不動産会社の経営者が教える! 絶対に選んではいけない「マンションの特徴」

取材、文・高倉優子 — 2023.4.22 — Page 1/2
新築物件と比べ、手頃に買える中古マンションは根強い人気があります。でも中古だからこそ、安全かつ安心して暮らすために押さえておかなければいけないポイントがいくつかあるのです。今回は、それらを踏まえ、絶対に選んではいけないマンションの特徴をご紹介!『持ち家女子はじめます』(飛鳥新社)の著書であり、5000人超の女性たちの「幸せになれる家選び」をサポートしてきた「ことり不動産」代表の石岡茜さんにアドバイスしていただきました。物件を探す参考にしてください。

1 旧耐震基準のマンション

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マンションは建設された年代によって耐震基準が異なるのをご存じでしょうか? 1981年6月1日に改正された建築基準法に基づく「新耐震基準」と、それ以前に定められていた「旧耐震基準」とに区分されます。そのわかりやすい基準の違いはこちらです。

旧耐震基準:震度5程度の地震で倒壊しない建物であること
新耐震基準:震度6から7程度の地震で倒壊しない建物であること

地震の報道では、最大震度やマグニチュードの大きさが伝えられることが多く、そこに気を取られがちですが、本当に恐ろしいのは規模の大きな地震が立て続けに起こることです。たとえば2016年4月の熊本地震では、震度7が2回、震度6強が2回、震度6弱が3回、震度5強を4回、震度5弱を8回観測するなど、強い揺れが続きました。

こうしたことも踏まえると「震度5の地震で倒壊しない建物」と定められた旧耐震基準の建物では心もとなく感じます。倒壊の危険性は(新耐震基準のマンションであっても)建物の強度だけでなく、地盤やその他の条件で変わってくるので「絶対に危険」「絶対に大丈夫」と言い切ることはできません。ですが、地震大国の日本で暮らす上で、耐震基準がひとつの判断材料になることは確かです。後悔しないためにも事前にしっかりリサーチしておきましょう。

また、旧耐震基準のマンションの中にも耐震補強工事が行われ新耐震基準を満たすものや、元から新耐震基準を満たしている場合もあります。そのため気になる物件が旧耐震の年代である場合、耐震補強や耐震診断がなされているかなどを不動産会社に確認してみてください。

2 修繕積立金が不足しているマンション

マンションには、住人みんなが利用する共用部(エントランス、廊下、駐車場、駐輪場など)があります。その共用部をはじめ、建物本体を適切に維持管理するための費用として、管理組合に毎月「修繕積立金」を支払わなければなりません。「管理費」と混同されやすいですが、その違いはこちらです。

修繕積立金:計画的にマンションを修繕するための費用

管理費:住人に代わり、マンションを管理するための管理会社に支払う費用(長期修繕計画の作成、共用部の清掃費や電気代など日々マンションを維持するための費用が含まれる)

中古マンションの場合、これまできちんと修繕されてきた建物かどうかということと、「修繕積立金」がどのくらい貯まっているかということがとても重要になります。「修繕積立金」が不足している場合、将来的に修繕が必要になった際に、一世帯につき数十万円~百万円ほどの一時金を請求されることがあります。また、それまでの不足分を補うために「修繕積立金」が値上げされる可能性もあるのです。

ですから、事前に「修繕積立金がどれくらい貯まっているか」「今後どのような修繕を予定しているか」「その際には一体いくらかかるのか」という長期修繕計画を確認しておく必要があります。十分な修繕計画が立てられておらず、「修繕積立金」も不足しているようなマンションは購入すべきではありません。

3 「万年理事長」のマンション

マンションを購入すると、住人で構成された管理組合に参加し、自分たちのマンションを管理しなくてはなりません。管理組合では、所有者の代表としてマンションの維持管理を行う理事会を結成します。理事会の役員には理事長、副理事長、理事、会計担当理事、監事などがあり、理事のなかから理事長をはじめとする各役員が選ばれます。理事の任期は1~2年、輪番制で行われることがほとんどです。

理事会で話し合われる内容は、日常的に行う共用部の清掃や設備の保守点検から大規模修繕の計画まで多岐に渡り、専門的な知識が必要となります。そのため、マンションの維持管理を専門に行う業者である「管理会社」に管理業務を委託している場合がほとんどです。

ここで問題になるのが、「万年理事長」問題です。理事長は立候補もできるため、長年、同じ方が理事長を務めることで、適切な管理が行われなくなってしまうことがあるのです。

たとえば、10年間に渡り同じ方が理事長を務めていたあるマンションでは、大規模修繕工事を行う際、相見積もりを取ることなく、管理会社が勧める業者に決まりました。しかも、一般的ではない高額な内容で発注されていたため、理事長が違法なキックバック(謝礼金)を受け取ったのではないか……と、もっぱらの噂でした。また理事長が、修繕積立金や管理費を滞納し、督促しようにも権限者が理事長のため、督促が難航するケースもあります。

ほとんどの方は真摯に務めていらっしゃると思うのですが、時に、億を超えるお金を動かせる理事長の座についたことで権力を持ったように錯覚してしまう方がいるのも事実です。ですから理事長はある程度、替わっていることが望ましいと言えるでしょう。

不動産会社に「理事長は何年務められていますか?」と尋ねたり、口コミサイトでマンションの情報を調べてみたりするなど、事前に情報収集することをおすすめします。

4 30㎡未満の物件

マンションを購入する際、面積要件は重要なポイントになります。「手頃だし、ひとりで暮らすのにちょうどいい間取りだから」と、安易に30㎡未満(1Rや1Kの間取り)の物件を買うと、のちのち苦労することがあります。これらの物件は、転職、転勤、結婚、Uターンなどライフスタイルに変化があり、「売却したい」と思ったときに売れにくい傾向にあるのです。

その理由は、住宅ローンの面積制限です。ほとんどの金融機関は、30㎡未満の物件を融資の対象にしていません。これは今流行りの「ワンルームマンション投資」などに住宅ローンが悪用されるのを防ぐ意味合いもあります。住宅ローンが0.数%の超低金利であるのに対し、投資用ローンは金利2%台のものが多いため、金融機関も慎重になるのです。

なお、住宅ローン申請等でチェックされる際に適応される面積は、パンフレットや広告等に表記されている面積より狭くなるケースがあるので注意が必要です。パンフレットなどには「壁芯(かべしん)面積」と表記されていることが多いのですが、これは壁の厚みの中心線を想定し、中心線に囲まれた部分を「床面積」とする計算方法で出した数字です。

一方で、住宅ローン申請等でチェックされる際に適応されるのは「内法(うちのり)面積」です。こちらは壁の内側の線を基準にした部分を「床面積」とする計算方法で数字を出すため、壁芯面積より狭くなる場合があるのです。

つまり「壁芯面積30㎡」と書かれていても、実際の面積は30㎡未満となり、ローン申請に通らない可能性があります。「住むための家」を買う場合は、必ず「内法面積」を調べ、30㎡未満の物件は避けたほうがいいと思います。

Information

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教えてくれた人
石岡茜さん。2013年に「女性のための不動産会社を作りたい」と、東京・学芸大学に「ことり不動産」を設立。女性ならではの細やかな視点と「幸せな家選び」をモットーに、物件選びをサポートしている。宅地建物取引士。著書に『持ち家女子はじめます』(飛鳥新社)がある。
https://www.cotorire.com/

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©Ekaterina Litvinova/Getty Images