発達障害は遺伝する―。”健常者” との、ライフビジョンの描き方の違い

文・七海 — 2017.1.26
アスペルガー症候群当事者である私。”普通” の女性のライフビジョンを描きにくいのが実際です。幸せっていったい何? 私はどこに向かっていけば良いの? そんな悩みを、ライフビジョンの視点からお話します。

女性の幸せって何?そして、私の幸せって何?ライフビジョン迷子の私

一般的な女性が思い浮かべる女性の幸せって、愛する彼と結婚して子どもを産んで、幸せな家庭を築いて―。そういったものではないでしょうか。働く女性も多くいますが、働きながら結婚や出産を視野に入れている方もいることでしょう。あなたのライフビジョンはどうですか?

女性の幸せ=結婚ではない、という意見もありますが、結婚が幸せなこと、出産がおめでたいこと、という概念は広くあるでしょう。でも、その概念って全員にとってそうなのでしょうか?

私はアスペルガー症候群当事者。いわゆる発達障害者です。発達障害は遺伝する、という説もありますが、それに悩まされることがあります。”健常者” の方が抱かないであろうライフビジョンの悩み。発達障害者ならではの視点でお伝えしたいと思います。

もしも子どもが発達障害だったら―あなたは考えたことがありますか?

子どもを産もうとする際、心身ともに健康な子が産まれてきてほしいと願うことはきっと当たり前。だけど、どこかに障害があったとしてもきちんと愛情を注いで育てる―そう決意している方も多いでしょう。

障害がある子どもがマイナスだとは言いません。しかし、私は確かに発達障害者。遺伝の可能性を考えると、子どもを産むことが怖くて怖くて仕方ないのです。発達障害の特徴は、いじめの対象になりやすいことをよく知っています。私自身、いじめの標的になりました。そして、二次障害として精神疾患を多く発病してしまいました。

発達障害のリスクを考えたことがありますか?どれだけ偏見に晒されるかを考えたことがありますか?発達障害は、見えない障害。しゃべらなければ、動かなければ、障害だと気付いてもらえないのです。しゃべって初めてわかる違和感。その違和感に、今の日本での発達障害への理解がついていけるとは思えません。心ない言葉を吐かれる可能性、いじめに遭う可能性だって存分にあるのです。私は身を以て経験してきました。発達障害の生きづらさというものを、痛いくらいに知っています。そんな思いを、子どもにさせたくない。愛する子どもが発達障害で二次障害を煩うことになったら―。それは私の二の舞ではないでしょうか。

そういったリスクが大きいことを考えると、出産に二の足を踏んでしまうのです。

発達障害に理解ある世界になってほしい。これが、後世への願いです

発達障害に十二分な理解があれば、私のような悩みを持つ人は減るでしょう。発達障害者が差別に晒されていることを知っている以上、愛すべき子どもにつらい思いをさせたくない―。そう思うのは不自然なことでしょうか。

私は、発達障害に理解がある世界になることを切に願っています。そうすれば、発達障害を持った人もライフビジョンを描きやすくなると思うからです。差別意識がもっとなくなれば。受け入れてくれる体制がもっと整えば。マジョリティの人たちからすると贅沢な願いかもしれませんが、私は真に差別のない世界を望みます。

“普通” の女性が思い描くライフビジョン。発達障害者である私が思い描くライフビジョン。”幸せ” の位置づけがわからなくなって、まさしくライフビジョン迷子です。子どもがほしいという思いはあります。でも、子どもに二の舞を踏ませてしまって良いのか―。そんな思いが交錯して、私の将来の在り方を悩ませるのです。

私のように悩んでいる発達障害者が少しでも減るように、理解ある世界を作ってほしいです。マイノリティの声は、あなたに届いていますか? ひとりひとりが理解をすることで、さまざまな人が生きやすい世の中になるのです。


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