志村 昌美

玉木宏と新木優子が話題作『悪と仮面のルール』の裏側を語りつくす!

2018.1.13
いまの時期は、「どんな2018年にしていこうかな」と考えている人も多いと思いますが、「今年はスリリングな一年にしたい!」と思っている女子にオススメしたいのが、話題のサスペンス映画『悪と仮面のルール』です。今回は、本作の主人公とヒロインを務めたあの方々にお話を聞いてきました。それは……。

玉木宏さん&新木優子さん!

【映画、ときどき私】 vol. 136

悪になるために育てられ、愛する人を守るために整形で別人の顔を手に入れた男・久喜文宏を演じたのは人気と実力を兼ね備えた玉木宏さん。そして、女優だけでなくモデルとしても活躍中の新木優子さんは、文宏が命懸けで守ろうとする初恋の女性・香織を演じています。そこで、公開を直前に控えたおふたりに、撮影の裏話や今後の抱負について語ってもらいました。

まずは、芥川賞作家でもある中村文則さんの原作を読んだときの感想から教えてください。

新木さん 私は趣味が読書でよく本を読むんですけど、そのなかでもすごく重くて、濃厚な作品だなというふうに思いました。しかも、最初はミステリーかと思いきや、純粋なラブストーリーとしての結末を迎えるすごく意外な作品。でも、ただ純粋なのではなくて、好きだからこそ犯してしまう罪とか人間の欲望も色濃く描かれた作品だなとも感じましたね。

玉木さん 僕の印象は、本当に文学的要素の強い作品だなというものでした。ただ、最初は何が言いたいんだろうと思いながら読んでいたんですけど、だんだんとこの世界観に引き込まれていきましたね。閉鎖的な空間であるからこそ2人が象徴的に描かれていますが、恋愛小説かと思うような意外性もある。独特なアプローチの作品ですが、読み終わってようやくこの『悪と仮面のルール』というタイトルが腑に落ちました。

現場には中村さんもいらっしゃったそうですが、どんな話をしましたか?

玉木さん 僕は原作を読んだときに、「幸せな生活を送っていない人なんだろうな」と思っていたので、失礼ながら開口一番に「幸せですか?」と聞いたんです(笑)。すると、どこからこういう世界観や言葉が生まれてくるのか不思議なくらい、ものすごく明るくて意外性のある方でした。でも、逆を返すと普段が本当に不幸だったらこういう作品は生まれないのかもと思いました。

新木さん 私は現場ではそんなにお話できなかったんですけど、明るい方というのは噂で聞いてましたね(笑)。でも、だからこそ、自分の範囲を超えたところまで、想像が膨らんで書けるのかなと、私もそこはおもしろいと思いました。

今回は、演じるにあたっての難しさはありましたか?

新木さん 私の役に関しては、性格がゆがんでいるようなキャラクターではなかったので、難しいというよりは、普通でいようと心がけました。

玉木さん 僕の場合は、難しく考えたらいくらでも難しくなってしまう役。結果何を伝えたいかというところに焦点を合わせると、これは2人の恋愛物語であり、文宏の香織に対しての純真な気持ちがすべてのことを起こす原動力になっていたと思うので、そこから逆算することにしたんです。そして、表面的にはポーカーフェイスだけど、内面にある香織へのシンプルで強い思いを大切にしていました。

本作では、整形した男性の役ということで、顔に違和感を表現するために、なんと50本もの鍼を顔に打ったという玉木さん。

どのような経緯で行ったのかを教えてください。

玉木さん 整形は経験がないですし、ましてや整形をして他人の顔をまるごと手に入れるというのは、なかなか想像もしにくい世界なのですが、どうにかしてそういう違和感を芝居だけではなく出せないかと考えました。

そこで、知り合いの鍼の先生に相談をして、安全の範囲のもと、包帯を巻いている冒頭のシーンの直前に顔中に鍼を打ってもらい、変な違和感を作ったんです。実際に顔がこわばっている感じがあったので、それは成功だったと思います。

新木さんは、香織を演じられてみて感じたことはありましたか?

新木さん いままでに出させていただいた作品とは違う新しい作品だったので、このなかで香織を演じることができて、すごく楽しかったです。あとは、香織の気持ちや文宏とのシーンについて監督とすり合わせをしたときに、自分が思っていたことと意見が合うことがたくさんありました。

そのおかげで、「私の考えは間違ってなかったんだな」とか、「私はこの現場でしっかり香織でいられているんだな」というのを感じられるタイミングがあったのもよかったなと思っています。

では、初共演でのお互いの印象は?

新木さん 私は玉木さんのいろいろな作品を拝見していたので、どれが本当の玉木さんなのかわからず、最初はどういう方なんだろうと思っていたんです。でも、リハーサルに入ったときに、自分が想像していたよりもすごく気さくで、壁がなくて、自然体でいらっしゃる方なんだなと感じました。

玉木さん 最初に思ったのは、まず顔が小さいなということ(笑)。あとは、スラッとしたいまどきの子でありながら、芯があって物事をまっとうに捉える力のある人。そして、作品に対しては真摯に臨むけど、まじめすぎなくて明るいんだろうなという印象でした。

ただ、やはり自分と比べることの方が多いので、「僕が若いときにはもっとフワフワしていたのにしっかりしているな」とも思いました。そういう意味でも変に言葉を交わさなくても、一緒の方向にむかっていける人なんだろうなと感じましたね。

今回のクライマックスでもある文宏と香織が車の中で向き合うシーンは、この作品にとっても大きな見どころであり、玉木さんと新木さんの共演シーンのなかでも印象的なところ。

ラストシーンはどのような思いで演じていましたか?

玉木さん 実は、あのシーンはもともと台本上では、空港のロビーという設定だったんです。でも、それまでずっと閉鎖的空間で描かれていたのに、空港のロビーとなるとすごく開放的で、どうしても腑に落ちませんでした。あのシーンは、閉ざされたなかで文宏が香織の匂いや空気を感じながら話すのが一番ふさわしいと思ったので、どうにか原作と同じ車の中という設定にできないかとお願いしたんです。

本当に自然のままに感情を乗せられるすごくいいシーンになりました。長回しで何度も撮影を行ったのですが、同じタイミングで涙が出てきたので、計算しているようでしていないような感じでした。

新木さん あそこは今回の撮影のなかでも、監督と一番細かく話し合った思い出のあるシーンです。自分が泣くところや文宏のリアクションが台本を読んでいたときと撮影に入ってみたときとでは全然違っていたので、これはやってみないとわからない部分なんだろうと思って台詞だけを覚えて、他は何も準備せずに行きましたが、それがよかったなと思っています。

特に予定せずに出た涙とか、こんなところで感情が湧きだしてくるんだなとか思いがけない感情の沸点があったので、そういう意味でもすごくおもしろかったという印象はありますね。

そうやって作り上げられたラストシーンは、なんと25分間もカメラを止めずに撮影したというほど。

撮影方法に関しては、監督とどのような話し合いをしたのですか?

玉木さん すごくデリケートなシーンの連続なので、最後の部分に関しては、僕らの気持ちが途切れない方法はなんですかと監督が聞いてくれて、一連で撮ってもらうのがいいのではないかということになったのです。そのうえで、長回しをして、それをまた別のアングルで長回しをしてというのを繰り返しました。もしあれをカット撮りしていたら、多分成立していなかったと思います。

撮影中はハードだと思いますが、気持ちを切り替えるためにしていることがあれば教えてください。

玉木さん 翌日の予習をすることはありますけど、僕は役を持ち帰ることはまったくないですね。

新木さん 私も引きずることはあまりないですが、撮影中はお風呂にゆっくり入って自分を取り戻すようにしています。家にいるときこそ、自分の時間をちゃんと作らないと、悪いほうにひっぱられるのはよくないと思うので。

玉木さん あとは友だちとご飯に行ったり、走ったりボクシングジムに行ったりしますね。寝る時間を削ってでも毎日2時間は運動しています。

2018年は玉木さんにとっては俳優デビューから20周年であり、新木さんにとっても映画デビューから10年という節目の年。

改めて振り返ってみていかがですか?

新木さん 10年と言われてびっくりしましたけど、本当にそれぐらい年数を意識してなかったので、あっという間にすぎていった感じですね。でも、そんななかでも自分ではひとつひとつの作品で成長させていただいているな、と思っています。

玉木さん 僕も意識して過ごしているわけではないので、気がついてみればこの4月で丸20年。ということは、新木さんが4歳のときということですよね? そう考えるとすごい時間だし、しかもその新木さんと恋愛映画をやっているわけですから、おそろしいなと思います(笑)。

それでは最後に、今後チャレンジしたいことがあれば教えてください。

新木さん 去年はアクションの作品があったこともあり、体を動かすというのが目標でした。ただ、他の撮影に入ってしまうとどうしても滞ってしまって目標を達成しきれなかったなという悔しい思いがあるので、今年は体を動かすというのを新しい角度からやってみようかなと思っています。あと、ボルダリングにも挑戦したいですね。

玉木さん 日々新しいことの連続でもあるお仕事ですし、人との出会いによって刺激を受けて、変化もしていると思います。特に映画やドラマの在り方も変わってきていると思うので、そこについていきながら、新しいものを生むということにトライしていきたいです。

あとは、基本的に趣味はいっぱいあるほうなので、仕事以外のすべての時間をそういうところに費やしてリセットしながら、進んで行きたいと思っています。

インタビューを終えてみて……。

30代の後半に入ってからますます大人の色気が漂う玉木さんと、若いのに芯の強さを感じさせる新木さん。おふたりが醸し出す雰囲気があまりにステキなので、撮影中も思わず見とれてしまいました。劇中では違う意味で釘付けになってしまう2人の関係性も、ぜひお見逃しなく!

人はみな “仮面” の下に本心を抱えて生きている!

誰のなかにもある悪の部分を問われるだけでなく、サスペンスとしてもラブストーリーとしても、ズシリと胸に響く本作。目の覚めるような圧倒的な展開に、新年早々心を揺さぶられてみては?

ストーリー

11歳のときに、「この世に災いをなす絶対的な悪である “邪” になるために創られた」と父親から告げられた久喜文宏。ある出来事をきっかけに失踪していたが、整形によって顔を変えた文宏は、初恋の女性である香織を守るために殺人を繰り返していた。

その後、異母兄やテロ組織までもが香織を狙い始め、ついに文宏は自身の運命に立ち向かうこととなるのだった。はたして文宏と香織が迎える結末とは……。

ミステリアスな予告編はこちら!

作品情報

『悪と仮面のルール』
1月13日(土) 新宿バルト9ほか全国ロードショー
配給:ファントム・フィルム
(C)中村文則/講談社 (C)2017「悪と仮面のルール」製作委員会
http://akutokamen.com/



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