不動産屋会社の経営者が教える! 選んではいけない「残念な不動産会社」

文・高倉優子 — 2023.4.1 — Page 1/2
家を買うことを決め、いざ雑誌やネットで調べ始めたものの、一体どの不動産会社を選べばいいの…? と悩む方も多いのではないでしょうか。そこで、『持ち家女子はじめます』(飛鳥新社)の著書であり、5000人超の女性たちの「幸せになれる家選び」をサポートしてきた「ことり不動産」代表の石岡茜さんに、「選んではいけない不動産会社」の特徴をお聞きしました。ぜひ家選びの参考にしてください!

家を購入する時に「選んではいけない不動産会社」

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ひと口に不動産会社といっても、デベロッパーと言われる開発会社から、賃貸仲介、売買仲介、管理などをメインに取り扱う会社などさまざまな形態があり、全国に12万社以上あると言われています。今回は、中古物件を扱う「売買仲介」の不動産会社に絞り、「選んではいけない不動産会社」の特徴をお伝えします。

――売買仲介の不動産会社といっても、大手不動産会社と地域密着型の不動産会社がありますよね。扱う物件数に違いがあるのでしょうか?

石岡さん 両者とも宅建業の免許を持つ者なら誰でも閲覧できる情報システムを利用して情報を得るため、取り扱う物件に差はありません。大手であっても小規模店であっても、ほぼ同じ物件を買うことができるのです。

――それぞれの強みを教えてください。

石岡さん 大手不動産会社は全国に支店などネットワークがあり、広範囲をカバーしながら物件を仲介するノウハウに長けています。また自社サイトが充実していたり、オンライン内見ができたりとサービスが充実している会社も多いです。ただし人事異動があり、担当する営業パーソンが替わってしまう可能性があることがややデメリットと言えるかもしれません。

一方、地域密着型の不動産会社は、その土地に根付いて営業しているため土地勘があり、通学区の学校の評判をはじめ、病院やスーパーなど地域の情報に詳しいことが挙げられます。また大手にない独自の人的ネットワークを持っている会社も多く、一定のエリアに絞った物件探しをするときには頼りになる存在です。

それぞれの強みを理解した上で、次に紹介する3項目に注意しながら、自分に合った不動産会社(担当者)を選んでください。最低でも3~4軒はまわって、比較検討することをおすすめします。

NG不動産会社その1. ライフプランについてヒアリングしてくれない

予算、立地、間取りなど大まかな条件だけをもとに「あなたに合うのはこの物件ですよ」と、すぐに物件を紹介してくる不動産会社(担当者)はNGです。その人がどんなライフプランを描いているのか、長期的な目線を持ち、しっかりとヒアリングしてくれる人を選びましょう。一生に一度と言われる高い買い物ですから、一緒に探していくパートナー選びは慎重に行ってほしいです。

ライフプランを知るための質問の例としては、「何年住みたいですか」「何人で住みますか」「将来的に結婚してお子さんができたとしても住み続けたいですか」「独身のままご本人がずっと住み続ける家ですか」「将来的に、移住やUターンなど引っ越す予定はありますか」などがあります。その答えによって、紹介する物件は大きく変わってきます。

若い方にはとくに、「重いローンを抱えても大丈夫か」「将来どんな夢があるか」など、しっかりヒアリングしてもらうべきです。そのうえで、「もう少し資金を貯めたほうがいい」「今は買う時期ではない」など、買わないことも含め、その方に寄り添ったアドバイスをしてくれる不動産会社(担当者)を選んでほしいです。

逆に、不安につけこむように「将来が心配なら買っておいたほうがいいですよ」と、その方のライフプランに合っていない高額物件を紹介してくる場合や、ワンルームマンション投資を勧めてくる場合は要注意! 親身になってくれているように見えても、自社の利益を優先し、お客様の幸せについて考えてくれない不動産会社(担当者)が一部いることも事実なのです。

NG不動産会社その2 建築の知識が少ない

似ているようで、不動産と建築の仕事は大きく異なります。そのため、長年不動産業に従事していても建築の知識が豊富な社員ばかりというわけではありません。中古物件では、劣化の程度により将来的にどのようなリフォームやリノベーションが必要になるか見極めなければいけませんが、そういった専門的な話ができない不動産会社(担当者)も多いのです。

あるお客さまが古いマンションの耐震構造について質問したところ、「旧耐震ですが、この一帯は地盤がいいので地震が起きても大丈夫です」と即答した営業パーソンがいました。それは土地の特徴であり、建物についての情報ではありません。営業パーソンには話が上手な人も多く、それがさも本当であるように説明することもできてしまいます。だからこそ、数軒まわって、きちんとした建築知識を持つ不動産会社(担当者)を見つけるべきなのです。

また人任せにせず、買う側もある程度の建築の知識を身につけておくことが大切です。建築にまつわる法律には、建築物の構造や設備、耐震性などに関する基準が定められた「建築基準法」や、都市や地域の計画に基づいた土地利用や建築物の設置、改修などを管理する「都市計画法」などがありますが、最低でもそれらの内容を知っておきましょう。その他、専門家に話を聞いたり建築雑誌を読んだりと、自分にできる範囲の勉強をしてください。

NG不動産会社その3 お金に関する知識が少ない

家を購入する際には、物件の費用だけではなく、諸経費がかかることをご存じでしょうか? 仲介手数料、印紙税、手付金、頭金、登録免許税、司法書士への報酬、火災保険、地震保険、不動産取得税、管理金、修繕積立金など、さまざまなものがあり、目安として、中古物件では購入価格の6~10%が必要と言われています。

こういった諸経費を含め、予算を導き出す必要があるのですが、一部の不動産会社ではその作業をしてくれません。お客様から「予算5,000万円くらい」と聞いたままに、5,000万円前後の物件を紹介されてしまうことがあります。

修繕積立金が値上がりしたり、金利が上がったりと、支払う額は日々、変動します。だからこそ、トータルの金額ではなく、自分が払える月額から予算を立てる必要があります。「月額14万円なら余裕を持って支払える。それなら管理費・積立修繕金等のことも考えると、5,000万円ではなく4,000万円以下の物件がいい」といった具合に、お客様に寄り添ったお金のアドバイスをしてくれる不動産会社(担当者)は信頼できます。

また、住宅ローンを組む際に必要となる「変動金利」と「固定金利」について。「よく聞くけど、違いは何?」「どっちがいいの?」など、自分でもしっかり勉強したうえで、担当者に質問してみましょう。その人にお金に対する基本的な知識があるのか、自分に寄り添ってくれる人かどうかを知る、ひとつの判断材料になると思います。

Information

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教えてくれた人
石岡茜さん。2013年に「女性のための不動産会社を作りたい」と、東京・学芸大学に「ことり不動産」を設立。女性ならではの細やかな視点と「幸せな家選び」をモットーに、物件選びをサポートしている。宅地建物取引士。著書に『持ち家女子はじめます』(飛鳥新社)がある。
https://www.cotorire.com/

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