杉咲花「結婚して子どもも欲しい」津野愛監督と語る10年後の自分
杉咲花さん&津野愛監督!
【映画、ときどき私】 vol. 195
現在、若手女優のなかでも映画やテレビで大活躍中の杉咲さんですが、今回は『DATA』で主演を務め、亡くなった母親のデータが入った「デジタル遺産」をもとに母親の姿を追い求める女子高生の舞花を演じています。
いっぽうの津野監督は、本作のエグゼクティブプロデューサーでもある是枝裕和監督のもとで現在活動中。念願の監督デビューを果たしています。そんなおふたりに、作品を通じて感じた思いやこれからのことについて語っていただきました。
―この作品で監督がテーマにしたのは、「デジタル遺産」というものでしたが、いまのデジタル文化やSNSの在り方などに疑問を感じられていたのですか?
津野監督 「SNSやインターネット上にアップしたデータはいつまで残って、誰に見られているんだろう?」みたいな漠然とした怖さみたいなものは以前から感じていました。これから先、どんどん詳細な個人データや情報が増えていくなかで、目に見えるものや形に残るものというのはとても信じやすいですよね。
でも、そのいっぽうで目に見えない存在や記憶というものがないがしろになってしまうのではないかなという危機感もあったので、今回の作品ではこういった題材を選びました。
デジタルな情報を信じすぎていることに気がついた
―杉咲さんは幼い頃からデジタルな環境で育ってきたと思いますが、このテーマを聞いたときはどのような印象を受けましたか?
杉咲さん 私自身も目に見えるものを信じがちで、そういうものばかりを求めていたところがあったなと自分の経験を通して感じていました。というのも、3年くらい前からその日に起こったことや思ったことを日記にしていましたが、ある日そのデータが全部消えてしまったんです。そのときはこれまで過ごした日々までも消えてしまったような思いに駆られて、ものすごい喪失感に襲われました。
結果的にそのデータは残っていたのですが、自分自身の感じたことを何かに残すということで、安心しきっていましたし、それがあるから新しいことが更新されるたびに前のことを忘れてもいいと思うようになっていたところがあったんじゃないかなと思ったんです。「それってどうなんだろう?」と考えたときに、情報を信じすぎている部分や自分のなかにあるものを大切にすることを忘れていた部分があったと気づかされました。
―デジタルに頼りすぎているように感じていたんだと思いますが、そこで手書きにしようとはならなかったですか?
杉咲さん それは……書くのが面倒になってしまったからですね(笑)。それまでは、買い物リストとかも手書きでリストアップしていたんですけど、それもいまではスマホのメモを使ったりするようになったので、結局デジタルに頼っています。
自分で選択しながらうまく使っていきたい
―では、デジタルやSNSが発達したことでよかったと感じることはありますか?
杉咲さん たとえば、インスタグラムを始める前までは、ファンのみなさんからのコメントを受け取れる場所がなかったので、そういった声がリアルに感じられるという意味では、うれしいですね。ただ、楽しさだけではなくて、一言一言に責任のあるお仕事でもあると思うので、そのあたりをちゃんと考えてこれからも続けていかないといけないなとは感じています。
津野監督 これはポジティブであり、ネガティブでもありますが、たとえばAmazonで本を買うと、「これを選んでいる人はこれも買っています」というオススメが出てきますよね? そこで自分好みの作品に出会えるうれしさがある反面、それはデータに基づいた誘導に乗ってしまっているということ。つまり、本屋さんに行っていたら手に取っていたかもしれない作品と出会えなくなってしまっているということなんですよ。
クリックするだけですぐに届いて便利ではありますけど、“寄り道”みたいなことができなくなっていることは寂しいなと思うこともありますね。なので、そのあたりは自分できちんと選択しながら、うまく使っていきたいなと思います。
家族だけに残したいものとは?
―今後、もし「デジタル遺産」という制度ができたら、そこに残したいものはありますか?
杉咲さん 家族だけが見られるという条件なら、日記ですね。そのときは、家族に恥ずかしくて普段伝えられないこととかも書いて読んでもらうのもいいかなと思っています。
津野監督 私も日記を書いているんですけど、全部ノートなんですよね……。だから、残された人は嫌かもしれないので、どうしたらいいんだろうかと悩んでいます。とはいえ、自分で燃やす気にもなれないんですよね(笑)。
あと、困っているのは昔の写真とかも処分できないのでどうしようかなと。私はウェブのページでも「いつかなくなっちゃうかも」と思って印刷してしまうほうなので、けっこうアナログな人間かもしれないですね(笑)。
杉咲さんの佇まいを見て役の設定を変更した
―それでは、作品のことについてもおうかがいしますが、杉咲さんを本作でキャスティングした理由と、実際に現場に入ってからの印象を教えてください。
津野監督 初めてお話したときに、投げかけた質問に対して答えていただく姿勢を見て、すごく大切に考えて自分の言葉を探し出して話される方だなというのが印象的でした。
それがステキだなと思ったので、舞花という役はもともと思ったことを全部口にしてしまう少し幼さが残る中学2年生の設定でしたが、年齢を高校3年生まで引き上げてもう少し自分の内側で考えるシーンを増やしました。それは言葉には出さないけど、杉咲さんの思い悩んでいる表情を撮っていきたいなと思ったからです。
津野監督の現場はスタッフの愛情であふれている
―監督のおっしゃる通り、舞花と杉咲さんの芯の強さがリンクしていてハマり役だったと思います。杉咲さんは、津野監督の現場を経験されてみていかがでしたか?
杉咲さん 今回、撮影は3日間だけだったのですが、津野監督と長いお付き合いのある是枝組のスタッフの方々が集まっていたこともあり、現場の空気感がとても心地よくて、初日なのに初日じゃない感じがしました。
監督にとっては初めての作品ということもあり、みなさんの監督に対する愛情というのを感じられる現場だったと思います。お互いに補い合って、助け合う気持ちがみなさんにあったので、3日間以上の充実感を感じさせていただけるとてもステキな時間でした。
10年前の夢は叶えられたと思う
―本作は10年後の日本が舞台ということで、10年がひとつのキーワードですが、ご自身の10年前を振り返ってみて、いまの自分は想像できていましたか?
津野監督 映画の仕事をしていきたいと思いながら大学にも通っていましたが、不安な気持ちももちろんあったので、それが10年後のいま、杉咲さんに出ていただいただけでなく、劇場で作品が公開されるというのは夢のようですね。まずはひとつめの夢を叶えたというか、やっと土俵に立てたというふうに感じています。
杉咲さん まだ11歳だったので、いつか女優のお仕事をして演技をしたいという思いは漠然としていました。でも、夢は叶ったと思っています。
これからの10年は幅広い視野を持って作品と向き合いたい
―では、次の10年はどのように過ごしていきたいと思っていますか?
杉咲さん 一緒にお仕事をしてみたい方はたくさんいますし、いっぱい夢はあるのですが、いまはとにかくいろいろな経験をしたいですね。こういうのをやりたいという思いももちろんありますが、それだけではなくて、声をかけてくださったものは全部挑戦していきたいです。
あとは、プライベートだと、いつかは結婚して子どもも欲しいですね。それが10年後かはわからないですけど、プライベートも充実しているといいなとは思います。
津野監督 私は目の前にあるものだけに集中してしまうところがあるので、今後も1つひとつ大切に作り続けていきたいですが、目の前のことだけではなくてほかのことも同時にできるような広い視野を持ちながら精力的に作品を生み出していけたらいいなと思っています。
インタビューを終えてみて……。
とにかく仲良しな杉咲さんと津野監督からは、現場の和やかな雰囲気が伝わってくるほど。今後の映画界をさらに盛り上げてくれるおふたりだけに、これからの10年でどんな作品を生み出してくれるのか、ますます楽しみなところです。
「理想の日本とは何か?」を考える!
あらゆる角度から描かれた10年後の日本に、これから自分たちがどんな未来を作っていきたいかを考えさせられる本作。輝く未来にしていくために、いまをどう生きていくべきか、自分ができることをここで一度見直してみては?
作品概要
香港で社会現象となったオムニバス映画『十年』をもとに、新鋭監督たちが自国の抱える問題点を軸に10年後の社会・人間を描く、日本、タイ、台湾の国際共同プロジェクト「Ten Years International Project 」。
日本版では総合監修をつとめた是枝裕和監督が選んだ才能あふれる5人の新鋭監督たちが、いまの日本が抱えている問題を題材に“5つの未来”を描いている。
未来を考える予告編はこちら!
作品情報
『十年 Ten Years Japan』
11月3日(土)より、テアトル新宿、シネ・リーブル梅田ほか全国順次公開
出演:杉咲花、國村隼、太賀、川口覚、池脇千鶴
配給:フリーストーン
© 2018 “Ten Years Japan” Film Partners
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