志村 昌美

大泉洋「役者になりたいと決断したことはない」驚きの理由とは?

2017.11.29
毎月1日といえば、「映画の日」。ということで、今年最後のチャンスとなる12月1日にオススメしたい話題作は、人気シリーズ待望の3作目となる『探偵はBARにいる3』。すでに多くのファンが待ち望んでいた最新作ですが、今回は「この方抜きには始まらない!」という主演俳優に直撃してきました。それは……。

北海道が生んだ超人気俳優の大泉洋さん!

【映画、ときどき私】 vol. 128

2011年に第1作目が公開されて以降、幅広い層に支持され続けているシリーズですが、大泉さんにとってはメジャー大作で初主演となった作品で、しかも舞台が出身地である北海道という思い入れの強い映画。そこで、満を持して公開される本作にかける思いや自身の原点についても語っていただきました。

前作から4年が経ちますが、その間に一番変化を感じることはありますか?

大泉さん 僕は自分では感じたことがないから、「いい意味で変化していればいいな」と祈るような気持ちなんですよ。この作品に関して言うと、今回は探偵のセリフに説得力があってよかったと言ってくれる人がいるんだけど、僕のなかで演じ方を変えたり、気持ちの変化があったりしたわけではなく、そこは年月だと思うんですよね。1本目から6年経っているので、そのときの僕と44歳の僕が言うセリフはやっぱり違うんだろうなと。

あと、明らかに変わったのは体。今回もサウナのシーンがあるから、いつもと同じくらいのタイミングでトレーニングを始めたんだけど、あっという間に肩が痛くなっちゃって(笑)。お医者さんにも「44歳になっていきなり過激なトレーニングしたら壊れますよ」って言われました。だから、体を鍛えきれなかったという悲しい結果です(笑)。

本作の見どころのひとつといえば、大泉さんが拷問されるお約束のシーンであり、今回は真冬の海を走る船にパンツ一丁で縛りつけられるというかなり過酷なもの。

相変わらず体を張っていますが、辛かったことは?

大泉さん 正直、これはやった者にしかわからないですよね! 「大変そうでしたね」なんてみなさん言うけども、寒さが全然伝わってない(笑)。体に入ってくる空気が鼻から喉から全部をシュワーッと凍らせるような感じで、ほんとに息ができなくなるような寒さなんですよ。風邪もひかずに終わってよかったけど、体も真っ赤になってくるし、キツかったね。

そこまでサービス精神旺盛な大泉さんの原点は何ですか?

大泉さん 観客の喜ぶ顔が見たいし、そのほうがおもしろいなと思ったらやってしまうんです。僕は、「おもしろい」に勝てないんですよね。つまり、かっこいいというのはそこまで追求したいと思わないんだけど、おもしろいと言われたら何でもやってしまう(笑)。僕にとってはそれがキラーワードだし、特に自分のレギュラー番組だととことんやってしまうんですよ。

この作品も2作目のときは大倉山のスキージャンプ台に僕が吊られているというのがあって、最初の台本には入ってたのに改訂稿ではなくなってたから、「大変でもやるから、おもしろいことは削らないでくれ」って言ったんだよ。おもしろいの奴隷だからね、僕は(笑)。

“おもしろい” の快感に目覚めた瞬間はいつですか?

大泉さん 物心ついたときから、ずっと人を笑わせることしか考えてないですね。だったら芸人さんになればよかったじゃないですかという話なんだけど、芸人さんには憧れがあったし、好きだったぶん、その道に入ることが怖かったんだと思います。いまでこそこういう仕事ができているけど、大学時代には想像もしてなかったから、親にも「役者になる」と言ったことがいまだにないんですよ。というのも、なんとなくジワジワーッとここまで来ちゃっただけだから(笑)。

だから、親も放任主義というよりは、止めるチャンスがなかったんだよね。本当にこんな仕事をやるとは思ってもなかったし、そういう夢とかを持たなかった人なんです。ちなみに、小学6年生の文集にはウケ狙いで「ハリウッドの大スターになる!」って書いてあるんだけど、中学1年生になった瞬間に「NTTの社員になりたい」って言うくらいあっという間に現実を見てたくらいの人なのよ(笑)。

では、おもしろいことをひとつずつこなしていたらいまの位置にいたという感じですか?

大泉さん そうですね。最初は大学時代のアルバイトで「テレビに出てみない?」って言われて、興味があるから出てみようかと1回出たらそれがずっと繋がっちゃったんです。というのも、そのテレビ局に『水曜どうでしょう』のディレクターがいて、番組を作るというときに「大泉くんがおもしろかったからやろう」といってこうなっちゃったくらいなので、僕は恵まれてるんですよね。だから、オーディション受けて「役者になるんだ!」というような大きな決断をしたことないんです。

いまはこの仕事じゃなかったら何にもできなかったでしょうし、もしサラリーマンとかだったら、ほんとに使えない男で終わっていたと思いますよ(笑)。

その過程で辞めたいと悩んだ時期はありませんでしたか?

大泉さん 辞めたいというより、「ほんとにいいのかな」というのと「もう戻れないな」というのは、20代の後半にありましたね。ありがたいことに北海道で番組も増えて知名度も上がっちゃったから、そこで「これで生きていくしかない」と思うわけですけど、その少しあとに『水曜どうでしょう』のレギュラー放送が終わっちゃったんですよ。そのときにはやばいという思いはありましたし、ディレクターから終わると言われた日は、不安で寝れなかったですよね。

ただ、そのあとも順調ではあったけど、「ほんとに北海道の人が僕のことを延々と見続けてくれるんだろうか」という思いに30歳くらいでなり、現状維持でいいと思っていたけれども、それでいいと思ってる奴が現状維持できるような甘い世界ではなさそうだということで、もう一歩進まなきゃならないと思って、東京の仕事をすることになったんです。

今回は台本にも深く携わったそうですが、主演として現場で意識していたことは?

大泉さん 僕はついて来いみたいなタイプの人間じゃないので、現場で意識することっていうのはそんなにないんですけど、参加してくれた方が楽しくやってくれたらいいなということだけですかね。だから、主演という役割もあるけど、現地のお店を調べたり予約したりして、半分はツアコン的な感覚でいるんです(笑)。今回は共演者のみなさんともご飯に行く機会が何回もあったし、(松田)龍平くんと2人でススキノを歩いて帰るというのはよくありましたね。

ただ、事前に新しいお店の情報を仕入れたり、ご飯を食べたりするところは知っていても、そのあとのお店というのを知らなくて……。というのも、僕は案外BARに居ないから(笑)。だから、今回は二次会みたいなところはリリー(・フランキー)さんのほうが詳しかったので、BARに連れていってもらったりして、楽しかったです。

いつも明るい大泉さんは男女年齢問わず愛されていますが、その秘訣は?

大泉さん 本当によく言ってますけど、僕は世界中から愛されたい人なんですよ(笑)。ちっちゃい人間なので(笑)。「俺はどう思われたって別にいいんだ!」とかいうでっかい人間じゃないから、愛されないようなことはしないかな。

そうやって愛されるために意識していることは何かありますか?

大泉さん 楽しくありたいし、人を傷つけるようなことはしたくないという思いはありますね。僕は毒づいたりすることはあるけれど、相手が嫌になるようなことはしたくないなとは思っています。それでも、過剰な言葉でツッコんだりもするから家族からは「やめて」と言われることもあるんだけど、僕がツッコまないと他の人たちが悪者になるときもあるし、東京で仕事するにはある程度しょうがない部分もあるんですよ。

だから、「パパがいるからみんな安心してボケれるんだよ」みたいなことを娘には言うんだけど、さすがにまだわからないんだよね(笑)。

そんな大泉さんをいつまでもスクリーンで見ていたいだけに、この『探偵はBARにいる』シリーズはこれからも続けて欲しいところ。

ライフワークとして、50代になってもこの作品は続けていきたいですか?

大泉さん それはありますね。僕は人と人のつながりがすごく好きだし、始めたことを終わらせたくない人なので、やれる限りは続けたいなと思います。映画で毎回おもしろいものを作るというのはほんとに大変だろうけど、僕にとっては苦労してでも続けたいと思える作品ですよね。

改めて、大泉さんにとってこの作品はどういう存在だと感じていますか?

大泉さん 僕は探偵というキャラクターが好きだし、僕が長年育ってきた札幌という街を舞台にした映画で、しかもシリーズ化してくれているというのはなかなかないですよね。それに、探偵という男が憧れるような役で、僕にとってすべてが揃っている映画なので、やっぱり特別です。

あとは、北海道には常に元気でいて欲しいという思いと貢献したいという気持ちもあるので、この映画を観てロケ地を訪ねて人が来てくれればうれしいし、どうしても思い入れが強くなるんですよね。それに、探偵を演じているときの自分はすごく幸せなんですよ。

そういう大きな反響を受けつつ、今後どうして行きたいか教えてください。

大泉さん 期待が大きいぶんプレッシャーもありますけど、映画の場合はヒットしないことには作ってもらえないので、そういうプレッシャーもありますね。マンネリと闘いながら新しいものを作っていかないといけないというのは大変なんだろうけど、ケンカしてでも必死になっておもしろいものを作っていくしかないんだろうなと思っています。

インタビューを終えてみて……。

とにかく最初から最後まで笑いっぱなしで、思わず仕事であることを忘れてしまいそうなほど楽しませてもらいました。そして、取材中でもおもしろいことがあれば、すかさずツッコむ大泉さん。その姿はまさにサービス精神の塊のような存在であり、だからこそこれだけ愛されているのだというのを目の当たりにしました。少し気が早いですが、シリーズ4作目の製作決定となる吉報も期待して待ち続けたいと思います!

シリーズ決定版の名にふさわしい渾身作!

アクションあり笑いあり、そして切なさもありというエンターテイメントがぎっしり詰まった本作。過去最大の危機に見舞われる最強コンビの探偵と高田が迎える衝撃の結末をあなたもぜひ目撃してください。さらに、最後の最後までお楽しみがあるので、エンドクレジットが終わるまではくれぐれも席を立たずにしっかりと見届けるのをお忘れなく!

ストーリー

いつものようにバカ騒ぎする探偵のもとに、相棒である高田の後輩から舞い込んだ新たな依頼。それは、失踪した女子大生を探すというありふれたものだと思われていたが、調査を進めていくなかで浮かび上がったのは、モデルクラブの美人オーナーと冷酷非道な裏社会の住人だった。さらに、殺人事件も発生し、事態はただならぬ方向へと進み始めることに……。

目まぐるしく展開する予告編はこちら!

作品情報

『探偵はBARにいる3』
12月1日(金)より全国ロードショー
配給:東映
©2017「探偵はBARにいる3」製作委員会
http://www.tantei-bar.com/