僕はXXY性染色体を持つゲイ…認知されていないことへの苦悩|多様な性、LGBTの世界 #8
インターセックス、KUROさんが抱える ”クラインフェルター症候群” とは
【多様な性、LGBTの世界】vol. 8
インターセックスとは、性分化疾患ともいいます。性染色体や生殖器、解剖学的な性の発達が多くの人とは先天的に異なる状態です。これは、さまざまな症状を持った、おおよそ70種類の疾患をまとめた総称であり、どのような状態であるかは人それぞれです。前述した通り、性染色体や生殖器など身体的な特徴を表すものであり、生まれたときの身体の特徴で男性か女性かにわけにくかったり、曖昧であったりもします。
また、インターセックスは身体的特徴に注目したものなので、生まれた身体と性自認が異なる ”トランスジェンダー” や ”性同一性障害” とは異なります。
そのなかでも、KUROさんが抱えているのは ”クラインフェルター症候群”。男性の性染色体はXY、女性の性染色体はXXですが、KUROさんの性染色体は1本多く、XXYです。XXXYのように、Xの数が2つ以上多いという方もいらっしゃいます。ただ、診断の機会があまりないため、なかなか気づきにくいという面もあります。男性不妊のうちのひとつ、無精子症の原因になるので、不妊症の検査で判明するという方が多いようです。
クラインフェルター症候群は、さまざまな症状を包括した名前です。一般的には、第二次性徴が完全に起きないことが多いですが、程度は人によって異なります。髭や体毛が少なかったり、手足が長かったりすることが多いようです。これは、第二次性徴から胴体の成長が止まって手足が成長することが原因です。
KUROさんのように性染色体がXXYである子どもは、男児660人に1人の確率で生まれてくるといわれています。
”男性らしくない男性” に見られたり、”どこか幼さが残った男性か女性” のように見られたりすることも。心臓に先天性の異常があったり、広汎性発達障害といった、社会的に生活を送りにくいとされる障害を伴う方もいらっしゃいます。また、体が弱くて病気にかかりやすい部分もあり、社会的にも身体的にも困ることがあるといいます。
ここからは、KUROさんの体験談をお話します。まずは、当事者の声を聞いて ”知る” ところから。聞き慣れない単語かもしれませんが、”知る” ことが当事者の辛さに寄り添う第一歩になるのです。
32歳のときに、僕自身がクラインフェルター症候群であることを知った
僕の場合、第二次性徴が完全に起きなくて、髭は生えず体毛が薄かったです。見た目が男性らしくなく、とても悩んできました。実は、23歳のときに肺気胸を患ったのですが、肺に8か所も穴が空いてしまったのです。そのときにも、クラインフェルター症候群だと医師が気づくことはありませんでした。
そして、32歳のとき、会社の健康診断で血液が異常に少ないと診断されたのがきっかけで、今まで感じてきた違和感を知人に打ち明けたのです。そこでたまたま教えてもらった ”当事者グループ” の人たちに話を聞いてみて、自分と同じ悩みを持った人がいるのだと知りました。泌尿器科で染色体検査をするようすすめられ、そこでクラインフェルター症候群だと初めて診断が降りたのです。
知る機会がほしい、もっと認知されてほしい。当事者として感じてきたこと
僕自身、当事者であるにもかかわらず、クラインフェルター症候群やインターセックスについての知識を教えてくれるものがあまりなかったように感じます。生きていくなかでさまざまな苦悩がありながらも、原因がわからないということが多いのです。
僕は男性の体に生まれましたが、”男性らしくない男性” に見られることがストレスになっていました。親から「男らしくしなさい」と言われたり、社会からどう思われているかを過剰に心配してしまったりしたからです。”中性的" で、"女性にも見られることがある外見" から、公衆トイレや銭湯を利用したときに、ほかの利用者から苦情を受けることもよくありました。
クラインフェルター症候群発覚後も、専門の病院がないことで非常に苦労しました。体力がなく、体調も崩しがちだった当時。当事者グループの人たちから併発しうる病気を教えてもらったときに、骨粗しょう症が気になりました。そこで骨密度を調べてもらいにいったのですが、かなり低くなってしまっていたのです。
医師からは男性ホルモン治療をすすめられていましたが、男性ホルモン治療を受けると急に ”男性らしさ” が出てきます。ずっと一緒に生きてきた自分の体が変わってしまうのが怖くて、その治療に踏み切れずにいました。
骨粗しょう症発覚もあり、どんどん悪くなっていく体調に不安を覚えるように。女性ホルモンのほうが骨密度を上げるという情報もあったため、僕は女性ホルモンでの治療を望みました。しかし、戸籍と反対の性ホルモン治療を受けるには、性同一性障害(GID)の診断書が必要になります。
僕は、”女性化” したかったのではなく、長年ともに過ごしてきた体を変えずに、健康的な生活を送りたいと考えていました。希望した女性ホルモンの治療を受けるため、ジェンダークリニックに通い、GIDの診断書をもらおうとしました。しかし、”女性化” の意志が全くなかったので、診断書はもらえませんでした。
骨密度や体調を改善したい。だけど、診断書がもらえない。そういった状況に焦りを覚えました。そして、自分で女性ホルモンを個人輸入し、自己判断で使用してしまうように。結果、骨密度は上がりました。しかしながら、胸が出てきて服に困るようになってしまったのです。
そんなとき、良い病院に巡り会って、男性ホルモンに切り替えるようアドバイスされたのです。泌尿器科の病院で男性ホルモンの治療をしたいと伝えても、「うちは専門じゃないから他の病院に行ってください」と言われることがよくありました。でも、専門の病院がないというのが現状。どこに行ったら良いのか途方に暮れてしまいます。
結果的に僕は、男性ホルモンで治療を続けています。治療を始めてから7年が経ちますが、ここまでくるのに長い道のりだったと感じます。
さまざまな人を受け入れられる社会に。認知度と理解を高めたい
現在は、認定NPO法人グッド・エイジング・エールズで、インターセックスとゲイの当事者として活動しています。インターセックスについての勉強会も行っており、認知度と理解を広げられたら、と考えています。
僕以外の当事者と話していても、大変な思いをしているのだと肌で感じます。”中性的” な外見からいじめに遭ったり、「生まれたことが悪いんだ」と思っている人までいるのです。また、僕同様、自己判断でホルモン治療を行ってしまう人もいます。専門の病院がなく、当事者への情報も少ないのが現状です。自己判断はとても危険なので、専門の病院ができるよう望んでいます。
LGBTの認知度は徐々に高まっているように思いますが、インターセックスについてはまだまだ低いでしょう。当事者自身、発覚するまでに時間がかかり、悩んでしまうという事実もあります。LGBTはもちろん、インターセックスについてもより認知度が上がり、理解される社会を強く望んでいます。さまざまな人が笑顔でいられるために、僕自身、活動を続けていきたいと思っています。
〜LGBTのバトン〜
今回は、KUROさんにお話をうかがいました。
次のお話は、パンセクシュアルでトランス女性の、しゅんかさん。工学分野の研究者で、認定NPO法人グッド・エイジング・エールズでは ”OUT IN JAPAN” の受け付けなどをしています。
大学生の頃、バイセクシュアルでトランスジェンダーだとはっきりと自認したそう。26歳のときにパンセクシュアルという言葉を知り、”パン” に ”全ての” という意味があるのだということも知ったそう。”性別の枠を超えて人を愛する” といったステキな言葉だと感じ、まさに自分の性的指向に合致していると思い、それからはパンセクシュアルだというように、自分のセクシュアリティを紹介しているそうです。
Information
認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ
http://goodagingyells.net/
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