好きなこと、話そ!

志村 昌美

『夜明け』の柳楽優弥と小林薫が語る「神様が降りてきた」瞬間とは?

2019.1.17
2019 年は平成最後の年明けとしても大きな話題となりましたが、さまざまな思いを胸に新年を迎えたという人も多いはず。そんなときにオススメしたい映画は、心に大きな傷を抱えた青年と罪の意識を抱えながら生きていた男を描いた注目作『夜明け』です。そこで、こちらのおふたりに作品の見どころについて伺ってきました。それは……。

柳楽優弥さん&小林薫さん!

【映画、ときどき私】 vol. 209

謎めいた悩める青年シンイチを演じたのは、現在ドラマに映画にCMに大活躍中の柳楽優弥さん。そして、偶然シンイチを助けることになった哲郎を幅広い作品で唯一無二の存在感を放ち続ける小林薫さんが演じています。今回は豪華な2ショットインタビューが実現し、撮影秘話からそれぞれの役者観についても語っていただきました。

―まずは、本作への出演を決めた理由から教えてください。

小林さん ひとつは監督や共演者が若いということに興味があったからですね。年齢を重ねていくとどうしてもいろんなことが硬くなってしまうからね。こういう現場に入ることでいろいろな要求をされたり、とまどって大変なこともありますが、そもそも映画ってそういうものなんじゃないかな。

柳楽さん 広瀬(奈々子)監督は是枝裕和監督のもとで監督助手をされていた方で、しかも初監督作品。それだけでおもしろそうだなというのもありましたが、実際に台本を読ませていただいて共感できる部分もあったので、ぜひやりたいと思いました。

撮影以外の雰囲気も作品に反映できた

―この作品では土地も大事な要素のひとつとなっていますが、現場はどのような雰囲気だったのでしょうか?

小林さん 今回は撮影中に自宅へは帰らなかったこともあり、現場にもそういう空気がなじむ感じもありました。それは、自宅に毎回帰って撮る仕事とはまた意味合いがちょっと違うものなんですよ。

現場の近くには3、4軒しかお店がなかったので、順番に回って毎晩みんなで飲みに行っていたんですけど、こういうことも東京だと撮影後に共演者とバラバラになってしまうからできないですしね。それが自分たちでも気がつかないところで“化学反応”を起こすこともあるので、そういうところが楽しいなとは思いました。

柳楽さん いまお話にあったように、今回は千葉でまるまる1か月間の撮影だったこともあり、薫さんが僕と共演者の鈴木常吉さんやYOUNG DAISさんたちをいつも食事に連れて行ってくださいました。そんなふうに撮影していないところでの雰囲気みたいなものが映画にもすごく出ていると感じました。

答えが出ないことと向き合う難しさがあった

―脚本を読んでから、役作りはどのようにされたのでしょうか?

小林さん わかりやすい部分とやっていくうちに難しいなと思う部分とありましたが、話自体はシンプルなものだと感じました。ただ、「親子なのになぜうまくいかないんだ」という親子の問題は答えが出ないものであって、それこそ2000年も前のオイディプスの書かれた時代から言われていること。解決する術はないんですよね。だから、人間だけにあるこの試練というのは一体何なんだろうって思うわけですよ。

でも、この映画はそれがいいとか悪いとか、そういうことを言いたい作品でもない。だからこそ、僕らはどうしたらいいのかなと考えなければならなかったので、実は難しい題材なんだなと思いながら演じていました。こんな難しいテーマを若い監督がよくやるなとも思いましたね。

―では、そういう疑問や葛藤をつねに抱えながら現場にいらっしゃったということですか?

小林さん 答えが出ないことだからね。それが難しさのひとつでもあったのかなとは思いました。ただ、自分たちがやったことに対しては、ああも考えられたとか、こうもできたとかをいまさら言ってもしょうがないし、正解だったと言わざるを得ないですよね。だって、あれがあのときの全力だから。

―柳楽さんは微妙な心の動きを求められるような難しい役だったと思いますが、どのようにして挑まれましたか?

柳楽さん 難しいなとは感じましたが、まずは自分のなかで信じたものと監督に言われたことに従って演じようと思っていました。

今回、撮影に入る前に僕が思っていたのは、僕がキャスティングされた意味。それは是枝監督の『誰も知らない』でデビューしたという流れもありますが、僕の持つ“生命力”というものを出せたらいいなと思っていたので、そこは意識するようにしていました。

変な先入観を持たずに観て欲しい

―実際に完成した作品を観たときはどのように感じましたか?

小林さん もっと気楽な映画も作れたのに、30歳の若い監督がこんなに難しくて渋い映画をよく撮ったなと(笑)。でも、広瀬監督は東日本大震災のあと、コミュニケーションの在り方に悩む時期があったということもあり、映画との出会いがひとつの救いだったのかなとは思うんですよ。だから、そういうところに近いテーマなのかもしれないですね。

あとは、監督自身が「答えはこうです。マル」みたいなわかりやすい映画を作りたいわけじゃないというのもある。カメラマンにしてもドキュメンタリーを中心に撮ってきた人を採用しているから、劇用のカメラマンとは違いますしね。

―特に違いを感じた瞬間などもありましたか?

小林さん たとえば、木工所に「おはよう」って入ってくる人がいてもカメラはそっちを向いていない。もちろんセリフを言う側にだけドラマがあるわけじゃないけど、それを聞いている側がどう聞いているかを撮りたいんだなと思ったんです。

だから、僕らもいわゆる劇用の映画ではないんだなという思いを感じ取りながら演じていたので、そういう意味ではいろいろな “違和感” も含めて「なるほどな」と思うところもあっておもしろかったですね。

柳楽さん 最初はどういう作品に出来上がっているんだろうと、怖さやワクワクもありました。僕自身はいろいろな方の感想を聞きながらいまも考えているところはありますが、だからこそ観ていただく方には変に先入観をつけたくないなというのがあります。観た人の心にどう残るかという可能性にかけている映画だなと思いました。

―ラストシーンも非常に印象的ですが、どのように受け止めていますか?

柳楽さん 「生きる」という感じですね。人生を一回あきらめようとしたシンイチが哲郎さんと出会い、助けてもらったおかげで、ゆっくりではあるけれど真っ暗なトンネルから少しずつ歩み始めることができたんだというふうにとらえています。

今回の現場だからこそあのシーンが生まれた

―劇中ではシンイチと哲郎の関係性について描かれていますが、実際の柳楽さんと小林さんはどのような関係性なのですか? 

小林さん お互いに余計なことは言わず、「このシーンはどうしようか」というのもあまり相談しないようにはしていました。それは広瀬監督の作品が持つ性質もあるとは思いますが、2人で納得して答えが出ちゃったらつまらないじゃないですか。そこにはわからなさの不安があるんだけど、わかることをやってもしょうがないからね。

ただ、今回すごくよかったなと思ったのは、台所でシンイチが初めてある重大な告白をするシーン。僕は台本を読んだとき、体に力が入っている状態だとこのセリフは出てこない気がして、「僕が受け止めるから、体を預けて脱力した感じでやるのはどう?」と提案してみたんですよ。

そしたら、柳楽くんも「それはありがたい」ということになったので、実際にそのような形で本番を迎えました。それは最初からプランがあったわけでもなかったんですけど、広瀬監督の現場と千葉で合宿をしていた環境のおかげで、役のことをふと考えたときにそうなったのかなとは思います。それは計算とかではなくて、神様がふわっと降りてきたような感じがいまでもしていますね。

―それはNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』での共演を経て、おふたりの間に強い信頼関係があったからこそできたことだったのではないでしょうか?

小林さん そんなきれいなものじゃないと思うけど(笑)。でも、そういう関係みたいなものがふと成立するときというのがあるんだよね。だから、あのシーンについては、僕もいまだにそう思っているし、監督も周りで見ていた人たちからも、あのときの哲郎とシンイチの雰囲気がよかったとほめてもらいました。

―柳楽さんにとって、小林さんはどういう存在ですか?

柳楽さん 難しいことが多い現場でしたが、ドラマで1年近くご一緒させていただいた薫さんがいてくださったからこそ、少し落ち着くことができたところもありました。あとは、現場以外でも自然とキャラクターと同じような感じでいてくださったので、それは作品にとっても僕にとっても助けられていた部分だったと思います。

役者という仕事に対する思いとは?

―小林さんから見て、柳楽さんの魅力はどのようなところでしょうか?

小林さん 役を演じる以前の役者としての在りようというところで、すごく悩んでいるというか、ためらいがある人なのかなという印象。ただ、それはこれからも続けたほうがいいと思っているんです。というのも、僕らは腰を据えて落ち着いてしまったら、それはそれでつまらなくなっちゃうものだからね。

俳優というのは、その妙な居心地の悪さみたいなものを抱えていく職業なのよ。しんどいと思うけど、そこを卒業しないでやっていってもらいたいなという気はしますね。だから、僕らは死ぬまで答えの出ないことをやっていると思いますよ。僕も最近は方法論も含めて、正しいことってわからなくなってきちゃっているからね。

―小林さんでさえもそのように感じているのは、みなさん意外に思うのではないでしょうか。

小林さん たとえば「役者とはこういうものだ」と言って人を納得させている人がいたら、「いいこと言うな」と思うのと同時に「お気楽でいいね」と心のなかで皮肉も出てくるんですよ(笑)。

何が正しいかわからなくなってくる “居心地の悪さ” みたいなものは、ずっと続くんじゃないかな。だから、柳楽くんも役者としての在りようとか、役をつかむ方法とかをどうしたらいいかというのをずっと考えていくしかないと思うんだよね。「こういうことね」っていうのは絶対ない気がするから。

―それでは最後に、柳楽さんから今後に向けて一言をお願いします。

柳楽さん 答えがあるエンターテインメント性の高いメジャーな作品も大好きですが、今回はこういうインディペンデントなものづくり感のある現場で、同世代の監督とご一緒できてよかったなと思います。ただ、まだ自分は満足とはほど遠いところにいるので、薫さんにおっしゃっていただいたように、これからもそれに耐えてがんばっていきたいです!

インタビューを終えてみて……。

ときおり少年のような笑顔を見せる柳楽さんと、大人の色気が漂う小林さんというそれぞれの魅力に釘づけとなった今回の取材。作品や役者という仕事に対して真摯に向き合い続けるおふたりだからこそ、ひと言ひと言にも重みを感じました。柳楽さんと小林さんの圧倒的な演技は、ぜひ劇場でご覧ください。

「生きるとは何か?」と向き合う!

親子や人間関係のなかで生じる葛藤や苦悩も、すべては生きているからこそ感じるもの。人は答えの出ない問いと向き合いながら、つねに新たな一歩を踏み出す選択を求められているのかもしれません。心のなかに抱えているものがあるのなら、シンイチとともに“人生の夜明け”を探し求めてみては?

ストーリー

地方の町で木工所を営んでいた哲郎。ある日、河辺で倒れていた青年を助け、自宅で介抱することとなる。偶然にも、その青年は哲郎の亡くなった息子と同じ「シンイチ」という名前だったのだ。自分のことを語らないシンイチだったが、周囲の温かさに触れるうちに心を開き、哲郎の家に暮らしながら木工所で働くようになる。

時が経つにつれて、哲郎に対し父親のような感情を抱き始めるシンイチと徐々にシンイチに執着をし始める哲郎。親子のような関係の2人だったが、そんななか数年前に起きたある事件の噂が流れ始めることに……。

胸がざわめく予告編はこちら!

作品情報

『夜明け』
1月18日(金)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
出演:柳楽優弥/YOUNG DAIS 鈴木常吉 堀内敬子/小林薫
監督・脚本:広瀬奈々子
配給:マジックアワー
©2019「夜明け」製作委員会
https://yoake-movie.com/


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