志村 昌美

「本当の高良健吾さんがわからない」瀧内公美さんとお互いの印象は?

2017.7.13
アラサーにもなると、誰もが人には言えないような思いのひとつやふたつを抱えながら生きているもの。そこで今回は、悩める女子たちにオススメの話題作をご紹介します。その作品とは……。

自分の居場所を求めてもがく人々を描いた『彼女の人生は間違いじゃない』!

【映画、ときどき私】 vol. 101

震災で母を亡くし、父親と2人で仮設住宅に暮らしていたみゆき。平日は福島にある市役所に勤めていたが、週末になると東京の英会話教室に通うためだと嘘をついて高速バスに乗り、渋谷でデリヘルのアルバイトをしていた。福島と東京を行き来する生活のなかで、みゆきが抱えていた思いとは……。

同名小説で作家デビューをはたした廣木隆一監督が、自身の出身地である福島を舞台に描き、自ら映画化した本作。それだけに、監督にとっては「これまでの作品とは全く違う意識で撮った」というほど思い入れの強い作品ですが、重要な役どころに指名されたキャストの方々にそれぞれの思いを語ってもらいました。今回ご登場いただくのは……。

瀧内公美さん&高良健吾さん!

若手女優のなかでも今後ますますの活躍が期待されている瀧内さんが主人公のみゆきを演じ、みゆきを見守るデリヘルの従業員である三浦をananweb読者からも高い人気を誇る高良さんが演じています。

まずは、公開を控えたいまのお気持ちは?

瀧内さん 撮影から上映までがあっという間でしたし、撮影中はとにかく必死だったので、まだあまり実感がないですね。でも、この映画を観ることで誰かが救われたり、小さなことでも幸せだなと感じてもらえれば、上映する意味があると思うので、いろんな方に観てもらいたいなという気持ちです。

高良さん 公開されても観てもらわないと、この作品は存在していないと一緒なので、とにかく多くの人に観てもらいたいです。そして、観た人のなかに残るものになって欲しいとも思っています。僕は現場で瀧内さんがめちゃくちゃ戦って、ボロボロになっているのも見ていましたし、それがこうしていい映画として、できあがっているのであれば、絶対に観てもらいたいなと思いますね。

撮影の前後でお互いの印象が変わったことはありますか?

瀧内さん 高良さんは現場にいるときは三浦なんですけど、試写でお会いしたときは高良健吾さんというひとりの人間ですし、いま隣にいるのは役者としての高良健吾さん。とにかく全部顔が違うので、どれが本物かなと思うくらいなんです(笑)。でも、マインドや思いは変わらない人というイメージがありますし、いつも言葉に力があるので、お話を聞いていても耳にスッと入ってくるんですよね。セリフでもインタビューでも、やっぱり影響力がある人だなと思っています。

高良さん 瀧内さんは現場でとても戦っていて、落ち込んでいたので、「闇が深い人だな」と思ってたんです。でも、撮影が終わって試写で会ったときにはすごく笑顔で、「こっちが本当なんだな」と安心してうれしかったです(笑)。あと、瀧内さんは、ちょっと泣きそうな声の感じがよくて、それがみゆきにはぴったりだなと現場で思ってました。

できあがった作品をご覧になったときに感じたことは?

瀧内さん  自分の作品を観るときは、あまり自分に期待してないんです。でも、今回はひとつの作品として観ることができて、そういうのは初めてでした。というのも、廣木組に参加するまでは、自分の粗ばっかり探してたところもありましたけど、今回はそれがなくなって、楽な気持ちで観れたんです。作品としてはすごくメッセージ性が強いですけど、廣木監督の優しさもつまっている映画だと思います。

高良さん  廣木さんの映画の魅力は、人物の切り取り方と時間の進め方、そしてそこにある優しさなんです。この作品でいうと、震災に巻き込まれてしまった福島の人たちに対する廣木さんの目線は優しいけれど、福島出身ということで、福島が置かれている現状に対しての怒りがあったんだと思います。だから、それを映画監督である廣木さんは、映画を武器にして訴え、表現していましたが、こうやって戦うこともできるんだなと改めて感じました。

本作のなかでも、おふたりのシーンは印象的でしたが、監督から演出されたことはありますか?

瀧内さん 特になかったですね。というのも、私の思う廣木監督というのは、要求しない人なんです。押し付けるようなことは絶対言わないし、相手から出てくるものを全部拾ってくれるんですよ。だから、何かを求めたりせずにいつも声をかけてくれて、私のことをちゃんと見ていてくれましたね。

高良さん 廣木さんは、いつも役者の手柄にさせてくれようとしてくれるんですよ。アドバイスがあるとしても、短い言葉だけだったりする。けれど、それをするためには相当な準備と覚悟が必要だったりもする。でも、廣木さんというのは、その人から出てくるものを信じてくれるし、それをちゃんと拾ってくれる人なんです。瀧内さんと2人っきりの車のシーンは楽しかったですね。

デリヘル嬢という職業柄、身も心もさらけ出して全身全霊でみゆきと向き合った瀧内さんですが、素の自分に戻らないようにするため、撮影中は家に帰らずに、みゆきと同じように渋谷のホテルに滞在し続けたという。

この作品に出演したことで、女優としての意識は変わりましたか?

瀧内さん 180度というか、本当にすべてが変わりました。いままでは、言葉やイメージを考えて現場に行ってたんですけど、廣木組の現場を通して、イメージではなくて、そうなる理由や意味について考えるようになったんです。でも、答えがないからずっと考え続けるんですよね。

そんなとき、廣木監督から「その日に感じたことを何でもいいからノートに書いて」って言われて、それを繰り返していたら、すごくいろいろなことが見えてくるようになりました。だから、自分の言葉にして書くというのは、大事なことなんだなと感じています。

高良さんも「廣木監督は人生を変えた人」と公言しているほど、大きな影響を受けているひとり。

数年ぶりの廣木組の現場で、以前と違いを感じたことはありましたか?

高良さん プレッシャーがあることは当たり前ですけど、現場に行けることがうれしかったですね。その割合がすごく大きくなっていたのは、自分のなかで変わったことだと思います。というのも、いままでは「行きたくないな」というのがどっかにあったんです。それはなぜかというと、廣木組に行くと全部バレるから。それがあって、本当はうれしいのに、怖いと感じてたところもありました。けれど、今回はうれしさしかありませんでした。

かといって、廣木さんに自分がこれだけ成長したんですよというのを見せたいとかではなくて、「僕はこういう三浦を用意してきました」というシンプルな感じ。それがこれまでとは違うのかなとは思いましたし、廣木さんも僕のことを信頼してくれて、何も言わずに任せてくれたというのがいままでとは違ったところかなと感じてます。

監督から影響を受けていることは?

高良さん 18歳のときに「目の前にいる人に伝えなさい」とか「俺に褒められたくて芝居しただろ」みたいなことをたくさんと言われました。つまり「ちゃんとその場にいなさい」ということなんです。だから、僕はそれをずっと守りたくて役者をやってきてるのかなと思いますね。

ananweb読者と同世代のおふたりですが、仕事において大切にしていることや原動力は?

瀧内さん やっぱり現場が好きだというのがありますけど、仕事として大切にしているのは、輪のなかに一生懸命入ること。自分とはもし考え方が違うと思って尻込みしてしまっても、一度それを取り除いてみて、輪のなかに入ってみるということを大切にしてますね。

高良さん 僕はものづくりや現場が好きだということ。結局それに尽きると思いますね。

この作品から感じて欲しいと思うことがあれば、読者にメッセージをお願いします!

瀧内さん みゆきはデリヘルという職業を選んでいて、それには必ず理由があって、しなければいけない心のよりどころや居場所のなさがあるということなんです。だから、自分の選択が正しいかがわからなくても、どんなに周りから否定されてもそれは間違いではないし、それでも前に進んで行く強さがこの作品にはあると思っています。特に私と同世代だと悩んでいる人も多いと思うんですけど、「みんなそうなんだよ」と感じられると思うので、まずは観ていただきたいです。

高良さん 本当にその通りで、この作品はどんなことがあっても生きている人を肯定してくれる映画。それは観てもらえれば、伝わるかなと思っています。

インタビューを終えてみて……。

どんな質問にもひとつひとつ丁寧に言葉を選んで話してくださったおふたりからは、廣木監督への思いとこの作品への愛がひしひしと伝わってきました。みゆきとは別人のように柔らかい笑顔でいっぱいの瀧内さんと、年々男らしさを増す高良さん。おふたりの熱い思いをぜひスクリーンからも感じて欲しいと思います。

いまの時代だからこそ感じる思いに胸が締めつけられる!

予期せぬ出来事によって大きく運命が変わってしまったり、居場所を見失って葛藤する瞬間は誰にでもあるもの。それでも、自分なりに前を向いて進んでいけば、きっと希望の光は差し込んでくるはず。みゆきと一緒に未来を見つめてみては?

心の叫びが聞こえる予告編はこちら!

作品情報

『彼女の人生は間違いじゃない』
7月15日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
配給:ギャガ
©2017『彼女の人生は間違いじゃない』製作委員会

http://gaga.ne.jp/kanojo/

■瀧内公美
ヘアメイク:中島愛貴(raftel)
スタイリスト:馬場圭介
■高良健吾
スタイリスト:小野田 史