのです。

女性においても逆のことが言えますが、実際に私の妹が自分のパートナーを探す時に父親がひとつのモデルとなり、相手のなかに自分の父親を見ていました。そのときに、異性の親との関係性というのは、強烈な影響を与えるものなんだということに気がついたのです。

私自身は、母との関係性については自分の経験で知っていたので、どういうふうに一緒に時間を過ごしていたかというのはこの映画のなかで描いています。

母と息子の危うい関係性とは?

―ただ、ピョトレックと母親は親子というよりは恋人のような距離感でしたが、これはポーランドでは普通なのでしょうか。それともより密接な関係ですか?

監督 この2人の関係性というのはちょっとゆがんでいるので、そこに気がついてもらえるのはうれしいことです。つまり、父親がいなかったり、父親が弱い存在であったりすると、母親は息子に対して過剰な感情を与えてしまうもの。それによって、母と息子の距離感というのが踏み越えられ、あまりにも密接で見ていて不安になるような依存関係になってしまいます。

この映画では、そういったことを表しているので、そこにある危うさというのが、観る方に伝わるのであれば、私の狙い通りです。特に、母親が不倫をしているということが明らかになると、夫だけでなく息子も裏切っていることになりますが、それは少年にとっては衝撃的な経験。そういう裏切りの感情が起こり得る危険な関係性だというものを表しています。

―劇中では、恋愛によって徐々にメイクや服装が変わっていく母親の姿もリアルに感じましたが、女性を描くうえで意識したことはありましたか?

監督 今回、女性をどう扱うかというのは、非常に微妙なテーマでした。というのも、女性は子どもを家で育てなければいけないのに、夫を裏切ったり、子どもを捨てたりするというのは、ポーランドの社会ではどうしても受け入れられないからです。

男性の場合ならありえなくはないとされているところもありますが、女性が家族を捨てるということに関しては、厳しい見方をされていると思います。それだけに、母親役を演じた女優とはずいぶんと長いディスカッションを行いました。その結果、「自分を認めてもらいたい」という欲求のある女性を弁護したいという考えに至ったのです。

実際に不倫を経験した女性の話を聞いたりしたわけではなく、すべて私が観察したうえで作りましたが、映画を観た方々と話し合ってみると、「この映画は女性が感情を持つ権利を認めてくれた」とか「女性を守る映画である」といった意見を言ってくださる方も多く見られました。

自分のなかにある“問い”を見つけて欲しい

―そういう意味では、日本の女性たちも鑑賞後にいろんな思いが湧き上がると思うので、最後にananwebの女性読者へ向けてのメッセージをお願いします。

監督 おそらく、みなさんそれぞれが自分にとっての“問い”のようなものを見つけてくれるだろうと思っています。つまり、それは子どもや夫との関係であったり、自分自身の問題であったりということです。

ただ、それはひとつの答えを目指すものでも、単純な答えに辿りつくものでもないと思うので、“考えの種”となるような多くのテーマを発見していただきたいと感じています。

私にとって、映画というのは問いを投げかけるものであって、答えを出すものではありません。なので、そのなかから会話の材料になるようなことを探していただけたらと思います。

この世界観に誰もが引き込まれる!

思春期ならではのきらめきと切なさ詰まった本作。美しい景色のなかで繰り広げられる忘れられないひと夏の経験を味わってみては? 自分の中に秘めていた懐かしい思い出がよみがえってくるかも。

夏の気配を感じる予告編はこちら!

作品情報

『メモリーズ・オブ・サマー』
6月1日(土)より、YEBISU GARDEN CINEMA/UPLINK吉祥寺ほか全国順次公開
配給:マグネタイズ
© 2016 Opus Film, Telewizja Polska S.A., Instytucja Filmowa SILESIA FILM, EC1 Łódź -Miasto Kultury w Łodzi
http://memories-of-summer-movie.jp/


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